元カープ監督・緒方孝市さん “恩師・三村敏之と監督像” をラジオで語る 安仁屋宗八 臨時コーチ起用の真実

広島カープ 元監督の 緒方孝市 さんが、ラジオ番組に出演し、現役時代を振り返りながら選手の育成や目指した監督像について語りました。聞き手は、野球解説者の 安仁屋宗八 さんが緊急入院したため、ピンチヒッターとして緒方さんと旧知の間柄という 横山雄二 アナウンサーが務めました。

横山雄二 アナウンサー
緒方さんは、自分の中で高校時代の恩師とスカウトの方、あと 三村敏之 さん。この3人を自分の中の肝にしているじゃないですか。

元広島カープ監督 緒方孝市 さん
そうですね。自分の師ですよね。はい。

横山雄二 アナ
監督像を目指そうと思った、こういう人とかこうだな、あれがこうだなっていうのでいうと、誰が参考になっていた?

緒方孝市 さん
全員、参考になっていた。自分の中でいいとこ取りをしようとは思わないけど、やっぱりその人に自分がいろんなことを教えられた全てが、それを選手に伝えよう、戦ううえでやっていこうという。全ての人のイメージは、もちろん(山本)浩二さんもそうだし、達川(光男)さんも監督をされていたし、マーティ・ブラウン監督もいたし、そういったいろんな監督のいちおう選手として感じ取っていた部分はあったし、そこで、これはいいんじゃないか、使えるんじゃないかっていう部分は自分の中で残していた。で、やっていこうという思いはありましたけどね。

横山雄二 アナ
おれが、バカ話ばっかりすると思ったら大間違い。

緒方孝市 さん
いや、本当、心の準備ができていなかった。申し訳ない。

桑原しおり アナウンサー
いろんな監督のいいところを吸収しながらっていうお話ですけど、特にここがよかったなとか…

緒方孝市 さん
やっぱり三村監督は、もう本当に自分の中では一番の恩師じゃないけど、お世話になったし。いろんな失礼なこともあったし。…あの人、本当に厳しかったよ。

横山雄二 アナ
そうなんですか。おれなんか、バラエティーで三村さんから千本ノックを受けるみたいなことをやらされて、三村さん、途中から「お前、本当に性根を入れ替えんにゃいけんけえ」って本気でやられて、おれ、泣きながら受けた(笑)

桑原しおり アナ
プロ野球選手じゃないのに…

緒方孝市 さん
何の性根を入れ替えるわけ?

横山雄二 アナ
「お前はちょっと根性がひねくれとるけえ、まっすぐにせんといけん」って。途中、番組に関係なく、本当にノックされて。終わった後に言われたのは、「あんまり若い子たちをバラエティーに引っ張ってくれるな」って。彼らは野球のコーチ・監督としての道があるから、あんまりちやほやしたところを引っ張ってくるなよみたいなことも意外と言われたりとか…

緒方孝市 さん
そうなんだ。

横山雄二 アナ
すごく愛がある方で。それこそ、飲み会とかで何でも話してくださったけど。温和だったけど、実は厳しかったよね。

緒方孝市 さん
厳しい。ものすごく厳しかった。でも、今の(話)は意味が違う厳しさだけど…

横山雄二 アナ
やっぱり三村さんがいらっしゃらなかったら、緒方孝市っていう選手はいなかったし…

緒方孝市 さん
ぼくだけじゃないけどね。それは金本(知憲)もそうだと思うし、たぶん、(野村)謙二郎さんもそうだと思うけど、だって、おれは本当に年上である野村さんとかにもよく怒られたし、逆鱗に触れていたし、正田(耕三)さんもそうだし、そういった大先輩が監督から直接、怒られたら、下の者ってやっぱり、またさらにピリッとするしね。

横山雄二 アナウンサー
でもさ、入ったとき、黄金期だったでしょ、広島カープって。

元広島カープ監督 緒方孝市 さん
黄金期からちょうど選手が変わる時期に接したと思う。だから野村さん然り、江藤(智)然り、前田(智徳)然り。高校を卒業して、野村さんは大学(卒)だけど、1年目・2年目から1軍でどんどん鍛えて育てるっていう、あれが始まった時期だったからね。

横山雄二 アナ
だって、入ったとき、ドラフト3位で学生服で記者会見。髪の毛が、なんか捕まった宇宙人みたいな…

緒方孝市 さん
RCCだけだからね、その映像をいまだに出すのは。高校生のときの…。あのときは、はやっていたの!

横山雄二 アナ
上に茶碗とかのせられるよね、髪がまっすぐ。

緒方孝市 さん
そのときは、『ビー・バップ・ハイスクール』の時代じゃん。

横山雄二 アナ
仲村トオル気取り。

緒方孝市 さん
それまで髪の毛なんか一切、伸ばしたことないわけ。中学に入ってからずっと丸刈りの生活じゃん。それがやっと高校卒業して、やっと髪を伸ばせるっていう唯一の時期だった。一番は卒業写真。あれにかっこよく写りたかった、アルバムに。

桑原しおり アナウンサー
かわいいじゃないですか。

緒方孝市 さん
あれって写真部がだいたい修学旅行の写真をメインに使うから、時期的には9月か10月ぐらいの写真だったので、そのころって、まだ8月の大会が終わって間もないころだから髪も伸びていない。だから自分だけ、11月ころぐらいの写真をわざわざ写真部に持っていって「これに変えて」って。唯一、野球部でおれだけ長髪(笑)

横山雄二 アナ
あの選手が…、なかなか思うようにいかなかったけど、ある監督との出会いでこうやって導かれて。足が速いことはもちろんわかっていた。けど、例えばゴールデングラブ賞を5年取っていたりとか、盗塁王を3年連続で取ったりとか、驚いたのはホームランを打てるようになったっていう。あれはなんで?

緒方孝市 さん
だから結局、三村さんとの出会いがもちろん一番大きいけど、その三村さんを支えているコーチングスタッフ、例えばヘッドコーチであれば 山本一義 さんであり、守備コーチであれば高代(延博)さんとか阿部(慶二)さんとか、やっぱり監督の考えを一本化した中で教えをちゃんと方向がずれずに選手たちを指導してくれたわけ。三村さんは、例えば「バッターとしてこういうふうに育てたい。でも守備と走る方はやっぱり一番の武器になるから、そこは絶対どんどん伸ばしていけ」っていうような感じで守備コーチとか打撃コーチとかいろんなコーチにきちんとそういうことを伝えて、選手を、自分だけじゃなくて金本(知憲)然り、町田(公二郎)然り、浅井(樹)然り、そういった選手1人ひとりに対しての指導法をきちんとやっていたね。みんなで見てくれていた。だから三村さんからちゃんと下に伝わって、やってもらっていた。

桑原しおり アナ
そういうのって、若いころって気づきにくい…

緒方孝市 さん
気づかない。後から全部聞かされることで。

横山雄二 アナ
だってさ、ある意味、金本選手もそうだったけど、高校生から来たりとか、大学生とか、金本さんは特にそうだったけど、本当にやせていた。

緒方孝市 さん
みんな、そう。

横山雄二 アナ
お尻もちっちゃいし、それがプロになって、ものすごくウエイト(トレーニング)とかもやったり、走り込んだりとかして体もできてきて、そこから…。だって、一時期、緒方孝市は36本打つのよ。ホームラン王を取るんじゃないかっていうときがあったのよ。

緒方孝市 さん
実はそれまでずっと打撃は、山本一義さんに教えてもらっていたんですけど、ついに「今のままじゃ打てん」といって三村監督自ら秋季キャンプの11月の練習の1か月間、ずっとマンツーマンで指導してもらって。ちょっと一義さんとは気まずくなったんだけど…

横山雄二 アナ
一義さんは、とにかく「軸をぶらすな」と…

緒方孝市 さん
いや、もっと違うことをちゃんと教えていただいたけど。いや、でも本当に三村さんが、そこで手取り足取り、「お前は今の打ち方ではダメだ。極端に構えから変えて、ための取り方から全て変えろ」って。思い切って打撃改造をさせられたわけ。それが結局、花開いて、36本ホームランを打ったし、翌年も30本ホームランを打ったし。うん。あれは本当に打撃改造で大きく自分の中で三村さんには感謝している。一義さんとはちょっと変な空気になってしまったけど…

横山雄二 アナ
やっぱり伸ばすかどうかっていうこと。コーチとか監督の難しさは、日本のトップの人と仕事しているのに、教えようとするじゃない。やっぱりわかんないときに聞きにいける人っていうのが、一番いいんだろうな。

緒方孝市 さん
基本はね。コーチの存在もものすごく必要なんやけど、やっぱり選手次第なんよ。選手がその気になって自分の中でやっていかないと変わらない、絶対。教えるだけじゃ、「はい、はい」と言っていただけじゃ変わらない、選手は。結局、一流になる選手ってのは、自分が勝手にうまくなっていっているの。だからコーチとか監督とかはその環境をしっかり整えてやればいい。

横山雄二 アナ
おれさ、本当になんか20代そこそこぐらいのときから遊んでいて、流川を(緒方さんが)ものすごい勢いで走っていた。「メグ! 何してんの?」って言ったら、「レンタルビデオを返しに」って、ものすごい俊足で。流川をレンタルビデオを持って盗塁王(笑)

緒方孝市 さん
それが言いたかったの? “夜の盗塁王” 。

横山雄二 アナ
結婚するときも、つきあい始めたよっていうときをちょろっと教えてくれたので。

緒方孝市 さん
そうだっけ。

横山雄二 アナ
「ちょっと全然、言えないんだけど、まあまあのすごい彼女ができた」って。「教えてよ」って言ったら、「いや、言ったら絶対漏れるから言わない」と。

緒方孝市 さん
そこは信用してなかったんだ。

横山雄二 アナウンサー
そこから今の奥さんと出会って、ええ!って。

元広島カープ監督 緒方孝市 さん
たぶん、おれ、誰にも言ってないと思う。

横山雄二 アナ
コソッと言われて、「ああ!」って思ったの。

緒方孝市 さん
そうだったっけ。

横山雄二 アナ
それとか、うちの娘が生まれたときにミッキーマウスの鳩時計を贈ってもらった。後ろにでっかく「寄贈 緒方孝市」って。こんなでっかい字で書く?ってくらい(笑)

桑原しおり アナウンサー
それが大事です。

緒方孝市 さん
確かにそうかもしれない。グラウンドを離れて、そういうプライベートな時間ってあんまり過ごした人っていなかったから。横山さんは唯一のそういう存在だったかもしれない。でも、おれだけじゃなかったからね。現在の高(信二)2軍監督さんも一緒に…

横山雄二 アナ
そうそう。河田さんとか…

緒方孝市 さん
そうそう、今はヤクルトのコーチの 河田雄祐 さん。

横山雄二 アナ
「ユースケ」というと、今は 野村祐輔 だけど、おれたちは河田雄祐なんだよ。

桑原しおり アナ
聞きたいことが。(緒方監督時代に)安仁屋(宗八)さんを臨時コーチに呼んだじゃないですか。この番組でぜひ、本当のところを聞きたい。

緒方孝市 さん
なんでみんな不思議がるのかなと思って。だって、あのとき、若い選手も多かったし、自分は監督になって、コーチのメンバーもそこそこの年齢で、いや、もっとベテランのコーチのアドバイスじゃないけど、選手といろんな話をしてくれる人がほしいなと思ったら一番に頭に浮かんだのが安仁屋さんだったんよ。

桑原しおり アナ
へえ―。

緒方孝市 さん
だって、それは現役時代をある意味、知っている人だし、コーチ歴にしても、2軍で監督もやられている人で、解説になられてからも毎試合、球場行かれるでしょう。選手とちゃんと話しているでしょう。「きのうの投球はどうだった?」と特にピッチャーに声かけたり。選手も安仁屋さんのほうに来てあいさつして、「どうでしたか?」とか、信頼関係じゃないけど、そういう話をできるのは、ああ、やっぱり安仁屋さんだなと思って、「臨時コーチをお願いします。ちょっと1か月ぐらいで申し訳ないですけど」って。「日南キャンプ、そして、その後の沖縄キャンプの1か月間、ぜひお願いします」って頼んだ1年目に即、優勝。

横山雄二 アナ
そうそう。本当、七福神だよね。

緒方孝市 さん
そりゃあ、もう断るわけにはいかないじゃん。安仁屋さんのおかげ、それは。本当に選手にいい話をしてくれたしね。

横山雄二 アナ
いわゆる、細かい技術的なことじゃなくって、なんとなく「プロっていうのはさあ」とか、「ピッチャーっていうのはさあ」とか、漠然とした何かを…

緒方孝市 さん
だからね、結局、選手はすごくまじめなんよ。カープの選手は特にまじめだから。安仁屋さんがみんなを集めて何を言うんかなと。「きょう、門限破れ! みんな」みたいなことを言うやろ。

横山雄二 アナと 桑原しおり アナ
(笑)確かに…

緒方孝市 さん
「きょうは休み前だから集合」とか、もう何を言ってんですかとか思うけど、でもね、笑っているけど、こういうのがコミュニケーションなの、若い選手との。年齢差でいえば親子以上だからね。はっきり言って、おじいちゃん。孫の年代とやっぱり接するには、こういう会話・コミュニケーションの仕方。

横山雄二 アナ
1991年に優勝したじゃない。メグ(緒方孝市さん)がライトにいたじゃない。球場でビールかけをやって…

緒方孝市 さん
グラウンドでね。

横山雄二 アナ
ものすごく夜も華やか、選手もとんでもなく暴れまくったんだけど。緒方さんが監督になられて3連覇したときに、阪神・甲子園球場で優勝して、神戸で祝勝会とかやって、夜、おれたちは行っていたから合流しようと思ったの。みんなが飲んでいるところに。実は飲んでいなかった、若い選手たちが。

緒方孝市 さん
試合があるから、次の日…

横山雄二 アナ
昔、試合があっても…

緒方孝市 さん
もう関係なかったんですよ。だから今ごろ、まじめなんよ。ものすごくまじめ。

桑原しおり アナ
優勝した日ぐらい、いいじゃんって思わない…

横山雄二 アナウンサー
最後のインタビューが菊池(涼介)さんだったの。「キクちゃん、おれ、合流するからさ」って、「いや、みんな、出てないよ」。うそ、優勝したじゃん、きょう。おれ、関係ないけど、おれも飲みたいのになんで! まじめだよね。

元広島カープ監督 緒方孝市 さん
みんな、次の日の試合をまた考えるわけ。もちろん菊池だったら、優勝が決まった後なんか、いちおう休養日になるわけやけど、やっぱり、そこはちゃんと。今ごろの選手たちはそうなんよ。特にカープの選手はまじめだから。どこか少し、こうやって緩めるじゃないけど、ちょっとそういう…

横山雄二 アナ
“安仁屋さん的な” …

緒方孝市 さん
安仁屋さん的な存在がやっぱり必要なんよ、ああいう。

桑原しおり アナウンサー
やるじゃん。

横山雄二 アナ
いやいや、よかった、安仁屋さん。聞いてる? 安仁屋さん

緒方孝市 さん
いやいや、亡くなっていないからね。頼むよ。

桑原しおり アナ
ちゃんと病室で今…。さすがでしたね。本当にうれしい、そういう話が聞けて。でも横山さん、気づいています? もう時間なんですよ。本当にまだまだ聞きたいのに…

横山雄二 アナ
全然だね。まだ入り口も入り口だね。

桑原しおり アナ
今度、安仁屋さんがこのスタジオに戻られてから、あらためてゲストに…

緒方孝市 さん
おれ、言っとくけどさ、ことしのカープの戦い、データをいちおう全部見てきて、今後の展望とかいろいろしゃべる準備はしっかりしてきたよ。一切、しゃべってないじゃん、きょう、おれ。

横山雄二 アナ
(笑)「せとだレモン祭」(3月)に出たの。

緒方孝市 さん
(トークイベントのため)レモン祭に行った。

横山雄二 アナ
映像を見たの。小学生くらいの男の子が、「ことし、注目の選手は誰ですか?」って。ことし3月の話。(緒方さんが)「3塁にいる外国人は誰だったっけ? 名前がわかんないんだけど…」って、すげえ雑なの(笑)

桑原しおり アナ
いや、まだ、そのときはデータが入っていない。

緒方孝市 さん
デビッドソンなんて入団したばかりじゃん、あのとき。

横山雄二 アナ
で、そのとき、「坂倉(将吾)」って言っていた。

緒方孝市 さん
うん、坂倉がポイント。

横山雄二 アナ
「坂倉だね」っていうのは変わらないですか?

緒方孝市 さん
変わらない。もっと守備が向上しないとダメ。打つほうは、あれぐらい打って当たり前だから。全然、当たり前。遅いぐらいだから。もっと守備力をつけないとダメ。

横山雄二 アナ
うーん、本当にまた来てもらいましょう。

桑原しおり アナ
そのとき、横山さん、ごめんなさい。スタジオに呼ばない。

横山雄二 アナ
おれもこういうのを全然、聞けなかった…

緒方孝市 さん
今度はぜひ安仁屋さんと野球談義をよろしくお願いします。

(RCCラジオ番組「平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま」 7月3日放送より)

© 株式会社中国放送