コルベット、2戦を残しGTEアマ王座獲得。他を圧倒したチームの偉業に「魔法のよう」とキーティング

 第6戦富士と最終戦バーレーンの2レースを残してWEC世界耐久選手権LMGTEアマクラスのタイトルを確定させたコルベット・レーシング。同チームのドライバーのひとりであるベン・キーティングは2023年シーズンのキャンペーンについて「何の欠点もなかった」と言い、アメリカンチームが達成した偉業を「魔法のようだ」と表現した。

 キーティング、ニコ・バローネ、ニッキー・キャツバーグのトリオは、7月9日(日)にイタリア、モンツァ・サーキットで行われた今季第5戦『モンツァ6時間レース』でクラス4位に入り、33号車シボレー・コルベットC8.Rの獲得ポイント数を145に伸ばした。このポイント数は、彼らにもっとも近いふたつライバル、25号車アストンマーティン・バンテージAMR(ORT・バイ・TF/65ポイント)と85号車ポルシェ911 RSR-19(アイアン・デイムス/67ポイント)が、残る2戦でポール・トゥ・ウインを決めフルポイントを獲得したとしても、もはや届かない数字だ。

 プラット・ミラーが運営するコルベットチームは、GTEプロの最終シーズンとなった昨季2022年からシリーズにコミットし、同クラスからGTEアマカテゴリーに移った最初のシーズンで大成功を収めた。第1戦セブリングと第2戦ポルティマオで開幕2連勝を飾った33号車コルベットは、続くスパ・フランコルシャンでは45kgのサクセスバラストを積みながらもGTEアマクラス2位に入った。

 その後、キーティング、バローネ、キャツバーグの3人はリードラップからの脱落を挽回してル・マン24時間レースを制し、週末のモンツァでは40kgのバラストとBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)の変更によってさらに10kgが追加されたマシンでタイトルを獲得した。

“最強ジェントルマンドライバー”のひとりであるキーティングは、GTEアマで昨年に続く連覇を達成した後、「どんなシーズンでもこれほどうまくいくと期待して臨むのは、誰であってもクレイジーだろう。なぜなら、ありえないからだ」と語った。

「これまで、どのクラスでもこんなにうまくいったことはない。僕は『魔法のよう』という言葉を使い続けているけれど、まさにそんな感じだ」

「物事がこれまでのように進むことを期待することはできなかったが、WECでの4年間を振り返り、なぜ最終的にこの場所に行き着いたのか、欠点がどこにあったのかと考えるとこのチームには何もないんだ」

「このチームには不運がなかった。反対に我々には良い戦略があり、同時に良いピットストップがあった」

ベン・キーティング/ニコ・バローネ/ニッキー・キャツバーグ組33号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング) 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース

 キーティングはさらにふたりのチームメイトを称賛し、シルバーランクドライバーであるバローネのパフォーマンスについて、冗談交じりで「ふたりのプラチナドライバーに恵まれた」と述べた。

「僕は(ニコに対し)、『君がシルバーからプラチナになる初めての人かもしれない』と言い続けているんだ」とキーティングは笑った。

「ドライバーはみんなが素晴らしい仕事をしてくれたし、チームも素晴らしい仕事をしてきた。すべてがうまくいっているだけだ。しかし紙の上ではそのように見えるが、すべてが僕たちのためにあったわけではない」

「83号車フェラーリ488 GTEエボ(リシャール・ミル・AFコルセ)はおそらくすべてのレースで最速のクルマだったと思うが、セブリングで大破しその後ル・マンでも大破している。また、77号車と85号車のポルシェ911 RSR-19、そして25号車も。僕たち以外はみんなどこかで不運に見舞われている」

「これは馬鹿げているように聞こえるかもしれないけれど、僕たちは選ばれたような気がする。祝福されているような、後光が差しているような気さえするんだ」

「問題があったとしても、それらは適切なタイミングで起きた。文字どおりの意味ですべてが信じられないようなことだった」

「本当に僕たちにとっては信じられないようなシーズンだったし、不運にも見舞われなかったんだ」

クラス4位でフィニッシュし、LMGTEアマクラスのタイトル獲得を確定させた33号車シボレー・コルベットC8.R 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース

■「少し肩の荷が下りた」

 キャツバーグもキーティングと同様にチームメイトを称賛し、彼らがチャンピオン争いにおいて「差を生み出している」と語った。

「今年はチームとしてそれを行うことがすべてだった」とキャツバーグ。

「チームメイトのニコ(・バローネ)とベン(・キーティング)は大きな評価を受けるに値するよ。なぜなら、彼らはこのクラスでずば抜けている。僕の考えでは、彼らは最高のシルバーであり、最高のブロンズだ。もちろん、僕自身もいい仕事をしているつもりだ。他のプラチナドライバーと比べても遜色ないと思っている」

「そういった完成されたパッケージがあれば、(成功するためのプログラムは)もっと簡単になる。そこが僕たちと(ライバルチーム)の違いだと思う」

 キャッツバーグはまた、コルベットチームのポジティブな環境もチームの成功の一因になっていると考えている。

「僕はいつも、周りの人たちと一緒にいて居心地がいいと(物事が)よりうまく機能すると言っている。それはよくあることだ」

「今年は素晴らしい雰囲気だと思う。メカニックの間でもドライバーの間でも、とにかくみんな仲がいい。僕たちはいつも入り浸っているんだ」

「チーム内やドライバーの間ではとてもリラックスした雰囲気が続いている。僕からすると、(WECの)週末はいつもちょっとした休暇のような気分なんだ。仲間と出かけたり、楽しんだりね」

 コルベットは残り2戦、富士とバーレーンで“前回の続き”を行う。

「どちらかといえば、少し肩の荷が下りて本当に頑張れるかもしれない」と語ったキャツバーグ。

「ちょっとしたミスがあっても、チャンピオンシップに勝てなくなるという事態にならないからね。だから、これからはもっと簡単かもしれないけど、それは当然だと思うよ」

2023年シーズンのWEC LMGTEアマクラス・チャンピオンとなったコルベット・レーシング 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース
終盤2戦を残してWEC LMGTEアマのドライバーズチャンピオンを決めたニコ・バローネ(中央)、ベン・キーティング(左)、ニッキー・キャツバーグ(右) 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース

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