町田との注目の“東京クラシック”に挑む東京V…城福監督「我々が何を目指しているかをアピールしたい」

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東京ヴェルディは9日、国立競技場で開催される明治安田生命J2リーグ第25節でFC町田ゼルビアとの“東京クラシック”に臨む。

現在、首位を快走する町田(勝ち点53)に対して、2位の東京V(勝ち点43)は勝ち点10差を付けられており、天王山という意味合いよりも6位のヴァンフォーレ甲府(勝ち点40)まで勝ち点3差でひしめく自動昇格争いを優位に進める上での勝ち点3奪取が求められる状況だ。

とはいえ、味の素スタジアムでの前回対戦では0-1で敗戦を喫しており、同じ東京を本拠地とするローカルライバルとのダービーでのシーズンダブルは許されない。

城福浩監督は試合2日前の7日にクラブハウスで行われた記者会見の場で、「首位決戦という感覚はない」としながらも、首位チームとの勝ち点差を縮めると共に昇格争いに絡んでいく資格があることを証明する一戦にしたい考えだ。

「順位は2位ですが、僕らは首位決戦という感覚はまだないです。とにかく町田の背中が見えなくならないようにしたい。この前の試合(熊本戦)では自分たちで2位を勝ち取りましたが、今度は負けたのに2位です。我々としてはこの立ち位置を守るという考えはまだまだ早く。そんなふうに守りに入ってしまうと、ペナの中に入っていく人数が減ってしまう。そういった影響が出てしまうのはいやだなと思います。あくまでチャレンジャーの立場で、町田にどれだけ我々のサッカーが通用するのか。これからは昇格争いに絡んでいく資格があるのか、そういう部分が毎試合問われてくるので、とにかく自分たちが目指しているものをやり抜くことが大事だと思います」

リーグ最少の15失点の堅守に加え、J2リーグ得点ランキングトップタイの14ゴールを誇るFWエリキやMF平河悠を筆頭に、高い個人能力を持つ攻撃陣擁する首位チームに対して、攻守両面での完璧な試合を求める。

「(1-2で敗れた)前節の長崎戦は本当に反省しなければいけない試合内容だったと思いますし、それが町田戦につながっていくと思います。ひとつは相手の個々の能力が非常に高いこと。そこに対して、ポジション関係なく隙を見せると、そこからやられてしまうということ。もうひとつは何もないゼロの状況からイチ(得点)を作り出せる選手がいる。まさに我々は前節にそれで苦渋を舐めたので、ゼロの状況からイチの状況を作り出す確率をできるだけゼロ%にしたい。それはチームとしても個人としても相対する選手に対して何ができるかが重要です」

「対して我々はすでに選手とも共有していますが、我々は0.1の攻撃を積み上げてイチ(得点)にしていく。そういう意味では0.1の攻撃は人数をかけてペナの中に入ってアイデアを出して全員で点を取っていく意味では少しこの前の試合は消極的すぎました。自分が攻撃参加したからといってそれが結果につながるかはわかりませんが、それでもこのチームは行かなければいけない。0.1を重ねなければイチになりません。誰が出ても守りに入らず、0.1を重ねようとしたのか? そこは強く言いました。相手がゼロからイチにできる選手がいたからしょうがなかったではなく、我々はそれが重ねられたのか。次の試合はまさにそれが問われる試合になります」

「相手の選択肢を奪うような前線の守備が必要です。あとは見たら個人のミスに見えるような場面。この前の試合(長崎戦)で言えば、2失点目のところ。1失点目もチームのビルドアップのミスからでしたが、それをカバーしてこそゼロをゼロにできる。それをカバーできずにしょうがないと言ってしまえば、我々はリーグ戦のこの位置で戦えない。もうコンマ5秒早く反応できなかったのか、早くステップワークできなかったのか。何のためのハイラインなのかと言えば、カバーのメンタリティがあって初めて成り立つもので、誰かがミスしたときにしょうがないは我々の守備ではない。何か予想できないことが起きても他のチームよりもコンマ5秒早く反応できるディフェンスラインでないと難しいです」

また、今回のダービー直前には主力を担ってきたMFバスケス・バイロンが町田に移籍する、“禁断の移籍”が起こった。右サイドで存在感を放った主力の流出によって攻撃の再構築が必要となるが、百戦錬磨の指揮官はこれまで築き上げたコレクティブなチームスタイルによってその穴埋めは十分に可能だと主張する。

「もちろん、彼が主軸を担っていたことは間違いなく、これを否定するものではないです。ただ、我々は誰かに頼ったサッカーをしてきていない。そこは課題でもありますが、ストロングでもあると思います。前線の選手がなかなか定まりきらなかったり、誰かが数多く得点を取ることはできなくても今の順位にいるというのは、全員でサッカーをやっているからです」

「もちろん彼をリスペクトしていますし、彼がいなくなった痛手や、マイナスはあります。ただ、彼がいなくなったことで出る、これが衝撃的であれば衝撃的であるほど出るプラスがあります。これを上回らせることが大事だと思います」

「そういう意味では1人が抜けたとしても我々のチームレベルが著しく落ちるわけではない。現状のチームのストロングを出していくのみです」

今回の試合は新たに生まれ変わった国立競技場で開催されるJ2リーグ最初の試合となる。

奇しくも2014年5月6日にヴァンフォーレ甲府の指揮官として旧・国立競技場で浦和レッズとのJリーグラストマッチ(0-0のドロー)を指揮した城福監督は、同スタジアムに不思議な縁を感じつつも、Jリーグが1万人の無料招待を実施するなど、普段と異なる観客層の中で東京Vが目指しているものを強くアピールしたいとしている。

「場所が都心にあって普段と違ったお客さんの層も来られると思います。いつも我々の背中を押してくれているサポーターの方々も来ていただけると思います。そういう雰囲気を力に変えたい。こういう舞台を町田さんが用意したのであれば、むしろ我々はそれをうまく利用したい。我々自身が何を目指しているのか、いろいろな方々に知ってもらう良い機会になる。それを強くアピールしていきたいです」

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