東海第2差し止め控訴審 一審判決の妥当性焦点 11日、第1回口頭弁論

東海第2原発(中央奥)、右奥は東海原発=2022年3月撮影

日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県東海村白方)の安全性に問題があるとして、住民らが原電に運転差し止めを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が11日、東京高裁(相沢哲裁判長)で開かれる。避難計画が整備されていないことを理由に、原電側に運転差し止めを命じた一審判決の妥当性が焦点となる。

2021年3月の水戸地裁判決は、原電側に運転差し止めを命じて住民側が勝訴。自治体が策定する原発30キロ圏の広域避難計画に不備があるとして「防災体制は極めて不十分」と指摘し、「人格権侵害の具体的危険がある」と判断した。一方、耐震性や津波対策など原発の安全対策の有効性は認め、30キロ圏外の住民については請求を棄却した。住民、原電側双方が控訴していた。

控訴審で住民側は、原発事故被害の甚大さや事故発生時における避難の困難性を引き続き訴える構え。原電側は控訴理由書で「(一審判決で)重大な事故が現実に発生する蓋然性を認めずに、避難計画の不備を認めるのは矛盾している」と主張している。

原発立地地域で30キロ圏内に14市町村あるのは全国最多。20年の国勢調査によると、91万6510人が居住。計画策定済みの自治体は笠間、常陸太田、常陸大宮、鉾田、大子の5市町にとどまっている。

政府は原発回帰を進めており、同原発の安全対策工事は24年9月に終了予定。住民側は控訴審判決の前に再稼働の動きがあれば、運転差し止めを求める仮処分を同高裁に申し立てる方針だ。

東北電力に女川原発(宮城)2号機の再稼働差し止めを求めた住民訴訟では、仙台地裁が今年5月、住民側の請求を棄却。同原発の再稼働差し止め請求訴訟は、避難計画に焦点を絞った訴訟となっていることから、東海第2訴訟への影響が注目される。

控訴審第1回口頭弁論は1月末に予定されていたが、当初の裁判長が過去の原発関連訴訟で国側の主張に関わった経歴があった。住民側が辞退を申し入れた結果、裁判官の構成が変わり期日が変更された。

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