渡邊雄太会見全文、W杯に向けて「リーダーとして引っ張っていかなければいけない」と力強く宣言

NBA10チーム以上から話があったと明かした渡邊

7月9日、渡邊雄太(サンズ)はオンラインで記者会見を開き、現地7月5日(日本時間6日)にサンズと交わした契約について、その交渉でのエピソード、来季への抱負などさまざまな質問について回答した。また日本代表に関する質問では、「リーダーとして引っ張っていかなければいけない」とチームを引っ張っていくと力強く宣言した。

Q.まずは来季の選手活動についてのご報告をお願いいたします。

「すでにニュースなどで見ているかもしれませんが、来シーズンから、フェニックス・サンズの一員として活動することになりました。来シーズンに関しても楽しみにしていますし、ワールドカップも精神的に万全の状態で臨めるかなと思っているので、無事契約が決まってよかったと思っています。これから新しい挑戦が始まるので、頑張っていかなければいけないなっていう思いです」

Q.契約されての率直な気持ちを教えてください。

「素直にうれしいという気持ちでいっぱいです。本当にありがたいことに、たくさんのチームから話をいただいて、その中でもサンズ側に熱量があったというのと、昨季一緒にプレーしていたKD(ケビン・デュラント)がいたこともあったりで、決断自体はそれほど時間かかりませんでした。サンズは行きたいチームの1つだったのでありがたいなという気持ちでいっぱいです」

Q. 行きたいチームの一つということでしたが、どんな印象を持っていましたか?

「ここ数年ずっと本当に強くて、敵としては本当にやりたくないチームの一つでした。新シーズンはヘッドコーチ(フランク・ヴォーゲル)が変わり、選手もガラッと変わったので、新しいカルチャーを作っていくと言っていたので、自分もその一員にしっかりなって大切なピースの1つになれればなと思っています」

Q.サンズからは具体的にどんなことを期待されていると認識していますか?

「まずはエナジーの部分ですね。練習も含めて毎試合、どういう状況でもエナジーを出してプレーするというのは、確実に求められているのと、昨季の3Pシュート(60/135で成功率44.4%)はかなり評価してくれていると感じました。何なら決めてあたりまえという風に見られるので、もちろんプレッシャーもありますが、しっかり打って決めてサンズの勝利に貢献できたらと思っています」

デュラントから「また一緒にプレイできるのがすごく楽しみ」と電話をもらう

Q.エナジー、3Pシュートという部分はプラスαを加えるのでしょうか?

「個人的には今までとやることは変わらないかなと思っています。努力も継続してやっていますし、サンズは得点力の高い選手がたくさんいるので、自分はそこまで得点を求められるわけではありません。昨季ネッツで、最初やっていたような役割をサンズでも求められると思っています。もちろん、プラスαで自分が成長した部分も見せていければと思っています。まずは自分の役割を徹底すること。それが、サンズで自分が一番生きる道だと思いますし、チームに求められていることだと思っているので、バランスとかもしっかり考えながらやっていけたらいいなと思います」

Q.先ほどデュラント選手の名前を出していましたが、また一緒にプレーできる喜びはありますか?(昨季、デュラントがサンズにトレードされるまでネッツでチームメイト)

「めちゃくちゃうれしいですね。僕がサンズとの契約を決めて最初に連絡くれたのが彼でした。すぐに連絡が来て、ニュースになったのをあとから知ったという感じで(笑) 『またユウタと一緒にプレイできるのがすごく楽しみ』と言ってくれたので、 本当にありがたいと思っています。僕自身もKDとプレーしていた時期、楽しかったので同じように楽しい時間を過ごせたらいいなと思います」

Q.新チームで心強い存在となりますね。

「またチームメイトとして彼とやっていけるのは間違いなく心強いです。彼からはすごく信頼されていたというか、僕のことを評価してくれていたと思っています。NBAの歴代選手の中で見てもトップクラスの選手からそういう風に思ってもらえるのはすごくうれしいことです」

Q. NBA6シーズン目となりますが、自信のようなものは芽生えていますか?

「自信はもちろんあります。過去5年間の中で最初2年、グリズリーズではツーウェイ契約でした。ラプターズではエグジビット10(無保証で1年限定のチームオプションのミニマム契約)でした。6人ぐらいに部分保証を与えて、残り2、3枠を争うというやり方だったので、あってないような補償でした。昨季も無補償で始まって、(サンズでは)ようやく保証付きになって自分が間違いなくチームにいられるという契約になりました。カットされる可能性もゼロではないですが、開幕ロスターには入るので、今まで自分がやってきた努力、方向性は間違いではなかったと改めて感じました。それと、こういう評価をしてもらっているというのが、すごく自信になっているので、その自信をコート上でもしっかり出して、また3Pシュートを高い確率で決めていきたいと思っています」

Q.来シーズンの目標を教えてください。

「チームとしては優勝だけを狙ってやっていくことになります。その分、大変なことも色々あるとは思いますけど、NBA入った時はツーウェイ契約で、本契約をもらうことと優勝が大きな目標だったので、そのチャンスがあるチームにいるというのは、すごくありがたいです。先程も言ったように、ただいるだけではなくて、戦力として優勝に貢献できるようにできたらいいなと思っています」

「チームが決まっても決まらなくても、W杯は出るつもりでした」

Q.契約も落ち着いたことで、日本代表、ワールドカップにはプラスとなりますね。

「僕は元々チームが決まっても決まらなくても、このワールドカップは出るつもりでした。日本開催でやれるというのは、生涯一度の経験だと思っています。オリンピックも東京で開催されましたが、残念ながら無観客という状況でした。今回はたくさんのお客さんにも見てもらえると思います。 契約が決まってより集中してやれるというのはありますが、自分としてはそういうのも関係なく、最初から全力でやるつもりでした。今回もすごく楽しみにしてはいます。ただオリンピックの時は、強化試合とかも全部ぶっ通しで出続けて、その後ラプターズのキャンプではケガから始まってしまい、最初2、3ヵ月出られないっていう状況になってしまったので、今回の強化試合は時間も制限しつつという状況にしたいと思います。それでも(ワールドカップが開幕する)8月25日に自分の最良のコンディションを持っていこうと思っています。強化試合しか来られないファンの方には申し訳ない気持ちはありますが、ご理解いただけたらうれしいです」

Q.NBA6シーズン目の抱負をお聞かせください。また、地元の子どもたちへのメッセージもぜひお願いします。

「重なる部分もありますが、優勝だけを目指してやっていくので、サンズにとって重要な選手になれるように、優勝の手助けをできるようにやりたいですね。香川の子供たちに向けては、自分も香川県で育ってNBAという夢を実現しました。当時は人から笑われるような大きな夢でしが、楽しんで出ていって今に至っているので子供たちも夢があるのなら、それを持ち続けて実現に向けて挑戦してほしいですね」

Q.先ほど、サンズとの契約を決断するのは時間がかからなかったとおっしゃっていました。FA交渉解禁から1時間半後に情報がリークされていました。かなりスピーディーに決まったのですね。

「うちに来てほしいというニュアンスのことはたくさん、10チーム以上から言われました。ただ、自分がそれほど行くつもりもないのに、オファーの内容を聞くのはちょっと失礼かなと思いましたし、それこそ時間がかかると思ったので、エージェントと共に自分たちでフィットするかどうかも考えたうえで、何チームかに絞って実際にオファーを聞いた感じでした。サンズよりもっとお金を出してくれるチームは正直ありました。少し考えもしましたが、現状のことを考えた時に今はお金ではなくてやりたい場所でプレイをすることが大事かなと思いました。それとサンズのフロントの方は、FA交渉が解禁した時、僕がいたロサンゼルスにすぐに来て自分たちが、どれだけ僕に来てほしいかというのを話ししてくれました。その場でオーナー(マット・イシュビア氏)からも連絡をいただいて、それだけ自分のことを欲しいと思ってくれているんだと感じました。そのミーティング後、すぐにサンズに行こうと決めました」

保証なし契約でプレーする苦しさ、大変さ

Q. サンズといえば田臥勇太(宇都宮)選手がNBAデビューを果たしたチームでもあります。田臥選手は渡邊選手が大学に行く際もあと押ししてくれたという話がありましたが、サンズへの縁を感じたりしますか?

「正直サンズとの縁はすごく感じています。もちろん(田臥)勇太さんが歴史を作った場所というのもありますし、日本人2人目のNBA選手として僕がコートに立った時の対戦相手がサンズでした。僕からしたら、思い出が結構あるチームです。サンズに契約が決まった時に勇太さんからもおめでとうと連絡をいただきました。だから、僕としてはすごくゆかりのあるというか、縁のあるチームでプレイできるというのは楽しみです。ここからまだ大変なことがあると思いますが、勇太さんの影響でサンズを知っている人もたくさんいると思うので、たくさんの人に応援してもらえるように、また僕も頑張っていけたらなと思っています」

Q. 現在の年齢や今後も踏まえて来季はどのようなシーズンにしたいなどありますか?

「来シーズンも自分にとってベストなシーズンではないといけないと思っています。昨シーズン、スタートダッシュはうまくいったんですけど、デッドラインでトレードがあったあとはプレータイムが減って、プレイオフは最後に少し出たぐらいでした。まだまだ成長しないといけないと思っています。プレーオフでの競った場面ではまだプレーはしたことないですし、また真価が問われる1年になると思います。先程も言いましたが、今回に関しては周りが僕を見る目も違い、 シュートが入ると認識されていると思います。見られ方が全然変わってくると思うので、いい意味で裏切れるようなプレーをしていきたいと思います」

Q. これまでで最も早く契約が決まりました。そういった中で生まれる気持ちの余裕はありますか?

「準備が変わるといったことはないですが、気持ちの余裕はかなりあるかなと思います。昨シーズンが終わった後、最初にロサンゼルスに行ってエージェントとミーティングをしましたが、その時ノーギャランティや部分保証では、正直もうNBAではやっていける自信がないと伝えました。果たして自分が残れるのかどうかというプレッシャーの中でやっていくのはかなり大変なのです。正直、ネッツでもそれはしたくはなかったのですが、ただチャンスがあるんじゃないかという中で、飛び込んでやった結果、うまくチャンスを掴めたという結果になりました。もちろん(今オフは)契約をもらえる自信が多少あったというのもありますが、それまでもうギリギリの状態でやってきた部分があったので、今シーズン、この段階で2年契約という契約をもらえてうれしいです。 悪い意味で、変に余裕を持ったりとかするとかは性格上絶対あり得ないのでピークをどこに持っていくというのを調節できるのは、すごくありがたいと思っています。契約がない状態だと、キャンプ初日に自分のピークを持っていき、そのままシーズンを突っ走っていかなければなりません。それが何より大変だったんですけど、 多少コントロールしながらやれるっていうのはすごく大きいです」

10チーム以上からの誘いに「めちゃくちゃ驚きました」

Q.10チーム以上から興味を持たれていたという事実を、どう捉えていますか?

「めちゃくちゃ驚きましたし、本当にありがたいと思いました。ただ僕に対して、どこまでのオファーをくれたかというと話が変わってきます。それでも、色々なチームから興味を持ってもらえたのは、昨シーズンやってきた自分が評価されたんだと思えて、すごくうれしかったですね」

Q.キャリアを振り返ってのご自身への評価、それと未来の目標を教えてください。

「最初の質問に関しては2つあって、客観的に見て、なかなかできないことやれている感覚はあります。アメリカでは通用しないと言われた中で飛び込んできて4年間大学でしっかりやり遂げてNBAでも5年在籍し、6年目、7年目の契約ももらうことができました。客観的に見たら、評価していいと思います。けど優勝したいという願望もあって、昨季の成績だと足りない部分があるので、もっと3Pシュートも確率を求めたい。昨期の成功率44%もすごくいい数字だと思いますけど、もっと高い確率で決められたのではないかとも思っていますし、ネッツではディフェンスで少し穴になったりもしていました。まだまだ成長しなければいけません。自分を褒めてあげるのも重要だと思っていますが、もっともっとやれる、まだまだ成長できると思ってます。もっと長い間NBAでプレーしたいので、新シーズンも成長した姿を見せられたらいいなと思います」

Q.先日、SNSで富樫勇樹(千葉J)選手とのやり取りが話題になっていましたね。

「勇樹とはすごく仲も良くて結構頻繁に連絡を取っています。契約の内容も喋っていました。詳細は控えますが、(契約について)言う、言わないと勇樹とやり取りはありました(笑)」

Q. 改めて地元香川の方へメッセージをお願いします。

「いつも地元の皆さんの応援は僕の本当に力になっています。今回もテレビ越し、携帯越しなど色々な形で応援してもらえたらうれしいです。僕自身もっと頑張れると思っているので、皆さんが応援したいと思えるようなプレーができるように頑張ります」

W杯に向けて「リーダーとして引っ張っていかなければいけない」

Q.ネッツでの活躍が今回の契約につながったと思いますが、残留といったことも考えたのでしょうか?

「ブルックリンでの時間は自分にとって、キャリアを左右した1年だったと思っています。元々無保証の契約しかもらえず。行くか行かないかで迷っていたところから始まってすべてがうまく回りだして活躍して、コーチたちやチームメイトからの信頼を得て評価が上がりました。それが、この契約に繋がったと思います。かなり中身の濃い1年だったので正直、(移籍は)すごく寂しいです。ブルックリンのファンの皆さんにSNSを通して感謝の気持ちを表した時にも本当にたくさん温かいコメントももらって、それだけ応援してもらえていたと感じられてすごくうれしかったです。正直、残留も考えたのですが、昨季のトレード後の状況だったり、新加入選手の状況とかを見たりして、自分がもっと輝ける場所がほかにあると思いました。ブルックリンですべてがうまくいっていたら良かったという気持ちもありますが、新しいチームでやれることは楽しみでもあります。悲しい気持ちと楽しみな気持ちと半々と感じです」

Q. 在籍していたラプターズ、ネッツ、そしてサンズは優勝候補とも言われるチームですね。そのチームから評価されていたということに関してどう思っているのかと、優勝への思いを教えてください。

「優勝を狙えるチームから声をかけてもらえるのは、お互いの思いが合っているからかなと思います。自分の場合、金額的には安めに取れて、それなりに経験があって考えてプレーできて、役割を全うできるという部分で、強いチームにはそういう選手が必ずいるので、自分もそういう評価をしてもらえているんだなと感じていますし、すごくありがたいことだと思っています。それと、やるからには優勝を目指してやりたいというのもあって、優勝できそうだから行くというのは語弊がありますが、優勝を狙えるチームの中で、どれだけチームに貢献できるかはすごく楽しみな部分でもあります。サンズでは優勝の一員となれるようにしっかり頑張っていきたいと思います」

Q.日本代表ではどんな存在感を示したいですか?

「自分はまず、このチームではリーダーとして引っ張っていかなければいけないと思っています。若い選手がたくさんいる中で、自分は経験が多い選手ですし、 チームを引っ張るべき存在だと思っているので、メンタル的な部分でも支えられるようにしていきたいです。プレーでは色々なことが求められると思うので、NBAとは違った役割にはなると思います。自分の良さをしっかり出しつつ、成長した姿を見せられたらいいですね」

渡邊雄太2022-23レギュラーシーズンスタッツ

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