美容系男子アナがLGBTQ当事者と対話 メディアでも変わるジェンダー観、MCは性別ではなく「人」で

企業で働くLGBTQ当事者の声を集めたフリーマガジン『BE』(Indeed Japan)第2号の発行記念イベントがこのほど、都内で開催された。登壇した人たちの中、MCを務めた福島中央テレビの直川(のうがわ)貴博アナウンサー(29)が当事者たちと向き合い、対話を通して、メディアに身を置く立場から見解を語った。

直川アナは「ノウパン」の愛称で知られ、自他ともに認める「美容オタク」。昨年、日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」出演などを機に、「かわいすぎるアナウンサー」「美容大好き男子」と話題になり、はじける笑顔が全国的に注目された。自身のYouTubeチャンネル「ノウパンちゃんねる」(毎週金曜夜8時配信、登録者数約1万5000人)も好評な人気ユーチューバーでもある。

今回のイベントは、求人検索エンジン「Indeed」の日本法人「Indeed Japan」によって昨年創刊された『BE』の第2号発行日となる6月22日にブックカフェ「文喫 六本木」で開催。編集スタッフや同誌で紹介された当事者らが集った。直川アナはオーバーオール姿で登壇し、司会進行の傍ら、自身の見解を語る場面もあった。

LGBTQ当事者が就職活動で体験したエピソードが披露される中、直川アナは幼い頃から飛行機が好きで 将来の夢は「客室乗務員」だったことを明かした。

「私は職業選びの時に『客室乗務員』に憧れていたんですが、当時、国内の航空会社では男性が合格した実績がなかったんですね。(医療分野で)今は『看護師』さんで、『看護婦』さんという呼び方がなくなったように、私の受けていた航空会社では男性が今、空を飛んでいるということで、(就職時における性の平等は)進んできているのかなという面も感じます。職業選びの壁が少しでもとれていくといいですね」

さらに、一般参加の当事者たちとグループセッションで対面した直川アナは、メディアにおけるジェンダー観の変化についても語った。

「ナレーションでは『男性アナ希望、女性アナ希望』とか、あったりしますが、それは性的な声質で致し方ないという面もあります。それでもテレビは変わってきていて、たとえば、ニュース番組は男女の(コンビによる)MCだったのが、『女性・女性』という形にもなっています。男女で分けず、MCも『人』で選ばれているところはメディアも進んできているところかなと思います」

『BE』第2号では、メディアで働く当事者の1人として、日本テレビの元カイロ支局長で、現在は同局の映画事業部で映画プロデューサーとして活躍する谷生俊美さん(トランスジェンダー女性)が登場している。

直川アナは「放送局で働いて、『伝える』ということを仕事にしていますが、(同誌の)インタビュー記事にある日本テレビの谷生さんのように意識の高い方がいらっしゃいます。ジェンダーだけでなく、いろんな、こういう問題があるということを、身近な方からお話をうかがって課題が見えてきたからこそ、私たちはスタートラインに立っているのかなと思いました。ジェンダー、セクシャリティーにかかわらず、同じ目線で発信できたらなと思います」と見解を語った。

「子どもの時から女の子が好きな物が好きで、仮面ライダーよりセーラームーンが好きでした」という直川アナ。「男の子はこうあるべき」という〝普通〟が必ずしもそうではないという感覚を幼い頃から身に付けてきた自身の人生において、マイノリティーであるかもしれないが、自分の生き方を求めている他者への配慮という視点を持つ。

「その人の趣味や好きなことと同じ程度に、セクシャリティーについても敷居を低くしていければ(LGBTQに関する問題についても)解決の糸口になるかもしれません。テレビ局のアナウンス部で仕事をしていると、同僚が言葉に敏感な人ばかりなので、この言葉で視聴者の皆さんが傷つかないかな?…とか、この言葉は適切かどうかを話し合い、時に視聴者の皆さんにお叱りをいただきながら、ブラッシュアップしています。みなさんの職場環境でも(なにげなく発した言葉が)『言葉の暴力にならないか』という想像力が必要かと思います」

直川アナは言葉を扱うプロとしての職業意識を語った。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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