木戸大聖が金属バットで都市伝説に挑む『先生!口裂け女です!』の監督は一体どんな人のか? 広島が生んだ奇才・ナカモトユウ伝説

『先生!口裂け女です!』©️2023REMOW

『先生!口裂け女です!』は”青春”バトルホラー

『死霊軍団 怒りのDIY』『福山市長に1日密着してみた』で知られるナカモトユウ(中元雄)監督の最新作、『先生!口裂け女です!』がついに公開された。本作は「盗んだバイクが口裂け女のものだった!」というあらすじからして普通のホラーではないことは明白だったが、

  • 気合の入り過ぎたアクション
  • おバカで愛すべき登場人物
  • 突拍子もなく入る名作のオマージュ
  • 小道具への妙なこだわり

と、ナカモト監督の持ち味が凝縮した青春バトルホラーだった。

もう少し紹介すると、

  • 口裂け女がレザージャケットに黒いアイラインという誰も想像できなかったデザイン
  • ドニー・イェンばりに拳を叩き込んだかと思えばジャッキー・チェンばりに自爆
  • 腸を引きずりだしてジャンプ
  • どう考えても『コマンドー』を真似したかった武装シーン
  • ショットシェルポーチ(薬莢ホルダー)にロケット花火
  • なぜかガンプラの飾り方に凝っている

……といったところ。日本の作品、特にホラー映画となると、じめっと陰鬱とした作品が特徴だが、往年の香港映画のようなカラっとしたコメディ仕上げの作風を作るのは、ナカモト監督だけだ。

錚々たるキャスト・スタッフを集めた監督、ナカモトユウとは何者か?

本作はナカモト監督にとって初の長編作だが、全くブレない作風はもちろんのこと、主演が『るろうに剣心』シリーズ(2014年ほか)の本条鎌足役などでおなじみの屋敷紘子さん、アクション監督(ファイト・コレオグラファー)が『キングダム』(2019年)の川本耕史さん(『ジョン・ウィック コンセクエンス』の次に取り組まれた作品だったらしい!)、特殊メイクデザイン/特殊造形に『シン・仮面ライダー』(2023年)の藤原カクセイさん、VFXスーパーバイザーに『ゴジラ』『ガメラ』シリーズの神谷誠さんと、錚々たるメンバーが集まっている。

以前から『死霊軍団~』に清野菜名さんが主演されたり、『戦慄怪奇ファイル』の大迫茂夫さんが常連的に出演されていたり、トップクラスの俳優・スタッフ陣がナカモト監督を支えているが、それも監督の人間的な魅力ゆえだと断言できる。往々にして「名監督」と呼ばれる方は人間としてがおもしろい方が多いが、ナカモト監督もめちゃくちゃおもしろい。

ということで今回は、ナカモト監督について紹介しようと思います。

広島が生んだ奇才・ナカモトユウ伝説

素朴過ぎるナイスガイ

なんと、ナカモト監督が我々のサイト<ビーパワーハードボイルド>の読者で、ホームページが壊れた時にDMで修復方法を教えてくださったという不思議な出会いだ。初めて実際にお会いした時、これから作りたい映画の話をしてくださったのだが、どれもおもしろく、その様子は「生粋のクリエイター」そのもの。まさに映画監督になるべくしてなった方だと感動した。

ただ、驚くほど謙虚な方で、本人が自身の才能をあまり理解していないところがある。先日も、気づけば俺がナカモト監督を励ますというおかしな状況になっていた。

「苦手なんですけど、やっぱり映画関係者が集まる飲み会とか行くべきなんですかねぇ。」と言うのではじめは冗談かと思ったが、監督の目は至って真剣だった。

俺は「監督は今のままでいいと思います……」と返すしかなかった。

自分が監督であることを忘れがち

そんな親しみやすいナカモト監督なので、会って10分後には昔からの友達のように仮面ライダーやブルース・リーの話ばかりしていた。このままではいかん! と思い、撮影現場の話を振ってみると一生懸命伝えてくださった。ただ、その話しぶりが監督目線ではなく、「すごい人たちの仕事に触れて感動しました」と、まるで見学に来た映画少年のように純粋で、本当に謙虚な方だな……と感動していたのだが、ある事件が発覚した。

を読んでほしい。全く本編の宣伝を一切する気がなく、与太話ばかりしているのだ!

心配になって「監督、映画の宣伝しましょうよ!」言ったところ、「いやあ、僕のコメントとか誰も読まないでしょ~(笑)」と苦笑い。

「いや、あなた監督でしょ!? 監督のコメントを読まないわけがないですよ!」と言うと、しばらく沈黙した監督から出た言葉がこれだった。

「確かに。僕が監督でした」

男の約束

以前から「デッドプー太郎さんに何か書いて欲しくて」と言ってくださっていたので、「私なんかでよければ、いくらでもお手伝いします!」と伝えていたのだが、まさかのパンフレットの執筆依頼を頂いてしまった。

「本当にありがたいのですが、こんな記念的な作品を俺に頼んでいいんですか!? 俺はただの映画好きのおっさんですよ!」と念押ししたのだが、マジのお願いだった。

映画業界に憧れていても、長編作品を撮り、ましてや劇場公開できる人なんてほんの人握りだ。その夢を実現させたナカモト監督はかっこいいし、自身の集大成的な作品の記事を俺に依頼してくれるなんて、と胸が熱くなった。

俺自身、11年前に映画の感想文を書き始めた頃からの夢が「パンフレットに載ること」だった。

俺の夢も叶ったのだ。

そして、そのパンフ用原稿をナカモト監督に提出したとき、監督から返ってきた言葉が、「ありがとうございます。めちゃくちゃ笑いました! 僕もおもしろい映画レビュー書けるようになりたいです」だった。

思わず「おもしろい映画を作る側の監督のアンタが言うセリフじゃねーよ!!」とツッコんでしまった。

いつか<ナカモトユウ ボックスセット>が発売される日まで

俺なんかがこんなことを言うのは失礼だが、ナカモト監督には人を惹きつける魅力がある。31歳で長編映画を作れる方だ。一般人とは違う天才的な発想の持ち主だということは重々理解しているが、監督は”助けてあげたくなる”というか、後輩のようなかわいらしさがあるのだ。

その「かわいらしさ」は作品にも表れていて、登場人物たちの会話パートは青春時代の放課後のような、やさしいゆるさに溢れている。映画業界のトップレベルの方々が、ナカモト監督のもとに集まるのもわかる気がする。

監督、改めまして公開おめでとうございます。俺が「『口裂け女』のデザイン、めっちゃカッコいいです!」と言ったとき、照れくさそうに「実は『仮面ライダーBLACK SUN』が元ネタです」と教えてくれて、大笑いしました。

いつか<ナカモトユウ ボックスセット>が発売されるくらい、これからもたくさん映画を撮り続けてください。そして、いつまでも愛されキャラの監督でいてください!

文:デッドプー太郎

『先生!口裂け女です!』は2023年7月7日(金)より全国ロードショー

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