シュワルツェネッガーの父親はナチス兵だった 壮絶半生語るNetflix『アーノルド』&初ドラマ主演『FUBAR』

Netflixオリジナルシリーズ『FUBAR』独占配信中

シュワ初の配信ドラマシリーズ Netflix『FUBAR』

2023年も半分が終わろうという今日この頃。しかしここへきて、なぜかアーノルド・シュワルツェネッガーが絶好調だ。

まずは何といってもNetflixで絶賛配信中のドラマシリーズ『FUBAR』。どうやらシュワルツェネッガー初の配信ドラマが企画中、という話自体は2年ほど前から聞いていた。そうは言っても本人は特別出演ぐらいのものではないかと高をくくっていたら、まさかの全8話(約7時間弱)の全篇にわたって身体を張っていたから思わず感涙に咽んだ。本人主演の映画は2019年の『ターミネーター:ニュー・フェイト』以来お預け状態で、そろそろ我慢がならない状態となっていたから何とも嬉しい。

“うまくいかない『トゥルーライズ』”的ドラマシリーズ

『FUBAR』でシュワルツェネッガーが演じるのは、引退を間近に控えたCIAの工作員。長いキャリアの間、自らの家族にもずっと身分を隠して仕事(主に破壊行為や殺人など)に打ち込んできた。結果として家庭生活は破綻、妻には完全に去られ、愛するひとり娘にも何となく煙たがられる老後である。

ところが最後に赴いた任務で、このベテラン工作員は思わぬ事実に向き合うことになる。愛娘もまた身分を隠したCIAのエージェントだった。長いことお互いを騙し合ってきた、そんな事実にショックを受けつつ、そうは言っても娘のことは心配なので要らぬことを言っては嫌われる。

うまくいかない『トゥルーライズ』(1994年)といった趣の配信シリーズは、そんな父娘の反目と共闘を描いて飽きさせない。連続ドラマには欠かせない、次エピソードへの引きも毎回あるにはある。しかし、それが気になって夜も眠れないというよりは、凸凹父娘とその周辺に配置されたキャラクターの魅力、それぞれの関係がどのように展開するかといった興味で引っ張る。できれば1話30~60分で、風呂上がりの時間帯ぐらいに地上波で放送してほしい。そんなシリーズではある。

自身の半生を赤裸々にさらけ出す Netflix『アーノルド』

Netflixとシュワルツェネッガーの強力タッグは『FUBAR』だけにとどまらない。なんとシュワルツェネッガーはこのほど、同サービスで配信中のアクション作品を統括する「チーフ・アクション・オフィサー」に就任してしまった。

アクション作品統括と言われたところで具体的に何をする役職なのかは正直まるでよくわからないし、それはおそらく本人も同じことなのではないかと思う。だが朝から戦車でオフィスに乗り付けたり、アクションの後輩クリス・ヘムズワースに謎の圧力をかけたり、自身をかたどった等身大ケーキを貰ってニコニコしたり、とにかく楽しそうなのでよかった。自業自得なあれこれも含め、これまで何だかんだと苦労を重ねてきたのだ。シュワルツェネッガーの人生にも一度ぐらい、幸せな日があってもいいだろう。

と書いてはみたものの、シュワルツェネッガーといったらこれまで欲しいものはすべて手中に収めてきた男である。実は自身の人生に対する明確な設計図を常に描き、いつでも用意周到に立ち回っては、成功を積み重ねてきた。ボディビルの世界チャンピオンからハリウッド屈指のアクション・スターに転じ、そして政界にまで殴り込んだ。そんなオーストリアの寒村に生まれたひ弱な少年が積み重ねたサクセス・ストーリーを、やはりNetflix配信のドキュメンタリー『アーノルド』が、余すことなく描き出している。

また観客であるこちらは、このボディビルダー/アクション俳優/政治家が、2010年代頭ごろに思わぬ自業自得からふと躓いて、一度はすべてを失ったこともよく知っている。ドキュメンタリーはそのことからも目をそらさず、むしろその経験を経たスターの今日を描き出す。

さらにはその父グスタフがナチ党員であったことにも真摯に向き合い、だからこそかつては共和党を熱烈に支持したシュワルツェネッガー本人が、いまでは世界平和を誰より願うリベラルに転じたことを語っている。分かっていたようで実は全然分かっていなかった男の機微を知ることのできる、『アーノルド』は実に意義深いドキュメンタリーだ。

【祝・76歳】ムービープラスでシュワ過去作一挙放送

というアーノルド・シュワルツェネッガーは、この7月末で76歳になる。その全盛期から(政治家引退を経た)カムバック以降まで、映画スターとしてのキャリアをCS映画専門チャンネル ムービープラスで振り返ってはいかがだろうか。

アクション・ヒーローとして脂が乗り切っていた時期の『プレデター』(1987年)、コメディもできる器用な才能を満天下に知らしめた『ツインズ』(1988年)と『ジュニア』(1994年)。盟友ジェームズ・キャメロンと組んだ横綱相撲『トゥルーライズ』(1994年)に、いろいろあってアクション映画の世界に帰ってきた2013年の『ラストスタンド』。

オマケとして、ジャッキー・チェンと夢の共演を果たした『レジェンド・オブ・ドラゴン 鉄仮面と龍の秘宝』(2019年)まである。これらはあくまでフィルモグラフィのごく一部に過ぎない。だが、ここからシュワルツェネッガーの何とも言語化しがたい謎の魅力に、可能な限り触れていただけると嬉しい限りだ。

文:てらさわホーク

『FUBAR』『アーノルド』はNetflixで独占配信中

『ラストスタンド』『ジュニア』『ツインズ』『トゥルーライズ』『プレデター【地上波追録版】』『レジェンド・オブ・ドラゴン 鉄仮面と龍の秘宝』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:シュワちゃん誕生祭」で2023年7月放送

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