開始まであと半年の【新NISA】 20代の理想的な活用方法は?

2023年も後半に入り、期待の新NISAのスタートも半年後に迫りました。日本に住む全ての18歳以上の方が利用できる税制優遇制度ですから、ぜひ良いスタートを切りたいものです。

今回はファイナンシャルプランナーが考える、20代の方の理想の新NISA活用法を解説します。


月に1万円の自己投資

資本とは事業を行うための元手、原資のことを言います。元手がなければ、事業を始めることもできませんし、利益を上げることもできません。更なる成長のためには、今ある資本を効率的に投資し、利益を得ることがとても重要です。

通常、資本とはお金を指します。金融資本とも言います。事業に資金を投資することで利益を得て、さらにその利益を再投資し、どんどん事業を成長させ成功していきます。

残念ながら若いうちは、この金融資本が潤沢にないのが普通です。社会人としてのキャリアもまだまだ短いですから、これは当たり前のことです。

一方、資本には金融資本の他に、人的資本という意味もあります。これは人間として成長する力、ポテンシャルのことを指します。こちらはむしろ、若い人の方が持ち合わせていると言えるでしょう。従って、若いうちはこの人的資本を活用することがとても重要です。

例えば、豊かな人間関係は人としての成長につながりますし、時にビジネスチャンスにもつながりますので、人と会うための交際費は、むしろ投資と言えるかも知れません。ジムで身体を鍛えたり、スポーツを楽しんだり、身体に良い食べ物を食べたりすることも、健康を維持しより高いパフォーマンスのために重要な投資です。

もちろん、学びも大切です。読書にお金をかける、芸術鑑賞にお金をかける、旅に出る、スキルアップをはかる、資格をとるといったことも全てが投資です。20代で自分自身に対しこのような投資をするかしないかは、その後の成長のカギとなります。

そして、もうひとつの大切な投資が「経済への投資」です。経済の学びを実践化するために、市場にお金を投じて実体験を積むことです。やはり20代のうちに、投資によって経済を学んだのかどうかで、その後の資本力に大きな差がつきます。

具体的には、NISAで月1万円を投資に回します。そしてボーナス月は5万円を投資します。年間22万円で、世界中の株式に投資をする投資信託を積立購入していきます。

例えば、つみたてNISA対象の投資信託の中には、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)」という指数に連動するインデックスファンドがありあす。MSCI ACWIは、文字通り世界の経済の指標と言えるもので、先進国23カ国、新興国23カ国に一度に投資ができる投資信託です。

先進国は、米国、カナダ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イスラエル、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、オーストラリア、香港、日本、ニュージーランド、シンガポールの23カ国。

そして新興国は、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、チェコ、エジプト、ハンガリー、ポーランド、南アフリカ、トルコ、ギリシャ、カタール、UAE、中国、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、パキスタンの23カ国です。

なお、ロシアは新興国の中に含まれていましたが、ウクライナ侵攻に対する経済制裁の一環として、2023年春にこの指標から除外されました。

思い切ってパッと使う

誰にも将来のことは分かりませんが、世界の経済は上がったり、下がったりを繰り返し成長し続けていく物ですから、恐らく元本以上の資産を手に入れている公算が大きいと考えます。年間22万円の投資を5年継続すれば、おそらく利回りを含めると120~130万円くらいにはなるでしょう。

5年という月日は投資においては短いのですが、一旦積み上げてきた資産を、思い切ってパッと使うというのをここで経験します。

仮に運用がとてもうまく行っていて、利益がたくさん出ていたら、どんな気持ちになるでしょうか? うれしいな、でももっと儲かるかも知れないから、いま売却するのはもったいないな……という気持ちになるかも知れません。

反対に運用がうまくいかず損をしていたら、「あー、こんなに減っちゃった。何が良くなかったのかな?」「これならあのときに売っていた方がよかったんだろうか、もう少し待った方がいいのだろうか?」という気持ちになるかも知れません。

恐らくどちらのケースになっても、さまざまな想いが浮かんでくるでしょう。そして、そのひとつひとつが学びです。実際に投資信託は購入する時より、売却する時の方が勇気がいるものです。そういう体験を積むのが非常に重要です。

いざ5年間の積立の成果を解約して使うとなったら、またここで色々考えるでしょう。投資がうまくいっても、それほどうまく行かなかったとしても100万円前後にはなっているでしょう。これだけの大金です、無駄遣いせずに、なにか有意義に使いたいと考えるでしょう。

何に使うか、どう使うか、誰のために使うかは、とても大きなテーマです。

100万円を全額1つのことに使ってもいいでし、30万円はAに、70万円はBにというように分けてもいいでしょう。自分のために使ってもいいし、家族のためや、友達との思い出のために使ってもよいでしょう。

結果、100万円以上の価値を生む使い方ができれば、それがまた投資となります。5年間、積立を継続するのは、そう簡単なことではありません。毎月1万円、ボーナスからも5万円を使わずに投資に回したのですから、いろいろ我慢もしてきたでしょう。それらの想いも含め、満足度の高い使い方をすることで、お金の意味を理解することができるようになります。

投資でお金を増やす目的は、より満足度の高いお金の使い方をするためです。お金はパワーですから、この5年間でぜひパワーを蓄える方法と、パワーを爆発させることを体感すると良いでしょう。

次のステップを自分で考える

20代はいろいろ経験値を積みたい時期です。決して楽ではない積立を継続する経験は、お金を貯めるには忍耐が必要である事を学べるでしょう。せっかく貯めたお金を解約し、より価値を産むものに転化させる経験は、自分にとってお金とはどういう意味を持つ物なのかを考えるきっかけになるでしょう。

では、いよいよ次のステージです。自分の目的のために自分をコントロールできるようにしましょう。

30代、40代、50代、60代、70代の自分を想像し、どうありたいか考えていきます。仕事は? 家族は? ライフスタイルは? そして、そこに経済的な観点を結びつけ、資産形成のプランニングをしていきます。いつからいつまで、月々いくらの積立を行うのか? それを遂行するためには、支出はどうあるべきか? 収入はどうあればよいか?

この5年間で、月々1万円を世界の経済に投資をする経験することで、経済は上がったり下がったりしながらも成長しているということを実感したはずです。今度の投資先は、かならずしも地球に丸ごと投資をするというスタイルだけではなく、これまでの道のりの中で気になったエリア、気になった産業などへのピンポイント投資も追加してもいいでしょう。

ぜひ20代でしか味わうことができない、資産形成の醍醐味を経験していただきたいと思います。

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