北海道 人手不足にどう対応!?ホテル・建設業・運送業の現状は

今回のテーマは、人手不足。さまざまな業界で人手不足が叫ばれる中、今回は「観光」「建設」「物流」業界の現状を見ていく。

【観光客増でも働き手は不足!?ロボットに“すきまバイト”も】

コロナ禍で大きな影響を受けた、観光業。行動制限緩和後のことし3月の北海道内の宿泊者数は約295万人。去年の同じ月に比べ5割近く増えた。

しかし、一方で宿泊関連の求人数は1050人と、去年の同じ月に比べこちらも5割ほど増加。業界の人手不足は深刻だ。

旭川市内から車で約30分、東神楽町にある「森のゆ ホテル花神楽」。大雪山系を目の前に臨む露天風呂が人気の温泉ホテルだ。今年の7~8月の間は客室が9割近く埋まっているという。

浦野支配人は「なかなか人が定着しないという面もある。人を少しずつ採用したが2割くらいは足りていない。ことしになってからは継続的にどこかしらの部署で募集をかけている」と苦しい状況を話す。

人が足りない中でも、サービスの質は下げられない。さまざまな対策を講じている。各部屋に宿泊者の人数分の浴衣を置いていたが、それをやめた。共用の通路に浴衣コーナーを設けて客が自由に浴衣を選べるようにした。これにより客室の清掃時間を30分短縮。清掃担当の負担を少しでも減そうという考えだ。

レストランで働いているのは配膳ロボ。厨房と食事会場を往復して料理を提供したり、空いた皿を運んだりと大活躍だ。夜間には掃除ロボも導入している。人手が必要ないと判断したところは機械化して仕事の分業を図る。

しかし、どうしても人手が必要な作業もあるのが実情。そんな中、ことし1月から利用を始めたのが短時間の働き手を募集するアプリ「タイミー」。いわゆる「すきまバイト」を雇っている。館内の清掃や洗い場の業務を主に募集。週末は多い時で4人募集している。

【若手が活躍できる環境づくり 建設業でも対策さまざま】

札幌の一二三北路。北海道各地で道路の整備や橋の補修など土木工事を主に行う会社だ。

この20年ほどの間、年に1人入社するかどうかという状況が続いているという。拘束時間が長く社員の負担が大きいというイメージが人材を獲得できない要因の一つと考え、作った部署がある。

去年4月に立ち上げたe-デザインセンター。これまで担当者が現場の仕事が終わってから作っていた発注者に提出する書類や工事スケジュール表などを、自社のクラウドにアップされている担当者からの情報をもとに代わりに作成。特筆すべきは、全員が建設業未経験という点だ。

札幌の道路工事現場では、20代の社員が中心となって働いていた。全社員103人のうち、10代から30代までが占める割合はなんと4割。仕事のやりがいを感じてもらって、自立させる。その上で、困った時は上司に相談できる環境も用意する。そうすることで、人材を定着させたいと考えている。

【迫る2024年問題 荷主の理解不可欠】

日用雑貨や家電製品などを配送する「ユート運輸倉庫」。北広島に本社を置き、北海道内8カ所に営業所を構える。運送業界も人手不足が深刻だ。近年のECサイトの急成長や新型コロナウイルス拡大による巣ごもり消費を背景に宅配便の取り扱い数は増加。その一方でドライバーの高齢化は進み、今後さらなる減少が見込まれている。

対策の一つが、寮の設置だ。シャワーや仮眠室などを備え、働きやすい環境を整える。福利厚生を手厚くすることで、人材を定着させる戦略だ。高い安全基準を達成していることを証明する全日本トラック協会の「Gマーク」や、国が指定する働きやすい職場認証も取得。労働環境の良さもPRしているまだ目に見えた実績はないものの、こうした取り組みの積み重ねで徐々に採用数を増やしていこうという考えだ。

この人手不足に追い打ちをかけるのが、「2024年問題」。自動車運転業務の時間外労働時間が2024年から年間960時間に制限される。これによってドライバーの給料が減れば、人材が他業種に流れ、新規のドライバーの確保がさらに難しくなることが懸念されている。

会社は今、荷主との間で2024年問題について話し合いを進めている。配送先を減らす一方で運賃を上げるなど、ドライバーの待遇改善を図ることが柱。運送会社と荷主双方の理解があって初めて、長期的な人材の確保が可能になるという考えだ。

人手不足への対策はそれぞれの企業の取り組みも重要だが、テクノロジーの進歩、周囲の企業の理解も必要になる。今後の動向にも注目したい。
(2023年7月8日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

© テレビ北海道