プジョー9X8、デビュー1周年のモンツァで歓喜の初表彰台「我々はひとつ、ミスをしてしまった」

 プジョーのWEC世界耐久選手権テクニカル・ディレクターは、ハイパーカーで初の表彰台を獲得したことはチームにとって「大きなこと」だとしながらも、さらなる進歩のためにはもっとペースを上げなければならないことを認めた。

 7月8日、イタリアのモンツァで行われた2023年第5戦で、93号車プジョー9X8をドライブするジャン・エリック・ベルニュ/ミケル・イェンセン/ポール・ディ・レスタは、プジョー9X8にとってこれまでで最高の結果を残した。同じル・マン・ハイパーカー規定のフェラーリ、トヨタに次ぐ3位に入ったのだ。

 2022年シーズン、プジョー9X8がモンツァでハイパーカー・デビューを飾ってから、ちょうど12カ月での初表彰台となった。

■「プログラム開始当初は失望することも多かった」

 技術チーフのオリビエ・ジャンソニーは、信頼性の問題がWEC序盤の成績に影響を及ぼしていたチームにとって、この結果は追い風になると記者団に語った。

「我々にとっては大きなことだ」とジャンソニー。

「レースを始めて1年になるが、プログラム開始当初は失望することも多かった。ここで3位表彰台を達成することを……何日か前に(取材に対して)話したとき、表彰台は可能だと言ったんだ。それが現実のものとなった。これは間違いなく、チームにとって大きなことなんだ」

「今日はいい一日だったと思う。スタート時のペースはフリー走行から期待していた通りのものだった。理にかなったものだし、当然の結果だと思う」

「93号車にとってはとてもいいレースだったが、94号車にとっては残念だった。信頼性がカギであり、それに取り組む必要があることを示してくれた」

3位表彰台獲得に沸くプジョー・トタルエナジーズのピット

 93号車のプジョーは、路面温度が低かったレース序盤の方が競争力があったとジャンソニーは感じており、その後はトヨタGR010ハイブリッドやフェラーリ499Pと比べると「競争力が劣っていた」と述べている。

「トップ集団にいないとき、自分たちのペースを分析することは難しい」とジャンソニー。

「レースのスタート時点では、ペースはあった。しかし、レース終盤にはライバルたちがまだもう少しペースを持っていることが分かったのだ」

「この週末が始まってから、これまでのレースよりもずっとペースが良くなっていた」

「フリープラクティスから、レースでのスティントがかなりいいものになることは分かっていたのだ。タイヤの面で生き残ることが、レースのカギとなることは分かっていた」

「各マニュファクチャラー、そして各車で、異なる戦略があった。それは悪くなかったし、少なくとも我々のクルマには合っていた。スタートではいくつかの異なる選択があったが、それらはかなり接近したものだったと思う」

2023年WEC第5戦モンツァで3位表彰台を獲得した93号車プジョー9X8のミケル・イェンセン、ポール・ディ・レスタ、ジャン・エリック・ベルニュ

■「まだ足りない」ペースと、悔やまれるピットミス

 今シーズンのプジョーは、残る富士6時間やバーレーン8時間での勝利が可能だと感じているかと尋ねると、ジャンソニーは「まだ少しペースが足りない」と答えている。

「みんなプッシュしていたと思うし、我々もプッシュしていた。だが、そこで我々はライバルたちと同じくらい速いわけではなかった。それが我々に足りないところだ」

「まだマシンのスピード改善に取り組まなければならない」

2023年WEC第5戦モンツァで3位表彰台を獲得した93号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)

 93号車プジョー9X8は、レースの1時間目に、イェンセンがミゲル・モリーナの50号車フェラーリとマイク・コンウェイの7号車トヨタをパスしてトップに立った。

 だが、1回目のピットストップが遅かったため、イェンセンはポジションを失った。ライバルのマシンに比べてピット作業で20秒ほど時間をロスしてしまったのだ。

 ジャンソニーは、このピットストップの遅れがチームにさらなる改善点を思い出させたと指摘する。

「何が起こったのかを正確に分析する必要がある」

「同時に(隣り合うピットの)LMP2マシンがピットに入ってきた。そのため、我々は完全に準備できておらず、作業のためのポジションも取れていなかった。クルマを正しい位置に止められず、プッシュバックする(マシンをメカニックの手により押し戻すこと)しかなかったのだ」

「これがリザルトにも影響した。トップ集団から離されることになってしまったからだ」

「コンスタントにこのようなポジション(表彰台圏内)でゴールしたいのなら、レースでは絶対にミスをしないことが必要だということを教えてくれた。あそこで、我々はひとつミスをしてしまった」

「我々が改善していることは明らかだが、まだ課題は残っている」

 なお、グスタボ・メネゼス/ロイック・デュバル/ニコ・ミューラーがドライブする94号車のガレージでの作業が長引いたのは、マシンのギヤシフトアクチュエーターシステムのトラブルが原因だった。

 プジョーはアクチュエーターを交換し、マシンは優勝したトヨタ7号車から9周遅れの総合19位でチェッカーを受けた。

 プジョーは今季第2戦ポルティマオから油圧式ギヤシフトを導入している。それまでは電子式アクチュエーターを使用していたが、信頼性に問題があったため変更されていた。

94号車プジョー9X8 2023年WEC第5戦モンツァ

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