中国が食料安保法草案 生産重視へ種子確保や耕地保護

中国の内閣府に当たる国務院が、立法権を持つ全国人民代表大会(全人代)常務委員会に「糧食安全保障法(食料安保法)」草案の審議を提案した。備蓄より農業生産を重視する方向を示し、種子の確保や耕地の保護、食料不足時の訓練などを盛り込んだ。家族農業や農協への支援も明記している。

中国は国際情勢が不安定化する中で、食料の自給を強化する方針を掲げる。特に農地や種苗を含む技術を重視する。政府として食料安全保障に特化した法律を新設し、食料確保の責任を明確にする狙いがあるとみられる。

草案は、11章69条で構成。総則では、穀物の基本的に自給するとし、特に米や小麦の主食では完全自給を掲げた。

「食料生産」の章では、種子の確保を重視。国が種苗産業を振興することや、種子の遺伝資源庫の建設などを盛り込んだ。日本の県に当たる省級以上では、種子備蓄制度を設け、災害発生時の需要に対応する。家族農業や専門農協などを支援・育成する方針も盛り込んだ。

耕地の保護のため、国による助成措置を明記。家族農業や専門農協などによる自主的な備蓄を奨励する。市町村に当たる県以上の行政では、定期的に食料不足時の訓練や研修を行うとした。

生産、買い入れ、備蓄、運輸、加工、販売などの確保へ誰が責任を持つのか役割分担も示した。責任を果たさない場合の罰則も明記。農家では、特定の地域では奨励されている穀物以外を栽培し、改善指導に従わない場合などが該当する。

草案公表を受け、中国国内の専門家からは、法律において備蓄重視から生産重視にシフトしたことを高く評価する声がある一方、農家に対する規制が厳しく「食料生産が減るのではないか」との声も出ている。

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