社説:殺傷武器の輸出 平和主義崩す解釈変更

 平和主義を損なう浅薄な議論に危うさを禁じ得ない。

 自民、公明両党は、防衛装備品の輸出ルール見直しを巡る論点整理を公表した。

 現行制度で可能な「警戒」など5分野であれば、殺傷能力のある武器の輸出を容認する方向で一致した。英国、イタリアと開発する次期戦闘機を念頭に、国際共同開発する武器の第三国への輸出も認める姿勢も示した。

 殺傷武器の輸出は、政府の従来方針を転換する重大な問題だ。日本製の武器が他国で使われれば、平和国家として培ってきた国際的な信用を失いかねず、専守防衛からも大きく逸脱しよう。

 日本は、「武器輸出三原則」に基づき禁輸政策を長くとってきた。しかし2014年、当時の安倍晋三内閣が武器輸出を防衛装備移転と言い換え、解禁にかじを切った。一方で、「三原則」を掲げて五つの非戦闘分野に限るなどとし、殺傷能力のある武器は輸出できないと説明してきた。

 4月からの自公の実務者協議で政府は一転し、「掃海」には機雷を破壊する機能が不可欠などと例示し、輸出可能とする唐突な新解釈を打ち出した。

 これを受けて自民内の輸出拡大論が勢いづき、論点整理では5分野の撤廃論まで盛り込んだ。公明が主張する「必要な類型の追加にとどめるべき」との慎重論は併記した。

 この間、国会や国民への説明はなく、政府と一部の与党議員が短期間の密室協議だけで解釈を反転させた。ご都合主義も甚だしい。こうした手法を重ねれば、なし崩しに殺傷武器の輸出が広がりかねず、到底容認できない。

 政府は、昨年12月にも国会閉会中に、国家安全保障戦略など安保関連3文書で、防衛装備品の輸出を拡大すると明記した。ロシアによる侵攻が続くウクライナのような国への支援や、国内の防衛産業の立て直しを理由とした。

 だが、輸出先で武器がどう使われるか管理することは難しい。目的を逸脱し、無断転売や市民弾圧に使われる恐れは拭えない。

 憲法は武力による紛争解決にくみしないとし、日本は人道支援などで存在感を発揮してきた。ウクライナから求められているのも、地雷除去やインフラ再建である。

 政府は輸出ルール緩和策の検討を本格化させるというが、本当に武器輸出が日本の安全保障に資するのか。開かれた場で根本から議論をやり直すべきだ。
 

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