タクシー業界にも脱炭素の波 水素で走るFCVやEVの配備進む 燃料インフラ整備、コスト高など普及に課題も

水素ステーションの開所式で披露された神戸エムケイの燃料電池車(FCV)のタクシー=7日午後、神戸市中央区港島8

 兵庫県のタクシー会社で脱炭素の動きが相次いでいる。大手エムケイグループの神戸エムケイ(神戸市中央区)は関西で初めて水素で走る燃料電池車(FCV)を導入し、山陽タクシー(神戸市垂水区)などは電気自動車(EV)を配備した。いずれも走行中に二酸化炭素(CO2)を出さず「脱炭素の切り札」と言われるが、車種や充電・充填インフラの少なさ、コストの高さに課題が残り、普及拡大は未知数だ。

 神戸・ポートアイランド。7日、産業ガス大手の日本エア・リキード(東京)が5月に稼働させた水素ステーションで開所式が催された。県内4カ所目、タクシー会社と連携した国内初のステーションで、ビデオメッセージを寄せた西村康稔経済産業相は「航続距離が長く、充填時間が短いFCVは、タクシーなど商用車での活用が期待できる」と強調した。

 同ステーションを運営し、隣に本社を構える神戸エムケイはトヨタ自動車のFCV「ミライ」を2台導入。「水素タクシー」として運行を始めた。運転手や利用客の評判は上々というが、ガソリンに換算した燃費は、エンジンとモーターを組み合わせて走る主力車両のハイブリッド車(HV)よりも4割余り劣る。車種の選択肢も少ない。

 エムケイグループは2030年までに全車を、走行時にCO2など温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション車」に切り替える目標を掲げる。神戸エムケイの青木義明代表取締役(58)は開所式で、「車種、インフラ、コストの問題が解決されれば、(運用する約180台)全車を水素車に替える」と語った。

 一方の山陽タクシーは、5月30日から日産自動車のEV「リーフ」10台を導入し、全車両約100台の1割をEVに切り替えた。タクシー配車アプリ運営のGO(東京)が進めるプロジェクトに参加し、車両と垂水営業所に設置する充電器6台の提供を受けた。振動が少ない上、加速が良く、坂の多い神戸・垂水でも「ストレスなく走れる」と運転手に好評という。

 ただ、タクシーは1日の走行距離が自家用車の約7倍とされ、山陽タクシーでは平均約250キロに上る。あくまでEV社会の到来を見据えた試験運行と位置付け、充電を繰り返した際のバッテリーの劣化などを把握したい考えだ。

 同社の北岡信取締役営業部長(52)は「どのような車種が展開されるのか見えず、これ以上増やすには充電設備の増強が必要。10台で様子を見たい」とする。

 GOによると、県内ではこれまでに3社が計52台のEVタクシーを導入。国内では、全国ハイヤー・タクシー連合会の統計(今年3月末時点)で、HVが約4万4千台導入されているのに対し、EVは415台、FCVは16台にとどまる。(大島光貴)

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