「再び世のため人のために尽くす人生を…」大規模買収事件 河井克行氏が語ったこと 広島地裁

4年前の参議院選挙をめぐる大規模買収事件の被買収側の裁判で、実刑判決が確定している 河井克行 元法務大臣が7月6日と7日に再び、証人として出廷しました。

6月、元広島市議の 藤田博之 被告の証人として出廷したときと同じように、傍聴人が廷内に入ることを許可されたときには、すでに克行氏が証言台の前に座っていました。

裁判長から「名前は何ですか」と聞かれると「河井克行です」と大きな声ではっきりと答えた克行氏。1つひとつの質問にゆっくり、淡々と答えていきました。

証人として出廷したのは、6日に開かれた広島市議の 三宅正明 被告と元広島市議の 伊藤昭善 被告、7日に開かれた広島市議の 木山徳和 被告と元広島市議の 谷口修 被告の公判です。

4人の担当弁護人は同じで、それぞれ公判を併合して証人尋問が行われました。

弁護人からの質問では、現金を配るに至った経緯が説明されました。

「汗をかかんとだめよと言われ…」現金を配るに至った経緯

(弁護人)
「河井案里 さんが立候補した4年前の参議院選挙の情勢について、厳しい選挙だと認識していましたか?」
(克行氏)
「間違っています。4年前は自民党本部から公認の金看板も得ました。公認は際立って遅く、参議院選挙まであと数か月、その段階で自民党が公認をしたこと自体が、河井案里に十分がんばれば当選できるという確信があったからこそです」

「当時の安倍総理大臣の自民党が広島で2議席を獲得するという党の方針に広島県連が耳を貸さない態度に業を煮やして、自分の地元の秘書団を連日、県内各地に送り込みました。党の大義の浸透を図る目的でした。安倍総裁の広島での自民党2議席獲得にかける強い思いと、河井案里への強い期待を具体的行動で示していただいたことも当選への大きな確信を得ることができました」

(弁護人)
「県連の溝手氏のみを支援するという姿勢は、河井案里氏の選挙情勢に影響がありましたか?」
(克行氏)
「私の公判でも地方議員が『県連が支援しないから河井案里は厳しいと思った』と言いましたが、失礼ながらこの20年間、ぬるま湯に浸かったような広島県の参議院選挙しか知らない地方議員が、複数立候補者を立てたときの党勢拡大活動のあり方が十分に分かるはずがないと思いました」

「党本部の幹部は口をそろえて、『県連が案里さんをいじめればいじめるほど、むしろ県連への批判、案里さんへの同情が湧き上がって支持が広がる。県連の姿勢は案里さんへの応援と考えていたら』と、一笑に付していました」

(弁護人)
「あなたが県連会長への意欲を示したことはありますか?」
(克行氏)
「あります。2018年の県連常任顧問会議で、汗を流す覚悟があると言いました」

(弁護人)
「反応はありましたか?」
(克行氏)
「なかったですね。わたしより議員の在職年数が少ない方が会長になって、衝撃を受けました」

(弁護人)
「それについて、誰かに相談しましたか?」
(克行氏)
「県議会のベテランの先生に相談しました。すると『ふだん、国会議員は東京にいて、特にあなたは総理補佐官で海外を飛び回るイメージが強い。もっと地元の議員から克行を応援しようと声が上がるように、議員を回って汗をかかんとだめよ』と言われました」

(弁護人)
「アドバイスは実現しましたか?」
(克行氏)
「その出来事の次の選挙が2019年の統一地方選でした。これまで以上に積極的に県内を回って、陣中見舞いを渡して、仲間づくり、わたしへの理解を広めないといけないと痛切に感じました」

一方で、その現金の趣旨については、4人の被告人全員に対して「河井案里の当選を得たい気持ちが全くなかったわけではない」としつつも、「現金を配っているときに違法性の認識はなかった」などと説明しました。

「違法性の認識はなかった」配った現金の趣旨は…

(検察側)
「案里さんの選挙で当選を得たい気持ちが全くなかったわけではないというと、そのために三宅被告と伊藤被告には何を期待していましたか?」
(克行氏)
「特に具体的に望んでいたことはありません。これまでの経験を踏まえて、応援していただけるんじゃないかと考えました」

(検察側)
「木山被告には何を期待していましたか?」
(克行氏)
「何か具体的にあれをしてほしい、これをしてほしいとは考えていませんでした」

(検察側)
「抽象的にでも何か期待していたことはありますか?」
(克行氏)
「365日24時間、自分や妻の次の選挙のことを考えないことはありません。そういう中で木山さんに現金を差し上げたときも全く考えていなかったわけではない、ということです」

議員らに渡した現金は「手元にあった自分の歳費や期末手当など」としたうえで「1年間の政治資金の収支が整った段階で、政党支部や後援会など宛名を指示して領収書をもらおうと考えていた」と説明しています。

(検察側)
「現金は党の助成金から出しましたか?」
(克行氏)
「いいえ」

(検察側)
「木山被告や谷口被告に渡した現金は、秘書が準備したのですか?」
(克行氏)
「わたしが準備したと思います」

(検察側)
「領収書を発行するためには詳細が必要ですが、いつ誰にいくら渡したか、秘書に伝えましたか?」
(克行氏)
「言わなかったと思いますよ」

(検察側)
「いつ誰にいくら渡したか、記録は取っていましたか?」
(克行氏)
「わたしの頭の中にありました」

克行氏は、被告人らに対して言いたいことがあるかと問われると「政治家としての歩みに迷惑をおかけしたことを全ての地方議員の先生にお詫びしたい」などと話しました。そのうえで、地元への思いも口にしました。

「妻とともに再び世のため人のために尽くす人生を」地元の法廷で新たにした決意

(克行氏)
「きょうで受刑が始まって624日になります。毎日、自らと向き合い、懸命に罪を償おうとしてきました。今回、広島にこういう形で帰ってきて証言させていただくことで、1日も早く出所してお詫びに歩かせていただきたい。多くの方への責任を果たし続けるため、妻・案里とともに再び世のため人のため、国家のために尽くす人生を貫きたいという決意を新たにしました。証言の機会をくれた裁判長や、広島に来るにあたり格段の配慮をいただいた法務省に感謝します」

閉廷すると、克行氏が証言台から立つ前に傍聴人の退出が指示されたため、克行氏の表情をうかがうことはできませんでした。

この裁判所の対応は、被告人らの弁護人から、裁判所に要請したということです。

広島地裁は、「法廷警察権に基づき裁判体が、傍聴人がいない状況で証人および被告人を入退廷させると判断した」としています。

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