【「アラクオ」リレーインタビュー第4回】「演じることが楽しい」と思えるようになった転換期、美山加恋に刺さった“ある言葉”とは

EXILE/FANTASTICSの佐藤大樹さんが地上波連続ドラマ単独初主演を務める新ドラマ「around1/4(アラウンドクォーター)」(ABCテレビ・テレビ朝日ほか)。かつてのアルバイト仲間だった新田康祐(佐藤)、平田早苗(美山加恋)、橋本明日美(工藤遥)、横山直己(松岡広大)、宮下一真(曽田陵介)ら5人が、アラサー前の25歳=アラクオを迎える中、それぞれが直面する“25歳の壁”、そして“恋の分岐点”にフォーカスを当て、人生と恋に悩み傷つき過ちを繰り返しながらも自分なりの乗り越え方を見つけていく姿を、等身大のキャラクターとリアルなセリフとともにみずみずしく描いていく。

TVガイドWebでは、クランクイン前に敢行したドラマ「アラクオ」(「around1/4(アラウンドクォーター)」)を彩るメインキャスト5人のリレーインタビューを公開中。第4回は、高校時代から8年にわたっていちずに彼氏と付き合ってきたものの、その彼から唐突に振られたことで自分を見つめ直すもう1人のヒロイン・平田早苗を演じる美山加恋さんが登場。早苗を含んだ5人それぞれの人生を動かすきっかけにもなる早苗の失恋。しかし、作品の本読みを終えた直後の美山さんに話を聞くと「早苗らしいですよね」と意外な答えが返ってきた。

――あらためて、この「around1/4」という作品の印象を教えてください。

「どのキャラクターにも誰かしらが共感できるようなすごくリアルなお話ですし、まさに早苗なんて女の子が通ってきたような出来事を短い期間で体験しているので、見ていても共感してもらえるキャラクターなのではないかと思います。今日本読みをやっていても、それぞれにすごく個性があるので、それぞれの人生を追って見てもらうのも楽しいと思います。とにかく飽きる瞬間がないドラマだと思いますね」

――本読みを経て、作品のイメージは変わりましたか?

「だんだんと、今まさに出来上がってきている状態というか、5人の物語になっていて、短い期間でそれぞれがいろいろな経験をしているので、『今この人たちはどういう状況なんだ?』と整理していかないといけないなと分かりました。セリフの『…』というところにも『この人たちが今こう思っている』というニュアンスがめちゃくちゃ入っているんだなと、実際にセリフを言いながらすごく感じたので、一つ一つ大事にしていくことがすごく大切なドラマなのかなと思いました」

――今回演じられる早苗についてはどのように捉えていますか?

「早苗はすごく普通の女の子です。何かがひねくれているわけでもなく、素直に目の前に起こった出来事を経験していく人物。だからこそいろいろな人に振り回されたり、康祐との関係が発展していったりする中でしっかりと成長していける女の子なので、康祐やケンタ(三宅亮輔)とのお芝居はすごく繊細になるというか。そこでちゃんと早苗として経験していけるのかどうかというのが、最後の早苗の成長につながるんだろうなと思っています。アラクオの頃って環境の変化だったり、人との関係性がどんどん変わってきたりする年なので、早苗はこの1カ月でそれが一気に訪れているのかなと思います。人とのつながりを大事に演じていきたいですね」

――早苗に共感できるポイントはありますか?

「早苗は8年間ずっと同じ人と付き合ってきて、その1人としか経験がないから、もはや一種の洗脳というか『もうこれしか分からない』という中で、『まさか私の知っていた世界が狭かったなんて…』と最初は思っているんですよ。それって誰でも経験があることで、2人目と付き合った時に知ることってあるじゃないですか。そういうところにきっと共感してもらえると思うし、早苗は思ったことをちゃんと言う子だから、見ている人にもちゃんと伝わると思います。早苗の素直なところを視聴者の方も楽しんでいただきたいです」

――物語は早苗が8年寄り添ってきたケンタから突然「別れよう」と言われるところから始まりますが、どのように感じましたか?

「どう思うんだろう…でも、衝撃的ではありますよね。ほかの人を経験してみたいって『まあ、そうだよね』とは思う気持ちもあります。例えば早くに結婚して『もっと遊んでおけばよかった』と言うじゃないですか、だからアラクオで長く付き合っていると、どこかしらで思うことなのかなって。ある意味、そう言えるのってすごく真面目でピュアだからこそなので、ケンタと早苗らしいなと思います。『早苗だから、こういうケンタと付き合ったのかな』と思いますし、あのシーンにも意外と共感してもらえることってあるのかなと」

――そこからだんだんと康祐と関係が深まっていきますが、康祐のキャラクターについてはどのように捉えていますか?

「康祐は一番謎なんですよね…というのは、物語上でも康祐自身が隠している自分というのがたくさんあるからなのですが、それを知らない状態で早苗は(康祐と)会っているので、チャラ男というか『そりゃモテるよな』みたいな(笑)。人に触れられたくない部分を理解しているからこそ、相手のことをうまく傷つけないように、大事に扱って人と接することがうまいのが康祐なんだろうなとすごく思います。だから早苗も心を許せるし、早苗もコンプレックスを持っているからこそ、康祐とも通じ合ったのかなと思いますね。康祐と早苗の展開は、私もすごくキュンキュンしますし楽しみです」

――原作でもすごくいいシーンですよね。それこそ、康祐の放つ一言一言が早苗にとってはターニングポイントのようになるかと思いますが、美山さんご自身がこれまでの活動の中で印象に残っている“言葉”はありますか?

「私が初めて舞台でヒロインを演じた時に、舞台でどうお芝居したらいいのか分からなくて誰にも相談できなかったことがあったんです。周りはもちろんプロばかりで、『こんな素人みたいな悩みを話すの、ちょっと恥ずかしいな』と誰にも言えなくて。ずっと1人で隅っこにいたのですが、主演のある俳優さんが『どうしたの? 大丈夫?』と心配してくださって。それで『実は舞台ってあまりやったことがないから、自分が今どう動いているのか分からなくて、どう動けばいいのかも分からないんです』と伝えたんです。自分的にはすごく恥ずかしかったのですが、その方は『分かるよ。女優さんって自分の気持ちを出すのはすごく上手だけど、自分のことを俯瞰(ふかん)して見ることって難しいと思う。舞台って第3の目が重要だから、それを取得するのはすごく難しいし、悩むのは分かる。でも俺は逆なんだよね』と言ってくださって」

――逆、ですか?

「『自分の心に素直になって立つのは難しくて、でも第3の目では見れる』みたいな、男女の違いみたいなものをそこで初めて教えてもらったんです。『そういう考え方あるんだ。私が得意なことをもっと大事にしてもいいのかな』と思えたのがすごく印象的で、そういう考え方があるのだと衝撃を受けました」

――現在は舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に1年以上出られていますが、その現場でも生きていることはありそうですね。

「そうですね。その言葉を聞いてから、『自分のことを俯瞰して見ることがこんなに苦手だったんだな』と思えましたし、単純に悔しいなと思って意識するようになったんです。そこからドラマの現場でも今の舞台でもその意識がすごく生きていて、助けられているというか。自分が舞台でやっていた嘆きのマートルという役が、身体表現がすごく大事だったので、それこそ自分がどんな動きをしてどんな表情をしているのか、ちゃんと見られないと分からなくなる難しい役だったので、その言葉があったから乗り越えることができましたね」

――長期間の舞台を経て、久々の地上波の連ドラ出演になるかと思います。あらためてこの作品への意気込みと見どころを教えてください。

「本当に面白いお話です。『演じていて楽しい』というその瞬間瞬間を生きられる感覚がすごく久しぶりなので、特に康祐との2人のシーンではこの空気感を大切にしながら演じていきたいです。話の中に含まれているニュアンスもすごく大事だと思っているので、それぞれの心情や時系列もちゃんと踏まえながら、見ている方にもその流れに沿って楽しんでもらえるように、一つ一つ丁寧に撮影していきたいなと思います。あと、今回の現場は同世代の方がほとんどなので、そこもすごい楽しみですね。楽しい現場になったらいいなと思っています」

インタビュー後、同席していたプロデューサーからの「『アラクオ』をはやらせたい!」という言葉に笑顔を見せていた美山さん。実は、友人の結婚式で友人代表のスピーチを控えているそうで、「緊張します…!」と口にしながらも、大事な役を務めることに感慨深そうな様子だった。そんな美山さんが作り出す等身大の早苗が劇中でどう映し出されるのか、期待が高まるばかりだ。

明日7月9日は新田康祐を演じる主演・佐藤大樹さんがいよいよ登場。座長として並々ならぬ思いを抱える佐藤さんが、今作にかける思い、そしてそこに至るまでの経緯を熱く語ってくれた。

【プロフィール】

美山加恋(みやま かれん)
1996年12月12日生まれ。子役としてデビュー後、2004年「僕と彼女と彼女の生きる道」(フジテレビ系)で一躍脚光を集めると、ドラマ「ちびまる子ちゃん」シリーズ(フジテレビ系)など数々のドラマ作品に出演。主な出演作に、「今夜、わたしはカラダで恋をする。」(ABCテレビ)、「受付のジョー」(日本テレビほか)、「花嫁未満エスケープ」(テレビ東京系)、映画「僕らのごはんは明日で待ってる」(2017年)、ミュージカル「ピーターパン」(21年)のほか、アニメ「キラキラ☆プリキュアアラモード」(テレビ朝日系)、映画「かがみの孤城」(22年)など声優としても活躍中。現在、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演中。

【番組情報】

ドラマL「around1/4(アラウンドクォーター)」
テレビ朝日
7月8日スタート
土曜 深夜2:30〜3:00
ABCテレビ
7月9日スタート
土曜 午後11:55〜深夜0:25
※ABCテレビでの放送終了後、TVer、ABEMAで最新話を見逃し配信

取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当) 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/関東沙織 スタイリスト/椎名倉平

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