「野球が好き、そこが原点」検見川高校 女子部員の夏/夏の高校野球千葉大会

「野球が好き、そこが原点」検見川高校 女子部員の夏/高校野球千葉県大会

 7月9日、チバテレ+プラス編集部が訪れた、千葉県総合SC野球場。土気-検見川の第1試合が始まる前のシートノックで補助員としてグラウンドに立っていた、とある選手に注目した。

 それは、検見川高校 3年生の山本美咲選手。
「公式戦は出場することができない」中で、覚悟を決めて入部した彼女は3年間、いっさい手を抜くことなく男子部員と同じ練習メニューをこなしてきた。

山本選手はー

「最初は本当についていくのがやっと。辞めたいと思ったこともある。それでもやっぱり、野球が好き。結局そこが原点なんです」

9日の試合では、ユニフォームを着て記録員としてベンチ入り。山本選手はマネージャー業も兼務しながら同じ気持ちで戦い、土気相手に7対4で初戦を突破した。

「野球をやっている以上、本当はプレーで貢献したいという気持ちはかなりあるが、残念ながらそれは出来ない。チームのみんなには “私の分まで頑張ってほしい”と伝えてあります。私は声を出す事しかできないですが、最後まで全員野球で戦い抜きたいです」

 6人きょうだいの1番上の山本選手は、弟との影響で小学3年生から野球を始めた。 両親共に野球をやっていたわけではないというが、熱意溢れるお姉ちゃん(山本選手)の姿を見て、今ではきょうだいみんな、野球をやっているという。

 応援席にいたお母さんに話を聞くと、言葉を詰まらせ涙を流しながらも思いを伝えてくれた。

山本選手をそばで見守るお母さんはー

「公式戦に出られなくて、8日の開会式でも一緒に入場行進できなくて正直悔しい気持ちはあります。みんなが部活休みの時でも、練習試合に出た時に迷惑をかけないように、良いプレーが出来るようにと勉強よりも練習を優先。見えないところで努力をしてきたところをみていたから、親としては試合に出させてあげたかったが、仕方がない。誰のせいでもないので…」

「でも、練習も男子に混じってウエイトや走り込みを負けずにやってこられたこの3年間は無駄ではない。本人が1番分かっていると思いますが、あの子の力になっていると思います」

 大会前には、選手や監督らのお守り約40個を2か月かけて制作。 ひとりひとりの名前を刺繍し、個人の写真をいれた想い溢れるお守りだ。さらに、1分程度のモチベーションビデオも作成。SNSに掲載して仲間にも届けたという。

「練習やマネージャー業務の合間で時間を見繕って、少しずつお守りを作りました。動画も自信作です!とくに最後の『みんながんばれ!“全員野球”で戦い抜こう!応援しています、最高の夏にしよう』というのは私からのメッセージなので、受け取って頑張ってもらいたいです」

チームメイトからは、「(お守りや動画)嬉しかったです。選手としてもマネージャーとしても人の倍動いているので、本当尊敬しています」「練習にひたむきな姿がかっこいい。野球が好きなのが伝わります」「頼れる存在」「周りがみられて気配りができる人」などの声が。山本選手の熱い想いは、きちんと仲間にも届いているようだ。

酒井陽平監督はー

「試合に出してあげたいという気持ちは強いですがどうしても叶わないので、記録員という形ですけどユニフォーム着て、記録員というよりはチームの一員としてベンチで業務をやってもらっています。同じ気持ちで戦ってもらえたらと思います」

「監督としてはこれまで、女子選手だからといって、特別扱いはしてきませんでした。どうしても力で劣ったりすることはありますが、山本選手は負けん気が強いのでそれも自分の力に変えて、努力しています。表舞台に立てない3年間本当によくがんばったと思いますね」

「男子の中のパワーとスピードでやっているから、それが次のステージに繋がってくれればなと思います」

 今後も野球を続けていきたいと話す山本選手。

 まだ検見川の夏は終わらない!

 次の試合は11日、“全員野球”で2季連続県大会を制し、センバツでベスト8のAシード・専修大松戸と対戦します。

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