36歳共働きの公務員男性「子ども2人の大学卒後業後、55歳でサイドFIREしたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳公務員の男性。妻は同い年で正社員共働き。9歳と12歳の子どもがいる中、55歳でサイドFIREをしたいそうですが、実現可能でしょうか。FPの伊藤亮太氏がお答えします。


55歳でサイドFIREは実現可能でしょうか。

下の子が50歳頃に大学を卒業する予定ですので、それ以降にサイドFIREしたいと考えております。退職後に地元へ帰ろうと思っていますが、その際に夫婦二人で住むための住宅(2,000万円程度を想定)を購入するか、親が数年前に建てた家を継いで住むことを検討しています。

子どもは2人とも私立大学(文系)へ進学を想定。退職金はあります。現在はつみたてNISAに夫婦満額、iDeCoは私のみ月1.2万円(今後妻が月1万円で開始予定)です。学資保険は高校卒業時に240万円の予定です。次年度の新NISAからは、毎月の貯蓄金とボーナスを充てることで、つみたて投資枠に年120万円、成長投資枠に年120万円を行いたいと考えております。

※編集部注 サイドFIREとは、資産運用による収益と、副業の収入によって生計を立てるFIREの一つのスタイルのこと。

【相談者プロフィール】

・男性、36歳、公務員

・妻、36歳、会社員(正社員、月収21万円、手取り17万円)

・子ども:2人(9歳、12歳)

・お住まい:東海地方(宿舎)

・毎月の世帯の手取り金額:46万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:200万円

・給与・事業収入以外の収入:児童手当月額2万円

【毎月の支出の内訳】

・毎月の世帯の支出の目安:42万円

・住居費:0(給料天引きのため0と記載)

・食費:6万7,000円

・水道光熱費:3万3,000円

・教育費:7万5,000円

・保険料:2万7,000円(うち2万円は学資保険)

・通信費:1万円

・車両費:3万5,000円

・お小遣い:4万円

・その他:13万3,000円(衣服・美容、日用品、趣味、交際費、医療費、税金等)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯蓄総額:680万円

・毎月の投資額:7万8,000円(つみたてNISA、iDeCo)

・現在の投資総額:280万円

・現在の負債総額:0

伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太と申します。回答させていただきます。

まず、相談者様は公務員ですので、給料は上がっていくものと想定されます。とはいえ、教育費などがかかることも想定すると、給料の上がった分で教育費をまかなっていくと考えておいてもよいかもしれません。

そのため、現状の貯蓄が続いたとしてまずは検討していきます。

保守的に見積もった場合、持ち家があれば不可能ではない

現状の貯蓄のままだとすると、年間で148万円の貯蓄ができることになります。これとは別に投資部分が妻のiDeCo1万円の追加分も考慮すると、105.6万円となります。簡易的な計算ですが、14年間で貯蓄は148万円×14年=2,072万円、投資は105.6万円×14年=1,478.4万円となります。

かなり保守的に見積もった場合をまずは検討します。貯蓄も投資も特に増えず、単純な貯蓄同様となった場合には、14年後の合計金額は、今ある貯蓄&投資額も含めて960万円+2,072万円+1,478.4万円=4,510.4万円となります。

これ以外の給与上昇分や学資保険などで教育費等はまかなうと考えた場合、50歳前後でのサイドFIREの資金が4,500万円ほどとなります。仮に年4%ほどで運用できれば年間で180万円ほどの利益が見込めます。この場合、親御さんの建てた家を継ぐことができるのであれば、サイドFIREは可能だと思われます。

運用の結果次第では余裕が増す。ただし配分に注意

もちろん、投資部分が増えた場合には、さらに余裕は増すでしょう。仮に年4%で継続して運用が可能であった場合、14年後には年金終価係数(※1)を利用して計算すると、105.6万円×18.292=1,931.63万円ほどになります。現状の投資金額も年4%で継続運用できたとすると、終価係数(※2)を利用して、280万円×1.732=484.96万円となります。

貯蓄は増えないと仮定すると、合計で680万円+2,072万円+1,931.63万円+484.96万円=5,168.59万円となります。この資金を年4%で運用できるとすると、年間で206.74万円ほどの利益が見込めます。今後もNISAやiDeCoでの運用を行うとすると、非課税の恩恵を十分受けられることでしょう。

なお、iDeCoは基本的には老後資金向けとなりますので、50歳の段階で取り崩せるわけではない点には注意しなければなりません。そのため、上記の金額にはiDeCoの分も含まれているため、NISAの配分を多くして取り崩しができるように(または配当などで得られるように)すべきです。

※1 定期的に定額を積み立てた場合、一定期間後に受け取れる金額を計算するための係数
※2 一定期間の複利運用の結果、元利合計がいくらになるかを計算するための係数

簡易資産では週2〜3日程度の仕事で生活することは可能

以上の簡易的な計算からいえることは、年4%というFIREでよく利用される数字を使った場合、家賃がかからなければ、週に2~3日程度の仕事をしながら日々の生活を楽しむことは可能だと思われます。

ただし、前提条件として、給与が上がった分などでお子様2人分の大学までの学費をまかなえるという点があります。実際の給与上昇幅がいただいたデータ等からはわかりませんので、そこが可能かどうかは別途試算が必要です。

生活費を抑えることができれば住宅購入も不可能ではない

もし住宅を購入するとなると、実際に運用できる資金は上記のケースで2,500~3,168万円程度となります。この資金を年4%で運用できたとすると、年100~126万円ほどの利益となります。この金額に、週2~3日の収入で生活できそうとお考えであれば、サイドFIREは自宅購入の場合でも可能となります。

最終的には、ご自身の生活スタイルをどうするかによって可能かどうかは変わってきます。例えば夫婦それぞれ週に3日働き、月12日間働くとします。1日1万円の給与とすると月24万円。年間で288万円です。これに運用利益年100~126万円を考慮すると、ぜいたくな暮らしを考えなければ生活はできると思います。

仮に60歳までこのような暮らし方ができれば、運用していた資金が住宅購入のない場合で4,500~5,168万円、住宅購入がある場合で2,500~3,168万円の資金が60歳時点であることになります。公務員時の退職金なども考慮すると、老後資金2,000万円問題はクリアできるといえるのではないでしょうか。

なお、繰り返しますが、年4%で運用できることを前提としております。そのための、運用方法もしっかり検討される必要があります。前向きに、是非しっかり計画を立てて確実に夢を実現できるように頑張ってくださいね。

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