犬のしつけのひとつとされる『仰向け』の意味とは?間違った知識で愛犬を苦しめている可能性も

犬を仰向けにするしつけとは

「犬を仰向けにして逃げられないようにし、抵抗がなくなるまでそれを続けることで、犬がリーダーと認め主従関係ができる。」

なんてことはありません。単純に嫌がるだけです。

「犬が逃げなくなって、力が抜けてだらーんとして、そのうちリラックスをし始める」

と言いますが、それは単純に諦めただけです。そしてそれを教えている訓練士やドッグトレーナーも言うでしょう。「そのうち諦めてあなたをリーダーと認め尊敬します」と。

しかしよーく文章と状況を考えてみてください。

逃げたいという強い気持ちで必死に抵抗しても力で抑えられ、それが敵わないと理解して諦めて脱力する状況って、自分なら辛くないですか?

抵抗してもしても敵わない無駄だ…辛い…苦しい…ってなりませんか?「わぁ!この人はなんて強いリーダーなんだろう!尊敬!」ってなりますか?

普通に考えてそんな思考にはなりませんよね。

そして犬がそれをされることで諦めたらそれをした人間をリーダーと認めるのではなく、自分を支配する恐ろしい存在でひどい目に合わないためにも、順従でいなければ…と身を守るための思考になるだけです。

そして自分で何かを考えて行動することをやめ、常に抑うつ状態の学習性無力感になります。

「犬は強いリーダーを望む」という考えの是非

この方法が犬のしつけの基礎として講じられる理由が、『犬は強いリーダーを望むから、それを理解させるために抵抗をさせない』という考えからですが、そもそもそれが間違いであるということを知ってください。

これは一個人の感想や意見ではありません。科学的研究によって、犬は主従関係やリーダーではなく、家族のような関係性を求め築く動物であることがわかっています。

また、狼のリーダー論を犬のしつけに当てはめての結果でもありますが、その狼リーダー論も間違いであったこともずっと昔に「間違いだった」と研究者自身が発表しているのです。そしてその狼でさえリーダーによる主従関係ではなく、家族グループで助け合いながら暮らす動物だとわかっています。

それなのになぜ犬に対しては、いまだに科学的研究で否定、しかもそれを間違いだったと研究者本人が発表してるにもかかわらず当てはめているのでしょう。

おかしいと思いませんか?犬の先祖が狼で、リーダーが云々という説明をしてその方法を実行するのであれば、否定された事実を否定しているということです。であれば、否定を覆すだけの科学的根拠を提示して、さらにその方法が動物福祉に反していないかどうかまで合わせて考え、議論すべきです。

しかしそもそも、犬を痛めつけ苦しめるために迎えたわけではありませんよね。だからみんな「辛い、虐待みたい、虐待だと言われる」と心を痛めるのです。実際それは虐待であり、体罰です。

「しつけであれば体罰は許される」などということは一切ありませんし、そんなひどい方法を使わなくても、犬にとって優しく楽しい方法がありますので、是非そちらをご検討ください。

犬が仰向けになるボディランゲージの意味

では、なぜ「仰向け」が主従関係を築くための基礎とされているのでしょうか。

しばしば「仰向けは犬のボディランゲージで『降参』を意味し、下位の者が上位に従順さを示すものだ」と説明されますが、これは半分正解ですが、半分不正解でもあります。

たしかに犬の仰向けは「降参」を意味しますが、その降参の内容は「もうやめて!これ以上はやめて!降参するからあっちに行って!」です。もしくは、大好きな相手に対して甘えてほしくてお腹を出したり、リラックスしてるときにすることもあります。

いずれにせよ、決して「あなたをリーダーと認めました!従順になります!」という意味ではない、ということを知ってください。

そしてそれは犬が状況を読んで、コミュニケーションとして自らお腹を出して伝えているだけで、人間が無理やりひっくり返して矯正させるものではありません。

特にお腹を見せる理由もないのに無理にひっくり返されれば、当然犬は嫌がります。しかもお腹は急所のひとつです。その急所であるお腹を見せるということは、自分にとって身の危険をさらすことでしかありませんから、当然嫌がるし抵抗します。場合よっては、身の安全を確保するためにも噛みつきますよね。

まとめ

犬を支配することが前提のかつてのリーダー論は、現代では犬と人との関係を悪化させることはあっても、良い関係にすることは決してありません。

また、科学は日々進化しています。犬のしつけの方法に関しても、犬にとって精神的・肉体的にベストな方法が、専門家によって日々研究され、進化し続けていることを知ってください。

犬を本当に愛しているという自負があるのであれば、犬とって本当に大切なことは何かを常に考え、正しく理解し、犬との良好な関係を築くために自分がとるべき方法を考えながら愛犬との優しい日々をすごしていただきたいです。

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