障害者の外出支え10年 宇都宮のNPO「アクセシブル・ラボ」 「行きたい」阻む課題解決

設立から10周年を迎えた「アクセシブル・ラボ」の大塚代表理事=6月下旬、宇都宮市上戸祭町

 障害の有無にかかわらず、みんなが笑顔で楽しく外出できる社会の実現を目指すNPO法人「アクセシブル・ラボ」(宇都宮市上戸祭町)が今年、設立から10周年を迎えた。障害者目線での街中の調査や情報発信、課題解決などに取り組み、近年はアドバイザーとして大手企業の製品・サービス開発にも関わる。自身も車いすユーザーの大塚訓平(おおつかくんぺい)代表理事(42)は「障害に着目すると見えてくる課題の解決を通じて社会を便利にしたい」と話す。

 同法人は2013年6月に大塚さんが立ち上げた。28歳だった09年、不慮の事故で脊髄損傷の重傷を負った。車いす生活を送る中、「行きたい所より、行ける所」を探す自分に気付いたことがラボ設立のきっかけだった。大塚さんは「障害者に必要な情報やバリアフリーが社会に不足しており、外出や消費を妨げている」と指摘する。

 ラボはこれまでに、宇都宮市が指定する災害時の避難所の多目的トイレを障害者目線で独自調査したり、グルメガイドに車いす利用者が入りやすい店を示すアイコンの掲載を働きかけたりしてきた。

 近年は障害者の声を反映したインクルーシブ(誰も排除されない)デザインの製品やサービス向上の提案もするコンサルティング事業に力を入れる。ドアの押し引きが難しい人向けに、リモコン操作で自動開閉できるようになる製品や、普通免許でけん引できる移動式バリアフリートイレなど、10件以上の製品開発やサービスに携わってきた。

 ラボを立ち上げた10年前に比べ、東京五輪・パラリンピックの開催や持続可能な開発目標(SDGs)の推進を機に「障害者により一層目が向けられる世の中になった」と受け止める。

 「当事者だからこそ気付ける課題の解決は、高齢者や広く健常者の生活にも役立つ」と強調する。今後に向け「障害を起点に全ての人に向けたインクルーシブデザイン製品やサービスの開発を強化していきたい」と語った。

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