夢はプロ野球選手、ではなく審判員 兵庫・上郡高の野球部マネジャー、野島さん チーム支え、練習中に腕磨く

野球部の練習でジャッジする野島悠斗さん=上郡高校

 全国高校野球選手権兵庫大会が開幕した。甲子園を目指して11日に初戦を迎える上郡高校(兵庫県上郡町大持)の野球部に、プロ野球選手ならぬプロの審判員を目指す生徒がいる。3年の野島悠斗さん(18)はマネジャーとしてチームを支えつつ、練習では審判を務める。1年生の時から県高校野球連盟(県高野連)の審判研修会に参加し、社会人に交じってジャッジの技術を磨く。(地道優樹)

 小学4年生で野球を始めた野島さん。6年生の時に甲子園でプロ野球の試合を観戦し、切れのある身ぶりで試合を裁く審判員に目を奪われた。「アウトかセーフか、瞬時に見極める姿がかっこよかった」と話す。

 中学の野球部では、たまに練習試合で審判を務めた。上郡高校に進学し、「中途半端はいけない」と審判に専念することを決意。マネジャーとして入部した。週6日、グラウンドを整備したりノックしたりして練習を支える傍ら、投球を判定する練習も始めた。

 1年生の秋ごろから県高野連の審判研修会に参加し、地区大会の審判も引き受けるようになった。判定時の位置取りやジェスチャー、発声などを本格的に学び、分かりやすく正確なジャッジをする醍醐味(だいごみ)もより感じるようになったという。県高野連の審判部で播磨・但馬地域の地区長を務める姫田真吾さん(45)は「社会人審判員と比べても、全く遜色ないレベル」と太鼓判を押す。

 時速100キロ以上の硬球が当たることもしばしば。手足には青あざが絶えないが、「際どいコースを見極められるようになっていく達成感」が、痛みに勝るという。家ではプロの審判員の動作をユーチューブで見て研究。「良い審判ほど動きに無駄がなく、立ち姿に自信があふれている」。

 今は最後の大会に向け、マネジャーの仕事に集中する。「選手たちとは厳しいことも言い合いながら、一緒に汗を流してきた。少しでも勝って最後にいい思い出を残せるよう、残り少ない時間を精いっぱいサポートしたい」と力を込める。

 同級生が引退しても、野島さんは技術を高めるため、この秋から県高野連の登録審判員となる予定。高校卒業後も、働きながら夢を目指していく。

 プロへの道は、狭き門。日本野球機構(NPB)所属の審判員になるにはまず、毎年1回開催される1週間の「NPBアンパイア・スクール」に参加し、「研修審判員」に採用されなければならない。書類選考を通過した参加者約60人のうち、選ばれるのは毎年3、4人。そこから独立リーグで1~2年研修を積み「育成審判員」に合格して初めて、NPBの2軍の試合に出られるようになる。

 野島さんは、今年12月のアンパイア・スクールに応募するつもりだ。難しいことは承知の上。「どんな時も冷静で、誰からも信頼されるような審判を目指したい」と前を向く。

© 株式会社神戸新聞社