<社説>玉城知事訪中 交流継続し着実に成果を

 玉城デニー知事は3日から中国を訪問し、政府要人らと会談した。7日に帰沖した玉城知事は、観光、経済、文化などで「沖縄と中国の多面的な交流の活性化に向けて確かな手応えを感じた」と述べた。 玉城知事の訪中は2019年以来4年ぶりだが、今回は県が掲げる地域外交の一環としての側面が強い。背景には台湾有事などをにらむ南西諸島の軍事力強化に対する危機感がある。

 訪中で玉城知事は中国共産党序列2位の李強首相と会談し、沖縄と中国を結ぶ直行便の運行再開や、中国へ渡航する際のビザ取得手続きの簡素化を要請した。経済や文化など沖縄のソフトパワーを生かし、人的交流を築き上げることが平和につながる。ぜひ交流を継続、発展させ、着実に成果を上げてほしい。

 玉城知事は日本国際貿易促進協会(国貿促)の訪中団に参加した。沖縄県知事が参加するのは5回目だ。ただ今回の訪中にはこれまでとは異なり、「平和への願い」が強く込められている。台湾有事を巡る緊張が中国と日米の間で高まっているからだ。玉城知事は李首相との会談で「日本と中国の友好関係に貢献したい。安定的、建設的な対話によって地域の平和が保たれるようにしたい」と述べた。その言葉に「願い」が表れている。

 県は、アジア・太平洋地域の持続的安定に貢献するとして、4月に地域外交室を設置した。地域外交の手始めに照屋義実副知事が6月に韓国の済州島を訪れ、済州特別自治道が呼びかけている「グローバル平和都市連帯」へ県として参加することで合意し、成果を得ている。

 訪中はこれに続く地域外交である。玉城知事は、日本の経済産業相に当たる王文濤中国商務部長や、福建省トップの周祖翼省党委員会書記とも会談し、交流の継続・促進を約束している。

 一方の中国側は玉城知事を歓迎した。李首相は、事前に知らされていた知事の要請に対し「関係部門に指示を出し、検討したい」と前向きな姿勢を示した。これに先立ち、習近平国家主席は「(福建省)福州市で働いた際、琉球との交流の根源が深いと知った」と発言、6月4日付の共産党機関紙・人民日報が1面で報じた。訪中への中国側の強い関心がうかがえる。

 一部の専門家に、知事の訪中が中国に利用される危険性を指摘する声がある。だが、いざ有事が起きた際、真っ先に戦場になる危険性が高い沖縄だからこそ、地域外交に積極的に取り組む資格がある。

 玉城知事は今後、台湾も訪問する予定だ。沖縄の立場をしっかり説明し、対立や緊張に際しては対話による解決を促す役割を引き続き果たしてほしい。玉城知事が先月23日の慰霊の日の平和宣言で述べた「二度と沖縄を戦場にしてはならない」という決意を基に今後も地域外交に取り組むことを望む。

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