炎天下に外飼い、車中に閉じ込め…真夏に増える不適切な犬の飼い方【杉本彩のEva通信】

炎天下に外飼い、車中に閉じ込め…真夏に増える不適切な犬の飼い方【杉本彩のEva通信】

当協会へ寄せられる通報で夏になると増えるのが、外飼いの犬の不適正飼養です。 ・炎天下に繋がれていて日差しを避ける場所もない ・暑さに弱い犬が真夏の高温多湿のなか外飼いされている ・車中に犬が閉じ込められていて気温の上昇が心配

このような内容の通報とご相談が多くなります。 特に暑さは、人間のように汗をかいて体温調節ができない動物にとって、あっという間に命取りになってしまいます。その上、給餌給水がきちんとされていないと状況はさらに深刻です。ときには一刻を争う場合もあります。毎年この時期、犬の外飼いや、室温と湿度の管理不足による熱中症の注意喚起に、動物愛護団体は力を入れていますが、それでも問題は後を絶ちません。動物について無知であるがゆえに、悪気なく不適正飼養になっている場合もあるのでしょうが、だからと言って許されるものではありません。動物にとって不幸であることに変わりはありませんから。

他にも時々受ける通報に、叩いたり蹴り飛ばすなどの飼い主による暴力的な虐待があります。このようなケースは、「しつけ」をしているなど、都合の良い理由で自分を正当化します。親の子どもへの虐待にも同じ傾向があるようです。今どき暴力で「しつけ」なんてナンセンスの極みであり、ただの虐待でしかありません。

最近こんな通報がありました。外飼いの大型犬を、飼い主が殴る蹴るの暴力をふるっていると、近所の人からの通報です。そのお宅は、そもそも広い庭があるのに、狭い囲いの中で大型犬を外飼いです。他にも、数十匹の親仔猫が自宅の庭で飼われていて仔猫は産み放題、カリガリに痩せていて中には病気のような猫もいる。また、外で飼われている柴犬が、何ヵ月も前から玄関で鳴いているが飼い主は無視。また、猫を多頭飼育している家があるが、近親交配を繰り返しているようで奇形の猫が多数いて糞尿の臭いが外までする。といった内容も続々寄せられます。

自分が飼っている犬や猫だから他人にとやかく言われる筋合いはない「それが自分の飼い方だ」と暴力や不適正飼養を正当化する飼い主もいるでしょう。ですが、動物虐待に対しては、SNS上もしかりご近所さんの厳しい目が向けられていることも忘れてはいけません。動物虐待罪が厳罰化になり、動物を殺したり傷を付けたりする以外の、日常的で苦痛が長引く不適正飼養に対しても社会の目は大変厳しくなっています。正しく飼えない人、正しく飼う心づもりがない人には、動物と暮らす資格はないのです。

また、そういった暴力や不適正飼養を目撃した方々には、諦めずに行政に通報し、厳格な指導をしてくれと訴えることが大切だと思います。また、暴力的な虐待を目撃したら、迷わず警察に通報してください。誰が通報したかを教えることはありません。もちろん、状況によって近所からの通報だと推測できてしまうこともあるでしょうが、近所の厳しい目が向けられていますよ、ということを自覚してもらうことも必要です。

どのようにそれを伝え、自覚してもらうかは飼い主の人物像にもよるでしょうが、その一番ハードルの低いところでは、啓発チラシなどの投函でしようか。当協会Evaでも外飼いや日中の散歩、部屋の中でも熱中症に注意が必要だと、啓発するチラシを作っています。新しいチラシも作成中ですので、 問題に応じて是非ご活用頂ければと思います。ネグレクトや虐待に苦しんでいる動物を救えるのは、目撃したあなたの、少しの勇気とあきらめない行動です。

(Eva代表理事 杉本彩)

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 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。

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