脱!隠れ育休の時代へ~男性育休の取得率は大きく増加~

2023年3月31日、政府は「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」を公表しました。

本発表においては、男性の育休取得率(1週間以上)の目標として、2025年までに公務員85%(1週間以上の取得率)、⺠間50%がうたわれています。そこで今回は、現時点での男性の育休取得率について、2つの資料をもとに解説します。

経団連の調査結果~男性育休取得は2022年に大幅増加~

最初にご紹介するのは、一般社団法人日本経済団体連合会が2023年6月5日に公表した「「男性の家事・育児」に関するアンケート調査結果」です。
本調査は、経団連企業会員を対象に実施したもので、これによると男性の育休取得率は2021年の29.3%から2022年47.5%にまで大きく増加しています。

<各年の男性育休取得率>
2018年:14.0%
2019年:18.8%
2020年:23.7%
2021年:29.3%
2022年:47.5%

このように取得率が増加した背景には、2022年4月施行の改正育児・介護休業法により、育休を取得しやすい雇用環境の整備や、個別の周知・意向確認が義務づけられたことがあると考えられます。

<2022年4月施行の改正育児・休業法で義務化されたこと>
・育休などについての研修実施、相談体制整備、事例収集・提供、方針の周知(少なくともどれか一つ)
・(本人または配偶者の)妊娠・出身を申し出た労働者に対して以下の周知、意向の確認(すべて)
制度
育休などの申出先
育児休業給付
育休などの期間に負担すべき社会保険料の取り扱い

また、2022年に育児休業を取得した男性の平均取得期間は43.7日で、1ヶ月以上取得している企業は59.9%に上りました。
なお、取得期間については企業規模が大きいほど日数も増える傾向がみられます。
従業員数5,001人以上の企業では1ヶ月以上取得が最も多く、75.0%を占めていたのに対して、従業員数300人以下の企業では、5日以下が最も多く、46.2%を占めていました。

NPO法人ファザーリング・ジャパンの調査結果~隠れ育休取得が減少~

続いてご紹介するのはNPO法人ファザーリング・ジャパンが、2023年5月22日に公表した「隠れ育休調査2023」の結果です。

本調査は、単に制度としての「育児休業」だけではなく、「妻の産後サポートや育児のために取得した有給休暇」(いわゆる「隠れ育休」)についても調べている点が特徴です。
なお、経団連の調査が、経団連会員企業を対象としているのに対して、本調査はインターネットリサーチの結果をまとめています。
そのため、調査間には数値的なかい離が見られます。

「隠れ育休調査2023」によると、なんらかの形で育休を取得したことがある人は、全体の64.0%に上ります。
2019年調査では52.6%、2015年調査では49.6%であったことを踏まえると大きく増加していることがわかります。

さらに、興味深いのは取得の内訳で、「隠れ育休」の利用が圧倒的に減少していることがわかります。

<男性の育休、および隠れ育休取得率の推移>
2015年:育休4.0%、隠れ育休45.6%
2019年:育休18.3%、隠れ育休34.3%
2023年:育休42.4%、隠れ育休21.6%

有給休暇ではなく、制度としての育児休業を取得している人が大きく増加していることの背景には、改正育児・介護休業法の後押しだけではなく、男性が育休取得することへの社内外の意識変化も大きく影響していると考えられます。

さいごに

今回は、2つの調査結果を基にして現時点での男性の育休取得率を解説しました。
2023年6月13日に政府が公表した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」(いわゆる「女性版骨太の方針2023」)においては、男性の育児休業取得が当たり前になる社会の実現に向けて、「制度面と給付面の両面からの対応を抜本的に強化」がうたわれています。
そのため今後も男性の育児休業取得率、および取得期間は上昇するものと考えられます。
また、企業側においても、男性にとって女性にとってではなく、性別にとらわれることなく誰にとってもライフイベントとキャリア形成が両立できるようサポートをしていく必要があるのではないでしょうか。

<参考>
・一般社団法人日本経済団体連合会「男性の家事・育児に関するアンケート調査結果」
・NPO法人ファザーリング・ジャパン「隠れ育休調査2023」
・首相官邸「こども・子育て政策の目指す社会像と基本理念とは~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」
・厚生労働省「育児・介護休業法について」
・男女共同参画局「女性版骨太の方針(女性活躍・男女共同参画の重点方針)」

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