まち元気に「ここから」 ドリームス誕生の立役者・徳前専務理事

開幕戦に向け、出発式であいさつする徳前氏=氷見市ふれあいスポーツセンター

  ●氷見高3冠きっかけ 生徒の未来考え奔走

 ハンドボール男子の富山ドリームスが8日、国内最高峰の日本リーグで初陣を迎える。この日を誰より待ち望んでいたのが、一般社団法人富山ドリームスの徳前紀和専務理事(氷見高副校長・ハンドボール部総監督)だ。チーム結成に奔走し「突っ走ってきた。でも、ここから」。スポーツの力でまちを元気にするという夢の実現に向け、ギアを上げている。

 ドリームス誕生のきっかけは、2018年の氷見高男子ハンドボール部の全国大会「3冠達成」だった。

 現在ポーランドで活躍する安平光佑選手(ヴィスワ・プウォツク)が主将を務めたチームは選抜、総体、国体を総なめにし、当時監督だった徳前氏は「生徒たちの未来を本気で考えるようになった」。

 氷見はハンドボールの聖地として知られる一方、実業団チームがなく、大学進学で県外に出た地元選手が戻ってくるのは教員などの一部に限られていた。「この子たちが帰る場をつくりたい」。かねて抱いていた思いを形にするため動き始めた。

 教え子たちは帰れない理由に「チームと企業がない」ことを挙げた。そこで、企業の人手不足が社会問題化する中、複数の企業で選手が働ける仕組みを作った。疲弊している産業界、人口減に悩む行政、故郷で競技を続けたい学生―。三者を一度に元気にする方法が見えた。

 19年に大会イベント「ハンドボーラーズデイ」を実施したことも大きかった。即席でつくった県出身の大学選抜チームが、全国トップ3の大学を破って優勝した。富山のレベルの高さを示していた。

 集客も十分だった。会場の氷見市ふれあいスポーツセンターは収容人数2350人のところ、満席となり、立ち見が出るほどのにぎわいとなった。「富山はハンドボールに熱い思いを持っている人がたくさんいる」と再認識した。

 その後は各企業に「夢」を語って回り、人脈の広さもフルに生かした。22年3月に発足したチームは、来年9月開幕予定の新リーグに参入することも決まった。「つらかったことはいっぱいあったし、今も苦しい。今年度の予算もあと2千万円くらい集めないといけない」と苦笑い。それでも開幕戦へ出発した選手たちを見送る表情は晴れやかだった。

 「先人が築いてきた富山のハンドボールに新しい価値観を創造し、磨き上げる機会になったらいい」。言葉には身を粉にする覚悟がにじんだ。

  ●遠征用バスお披露目 銀河をイメージ

 富山ドリームスの初陣出発に合わせ、チーム仕様の遠征用バスが7日、お披露目となった。ユニホームと同じ銀河をイメージしたデザインで、側面に獅子舞をモチーフにしたマスコットキャラクター「しっしー」やエンブレムをあしらっている。西部観光(氷見市)が用意した。

 アウェー戦の移動に用いるほか、県内の小中学校、高校、社会人の選手らにも使用してもらい、富山ドリームスのPRにつなげる。

 選手は「テンション上がる」「すげぇ」と声を上げて喜び、髙木アレキサンダー選手(富山銀行)は「想像以上にかっこいい。(豊田合成戦では)全てを出し切って次につながる試合にしたい」と力を込めた。

お披露目となった遠征用バスを眺める選手=氷見市ふれあいスポーツセンター

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