スーパーGTのスポーティングレギュレーション改訂。赤旗終了時のピットイン義務づけ等に対し明文化

 7月7日、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションは、エントラント、オーガナイザー向けにブルテンNo.033-S、No.034-Sを発行した。2023年のスポーティングレギュレーションの一部改訂、およびスポーティングレギュレーション付則の一部改訂を行うもので、レース時の最大運転距離・時間、レース終了、および付則3のセーフティカー運用に関するものが変更されている。改訂/追記は第4戦富士から適用される。

 スーパーGTでは2022年から450kmレースの回数が増えており、長距離レースでは最低2回の給油をともなうピットイン義務が課されていた。そんななか、2022年第2戦富士、そして2023年6月3〜4日に行われた第3戦鈴鹿で、大きなアクシデント発生による赤旗中断とそれにともなうレース距離短縮があり、その際にこの2回の給油をともなうピットイン義務づけが大きな論争を生んでいた。

 第3戦鈴鹿では、当初レースの赤旗終了時にピットインを1回しか行っていなかったNiterra MOTUL ZがGT500クラスの優勝とされ、その後10チームの抗議により優勝がWedsSport ADVAN GR Supraに変わるなど混乱を生んでいたが、Niterra MOTUL Zから控訴の意向が出されていた。最終的にこの控訴は行われなかったが、その際にNiterra MOTUL Zを走らせているNDDP RACINGから控訴しない理由となっていたのが「今後の規則の明確化」。今回GTアソシエイションから出されたブルテンは、それにしっかりと答えたかたちとなる。

■赤旗終了時のドライバー運転距離/時間、ピットイン義務づけ回数を明文化

 ブルテンNo.033-Sで示されたのは、スポーティングレギュレーション第35条『最大運転距離・時間』の改訂と、第38条『レース終了』の追記だ。改訂前と改訂後の条文をそのまま記そう。

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<<第35条改訂前>>

第35条 最大運転距離・時間
1名のドライバーが総計で当初のレース距離もしくはレース時間の2/3を超えて運転してはならない。ただし、ドライバーの交替前にセーフティカー活動中にドライバー交替を行えなかった場合は本条の適用が免除されるが、セーフティカーの退去周にドライバー交替をおこなわなければならない。
オーガナイザーは、当初のレース距離の2/3に相当する周回数(小数点以下切捨)、もしくは当初のレース時間の2/3に相当する時間を競技会特別規則に明記すること。

<<第35条改訂後>>

第35条 最大運転距離・時間
1名のドライバーが総計で当初のレース距離もしくはレース時間の2/3を超えて運転してはならない。ただし、ドライバー交替前にセーフティカー活動中/FCY導入によりドライバー交替を行えなかった場合は本条の適用が免除されるが、セーフティカーの退去周/FCYを解除した周にドライバー交替をおこなうこと。

1人のドライバーが総計で当初のレース距離もしくはレース時間の2/3を超えて運転している状態でセーフティカー活動中あるいは赤旗中断のままレースが終了した場合、当該車両は競技結果に対して1周減算とする。
オーガナイザーは、当初のレース距離の2/3に相当する周回数(小数点以下切捨)、または当初のレース時間の2/3に相当する時間を競技会特別規則に明記すること。

<<第38条条項の追記(7.8.項)>>

第38条 レース終了
1.〜6. 条文変更なし
7. チェッカーフラッグを受けた時点で当該競技会において義務付けられたピットイン回数を履行しなかった場合、当該車両は失格とする。8. 先頭競技車両が2周回を完了し、当初のレース距離(時間レースの場合は「当初のレース時間」)の75%(小数点以下切捨)未満でセーフティカー活動中あるいは赤旗中断のままレースが終了する場合、当該競技会において義務付けられたピットイン回数の履行が免除される。当初のレース距離(同上)の75%(小数点以下切捨)を超えた時点で、順位認定される周の完了までに当該競技会において義務付けられたピットイン回数を履行していない車両は競技結果に対して1周減算とする。

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 まず第35条の改訂はドライバーの最大運転距離・時間に関するものだが、スーパーGTの場合、ひとりのドライバーはレースの2/3を越えて運転してはならない。この第35条では、レース距離・時間の2/3を迎えたタイミングでセーフティカーが導入された場合、その退去周にピットインしなければならないとするものだが、これにフルコースイエロー導入時という条文が加えられている。

 さらに、もし2/3を越えてひとりのドライバーが運転している際に、もしセーフティカー導入や赤旗中断があった場合、結果に対し1周減算とすることが明記された。これは2022年第2戦で発生したケースだった。

 そして第38条7.では、新たにそのレースにおいて義務づけられたピットイン回数が履行されていなかった場合、その車両は失格とされることが明文化された。また第38条8.では、2022年第2戦のときのように、レース距離/時間が75パーセントを消化しないままレース終了となった場合が明文化されている。この場合はピットイン回数履行が免除される。

 また2023年第3戦鈴鹿のように、75パーセントを消化していたときは、ピットイン回数を履行していない車両は1周減算となる。2023年第3戦鈴鹿を例にとると、Niterra MOTUL Zがこれに当てはまる。

 まずはそういったケースがないことを願うばかりだが、これらの第35条/第38条の変更にともない、レースが赤旗終了となったケースの結果の取り扱いは非常にクリアになったと言えるだろう。

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