若きイレブン支える医師 KKR北陸病院の島さん、日の丸の誇り「最高の経験」

(左から)医療スタッフの一ノ瀬大地内科医、松田匠生トレーナー、村岡誠フィジカルコーチと写真に納まる島さん(右端)=2日、タイ

  ●サッカーU―17アジアカップで頂点 

 2日にタイで閉幕したサッカーU―17アジアカップを制した日本代表で、チームドクターを務める金沢市の整形外科医がいる。島洋祐さん(49)はKKR北陸病院に勤務し、代表の合宿や大会時はチームに同行。泉丘高や金大医学部でサッカー部に所属した自称「サッカー馬鹿」は「日の丸を背負う誇りと喜びは言葉にするのも難しい。最高の経験ができている」と胸を張る。

 仕事は、けがの予防・治療にとどまらない。試合中、復帰間もない選手のプレー可能時間を監督に聞かれれば、即座に意見を返す。「だから、試合中はボールではなく、わずかな異変も逃さないよう選手の動きを見ています」。同世代の子どもを持つことから、ピッチ外でも「親目線」で目を配り、気持ちに寄り添うことを心掛けている。

 アジア・カップの準々決勝でオーストラリアを3―1で下し、悲願のU―17ワールドカップ(W杯、11月・インドネシア)出場を決めた。コロナ禍で行動が制限され、強化試合が組めずチームの調整は苦労した。そんな困難と向き合いながら強く成長した選手の姿に胸がいっぱいとなった。スタッフに加わって2年半。W杯出場が決まった時は重圧から解放され、自然と涙が流れた。

 金沢市犀川小3年でサッカーを始め、野々市市布水中でもサッカーに打ち込んだ島さん。整形外科医だった父とは「別の道に進む」と漠然と考えていたが、自身はサッカーで膝や肘など4度メスを入れ、「気づけばスポーツドクターへの憧れが強く」なっていた。

 金大卒業後は県サッカー協会の医学委員となり、元協会長でJリーグ・ドーピングコントロール委員の西尾眞友金沢医大教授の推薦で2005年に全日本大学選抜ドクターに就任。17年から育成年代の代表に携わり、地元ではヴィンセドール白山もサポートしている。

 「しびれるような国際試合で君が代を聞く感動は当事者しか分からない。スポーツ医学を学ぶ後輩が一人でも多く同じ経験ができるよう道筋を作るのも自らの役目」と島さん。11月のW杯前にはフランス遠征も控えており、「選手の頑張りに応えるため、我々医療スタッフも全力でコンディション維持に努めたい」と決意を示した。

アジアカップ優勝セレモニーで選手と喜ぶ島さん(右端)=2日、タイ©AFC

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