岡山離島プロジェクト(令和5年5月20日開催)〜 瀬戸内海の島でゴミ拾い。自然由来の化粧品メーカーL’OCCITANEが手がける自然保護活動

穏やかな波の上に無数の島が浮かぶ瀬戸内海の景観は多島美と評されており、世界的にも美しいと認められています。

しかし、過疎化の影響を受けて、岡山県にある19の有人島からは景観や風習が失われつつあります

岡山離島プロジェクトは、瀬戸内海の島の魅力と課題を、岡山県に住む人たちにも知ってほしいという想いを形にした企画。

街のお掃除ボランティア特定非営利活動法人green bird(グリーンバード)と、フランス発祥の化粧品メーカーL’OCCITANE(ロクシタン)が一緒に立ち上げました。

岡山離島プロジェクト第1回の企画を、2023年5月20日に開催。

倉敷市児島を拠点にアートイベントを主催する一般社団法人クリエイターズラウンジの案内のもと、児島半島の沖合にある六口島(むくちしま)と松島(まつしま)を訪れました。

六口島ではビーチクリーン、松島では廃校を活用して作られた美術館の見学をおこないました。

街のお掃除ボランティアと化粧品メーカーが手がける環境保護活動について紹介します。

岡山離島プロジェクトとは?

普段の活動では、多くの人で賑わう市街地を中心にゴミ拾いをおこなっているgreen bird。

協賛企業のL’OCCITANEとともに、倉敷市にある島を巡る岡山離島プロジェクトを開催しました。

岡山離島プロジェクトでは、街を飛び出して、瀬戸内海に浮かぶ島で海洋ゴミを回収してきます。

岡山離島プロジェクトの概要

岡山離島プロジェクトは、岡山県内に住む人たちに瀬戸内海の島へ足を運んでもらい、体験を通じて瀬戸内海の島の風土を感じてもらうとともに、島の課題に気付いてもらうための企画。

フランス発祥の化粧品メーカーL’OCCITANEの協賛により、特定非営利活動法人green birdが企画しました。

2023年5月20日に、岡山離島プロジェクト第1回として、倉敷市児島の沖合にある六口島松島の2つの島を訪れました。

六口島では、島の海岸に流れ着いた海洋ゴミを回収するビーチクリーン

松島では、2000年に廃校になった旧下津井西小・下津井中学松島分校を活用した松島分校美術館を見学してきました。

2つの島をめぐりながら、瀬戸内海の島の実態について学びます。

化粧品メーカーL’OCCITANEと自然保護活動

L’OCCITANEは、南フランスの南東部に位置するプロヴァンス地方を発祥とする化粧品メーカー。

自然の由来の化粧品を通じて、プロヴァンス地方のライフスタイルを世界中に届けています。

日本でも全国に店舗を展開しており、岡山県内にも2店舗が出店しています。

自然の恵みを享受(きょうじゅ)したビジネスを展開するL’OCCITANEにとって、商品のもととなる植物や土壌は大切な存在

自然を大切にしたい想いから、海洋ゴミを回収するイベントをgreen birdとともに企画しました。

一般社団法人クリエイターズラウンジ

一般社団法人クリエイターズラウンジは、児島を中心にアートイベントを企画しているアーティスト集団です。

活動の目的は、芸術活動を通じて、人々がコミュニケーションする場所を創造すること

これまで、江戸時代に北前船の寄港地として繁栄していた下津井港を拠点として、作品展やワークショップ、音楽イベントなどを開催しています。

岡山離島プロジェクトでは、ビーチクリーンの活動場所として松島を案内してくれました。

また、参加者たちが交流する場所として、クリエイターズラウンジが手掛けた松島分校美術館も提供してくれました。

一般社団法人クリエイターズラウンは、2023年5月10日に名称が変更となりました。現在は、一般社団法人 松島分校美術館として活動しています。

街のお掃除ボランティア 特定非営利活動法人green bird

特定非営利活動法人green birdは、2002年に発足した東京表参道を発祥とする街のお掃除ボランティアです。

日本全国62チーム、世界10チームの仲間とともに、誰でも気軽に参加できるゴミ拾い活動を続けています。

特別な参加資格はなく、集合場所に、集合時間に、手ぶらで足を運べば誰でも参加できる活動です。

岡山離島プロジェクトを取りまとめたのは、green bird岡山チーム。

2013年に発足したgreen bird岡山チームは、これまで岡山駅前、倉敷駅周辺と美観地区、宇野港で約500回のゴミ拾い活動を続けてきました。

普段の活動には年齢、国籍、職業を問わず、さまざまな人が参加しており、ゴミ拾いの機会を提供するだけでなく、多様な人たちが交流する場所を生み出しています。

岡山に住む人たちに瀬戸内海の島の風土や課題を知ってもらおうと、L’OCCITANE、クリエイターズラウンジともに、岡山離島プロジェクトを企画しました。

六口島でビーチクリーン

街のお掃除ボランティアgreen birdと化粧品メーカーL’OCCITANEが手がける環境保護活動とは、どのようなものなのでしょうか?

2023年5月20日に開催した岡山離島プロジェクトのようすを紹介します。

船を貸し切り六口島へ

集合場所は、児島駅から歩いておよそ5分のところにある児島観光港

目的地である六口島は児島半島の南端から南西に約2km、松島は約600mの場所に位置しています。

どちらの島も定期航路がないため、船を貸し切って六口島と松島を巡りました。

▼参加者20人が、ゆったりと過ごせる広さの旅客船です。

船の屋根に上れるようになっています。

海上を滑るように進む船の上には、さわやかな風が吹いていました。

▼普段は地上からしか見ることのできない瀬戸大橋も、海の上から見上げると迫力が増しています

さわやかな風に吹かれながら海上からの景色を楽しんでいると、15分ほどで最初の目的地である六口島に到着。

▼船首から架けられた不安定な板の上を歩いて、六口島に上陸します。

日常では体験しない出来事に、緊張を感じながら足を進めました

六口島に上陸したら、目的地である浜辺まで5分ほど歩きます。

岡山離島プロジェクトに参加した理由は?

第1回となる岡山離島プロジェクトには、高校生、大学生、20代から50代の社会人が参加してくれました。

普段からgreen bird岡山チームの活動に参加している人もいれば、初めてボランティア活動に参加した人もいます。

そこで、六口島に到着して最初におこなったイベントは、参加者同士の自己紹介

▼穏やかな波が打ち寄せる浜辺にたたずむ民宿「象岩亭」のテラスで、全員が参加したきっかけを共有します。

参加の理由を聞いてみると、「海洋ゴミ問題に興味があったから」という学習意欲にあふれる理由もあれば、「ゴミも拾えて、島にも行けて楽しそうだったから」と素直な意見もありました。

参加者のなかには、ベトナム出身のかたもいました。

▼瀬戸内海の島にまで足を運びゴミを拾うのは、貴重な体験になったでしょう。

ビーチクリーン開始

自己紹介を終えたら、早速ゴミを拾います。

▼ゴミ袋や軍手など、ビーチクリーンに必要な道具をそろえて、全員で浜辺に繰り出しました。

最初にビーチクリーンを始めた場所は、六口島の西側にある海水浴場の砂浜。

砂浜に目を凝らしながら歩くと、白いかたまりが砂に混ざっていることに気がつきます。

▼自然に還ることのない石油由来の素材、発泡スチロールです。

浜辺だけでなく茂みのなかも、手のひらサイズの発泡スチロールがたくさん見つかりました

もっと細かくなってしまったら目に見ることも難しいでしょう。

マイクロプラスチックとして海を漂っていることを考えると恐ろしいですね。

他にも、無数の空きビンや空き缶が、浜辺や茂みのなかに落ちていました。

▼場所を変えて、六口島の北側に位置する港周辺で、海洋ゴミを回収します。

▼茂みをかき分けると、大量のペットボトルが見つかります。

ペットボトルも石油由来の自然に還ることのない人工の素材です。

商店も自動販売機もない六口島にもかかわらず、大量のペットボトルが見つかりました。

きっと、風や波によって私たちの生活圏から運ばれてきたのでしょう。

▼ヘルメットのような大きなゴミも落ちていました。

プラスチックは私たちの生活を支えてくれる便利な素材。

しかし不適切な処分をされた場合には、分解されにくいという性質ゆえに、海や島の環境を汚してしまうやっかいな存在になってしまうのです。

▼今回のビーチクリーンで回収したゴミ。

▼空き缶も大量に回収しました。

空き缶のなかには、数十年前に製造されたと思われるラベルのものもありました。

不適切な処分をされ、海洋ゴミとして漂うと数十年の時間ですら朽ち果てることはありません。

数十年前に見かけたラベルに懐かしさを感じると同時に、海洋ゴミ問題の根深さを感じ取りました。

六口島のシンボル「象岩」

六口島には、「象岩」と呼ばれている国指定天然記念物があります。

▼写真の奥に見える岩が、「象岩」です。

花崗岩(かこうがん)の巨石が波による浸食を受けて、象がお尻を向けたような形になったことが名前の由来。

六口島は倉敷市にある島ですが、倉敷市の住民ですらなかなか見られない光景です。

穏やかな波の上に浮かぶ島からの景色は、実は倉敷の人たちにとっても貴重な存在。

海洋ゴミの実態だけでなく、瀬戸内海の美しい景色も記憶に残ったと思います。

▼六口島のシンボル「象岩」を背景に記念撮影。

穏やかな海を眺めながら海の幸を楽しむ

昼食は民宿「象岩亭」が用意してくれました。

▼穏やかな海を眺められるテラス席で、海の幸をいただきます。

▼瀬戸内海の新鮮な海鮮を味わいました。

廃校を利用した美術館「松島分校美術館」へ

午後からは、松島にある廃校を活用した施設である松島分校美術館に場所を移します。

再び、船に乗り込み六口島から松島に向けて出発します。

松島分校美術館

松島は児島半島の南端からおよそ600mの位置に浮かぶ島。

周囲約1.2kmの岡山県内で最小の有人島です。

▼港の目の前に松島分校美術館は建っています。

松島分校美術館を見学するまえに、松島を散策しました。

▼もちろん、ゴミを回収しながら島を巡ります。

自然保護活動への想いを共有

岡山離島プロジェクトは、3つの団体の力によって実現しました。

松島分校美術館で、それぞれの団体の事業を紹介するとともに、岡山離島プロジェクトを開催した背景について共有しました。

L’OCCITANE

岡山離島プロジェクトを支援してくれた化粧品メーカーL’OCCITANEは、企画に至るまでの経緯を共有してくれました。

L’OCCITANEでは、人と自然、そして地球の未来を考える6つの社会貢献事業に取り組んでいます。

2022年、サステナブル月間である6月に、6つの事業のなかからもっとも賛同できる事業を選ぶアンケートを、インターネット上で実施しました。

その結果、アンケートの全回答数である約2万件のうち、もっとも多い5,850件がgreen birdの活動に投票されたのです。

そこで、賛同してくれた人たちに向けて、L’OCCITANEとgreen birdの活動を発信するために、岡山離島プロジェクトを企画しました。

一般社団法人クリエイターズラウンジ

クリエイターズラウンジは、松島の歴史を紹介してくれました。

松島周辺の島は、1万5000年前から人が住んでいた痕跡があり、今でも畑からは石器が出てくることがあるそうです。

平安時代中期には、当時の朝廷に対して反乱を起こしたことで知られる藤原純友(ふじわらの すみとも)が、籠城(ろうじょう)していました。

そのため、松島には藤原純友を祀った純友神社が鎮座しています。

松島の歴史に加えて、松島分校美術館の活用方法についても共有してくれました。

松島分校美術館の2階はアトリエになっており、アーティストが定期的に足を運びながら創作活動をおこなっています。

また一般の人も松島を楽しめ、もともと校庭だった場所はキャンプ場として活用されています。

校舎の目の前には見わたす限り海が広がっており、瀬戸内海を代表する多島美を眺めながらキャンプを楽しめることも松島分校美術館の魅力です。

街のお掃除ボランティア 特定非営利活動法人green bird

green birdは、2002年に発足してからの歴史を紹介。

2002年、表参道商店街の人たちが集まり、ポイ捨てする人を減らそうという着想のもと、誰でも気軽に参加できるゴミ拾いを始めました。

ハロウィンで盛り上がったあとの渋谷スクランブル交差点周辺でのゴミ拾い活動や、タピオカミルクティーの容器の回収事業なども紹介。

芸能人や企業とのコラボレーション企画を実施しながら、ポイ捨てしない仲間を増やす活動を世界中で続けています。

島での時間を惜しみながら

穏やかな海の上で過ごす非日常の時間は、瞬く間に過ぎてしまい、気がつけば一日の予定が終わっていました。

楽しい時間を惜しみながら、児島観光港に戻ります。

海洋ゴミを回収するだけでなく、瀬戸内海の島の風土を十分に感じられた岡山離島プロジェクト。

海洋ゴミの実態を認識しただけでなく、瀬戸内海の美しい景色も心に残りました。

瀬戸内海でゴミを拾って感じたこと

島の浜辺からは穏やかな波と島の織りなす美しい景色を見渡せましたが、足元を見ると風で運ばれてきたゴミが目立っていました。

ゴミに書かれているラベルを見るとわかるように、ほとんどのゴミは私たちの生活圏から流れ着いたものです。

不適切にゴミが処分された場合には、意図せず美しい景観を汚してしまっているのだと気付かされました。

美しい瀬戸内海の景色と私たちの日常が、ゴミを通じてつながっていることに悲しさを覚えます

海洋ゴミ問題は学校教育でも取り上げられるようになりましたが、身近な問題に感じられない人もいるかもしれません。

しかし、実際に海に出てゴミを拾えば、私たちの生活とかかわりがあることを否応なく思い知らされます。

瀬戸内海の美しさを感じ取り、さらに海洋ゴミ問題への危機感を覚えれば、環境保護に向けての行動を起こしたくなるでしょう。

ゴミと向き合うきっかけを、岡山離島プロジェクトは提供してくれました。

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