健康的な表情に5%の切なさ…大ブーム巻き起こした原田治流の「かわいい」大公開 福井で北陸初、全国巡回展

おなじみのキャラクター「JILL(ジル)」の顔をあしらったスクールバッグはオサムグッズの代表選手(1992年 ⓒOsamu Harada/Koji Honpo)
カルビーのポテトチップスのマスコットキャラクターも原田さん作(1976年)

 1970年代後半から90年代に日本中の女子中高生のハートをつかんだ「OSAMU GOODS(オサムグッズ)」の生みの親、原田治さん(1946~2016年)。時代を超え愛される名イラストレーターの全貌に迫る「原田治展『かわいい』の発見」が7月15日、福井県のあわら市金津創作の森美術館で始まる。

 子どもの頃、後に抽象表現主義の本場米国で活躍する画家川端実に絵を習った原田さん。多摩美大を卒業して渡米、カラフルで機知に富んだグラフィックデザイン「プッシュピン・スタイル」の洗礼を受けた。

 70年に帰国。ニューヨーク時代に描いたイラストがファッション誌「an・an」の創刊準備中だった当代きってのアートディレクター堀内誠一の目に留まり、その年に誕生した同誌を舞台にイラストレーターデビューを果たす。

 高度成長の波にも乗って仕事が舞い込み、飛ぶ鳥を落とす勢いの原田さんはやがて、デザインが「消費され、すぐに忘れられる味気なさ」に葛藤を抱く。「流行より普遍性」「幅広く愛される要素」を突き詰め、たどり着いた先が「かわいい路線」だった。

 「明るく、屈託が無く、健康的な表情。そこに5%ほどの淋(さび)しさや切なさを隠し味のように加味する」。そんな原田さん流「かわいい」のレシピに基づき、76年に産声を上げたのが「オサムグッズ」だ。

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 英国発祥の童謡「マザーグース」の詩に着想を得たジルやジャック、ベティ、ハンプティ・ダンプティなどのキャラクターをあしらったトートバッグ、クッション、ステイショナリー、タオル、ハンカチ、キーホルダー、マグカップ…。

 右肩上がりの時代は終わっていたにもかかわらず大ブームを呼び、女子中高生の必携アイテムに。バブル期、経済低迷期へと時代は変われど愛され続け、世に送り出されたアイテムは1万種超。ピークの90年代には30億円を売り上げた。

 カルビーのポテトチップスやミスタードーナツ、日立ルームエアコン「白くまくん」のキャラクターも原田さん作。かわいい路線のポップな色彩と飽きのこないシンプルデザインが生かされている。

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 北陸初開催の全国巡回展。代名詞のオサムグッズをはじめ、幼少期の絵や「an・an」のイラスト、表紙画を手がけた雑誌「ポパイ」、装丁を手がけた浅田彰さんや赤川次郎さんの書籍、絵を手がけた「ハイク犬」などの絵本、自著の美術エッセーも含め、ファン垂ぜんの400点が会場を埋める。

 9月24日まで(休館日あり)。一般800円、中高生600円、65歳以上と障害者半額、介護者と小学生以下無料。金津創作の森美術館=電話0776-73-7800。

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