7月7日（金）から9日（日）にかけて、北海道虻田郡ニセコ町を拠点に開催された2023年シーズンのJRC全日本ラリー選手権第6戦『2023 ARKラリー・カムイ』に、TOYOTA GAZOO Racing（TGR）から勝田範彦／木村裕介組（トヨタGRヤリスJP4ラリー2）と眞貝知志／安藤裕一組（トヨタGRヤリスGR4ラリー）が出場。JN1クラスに参戦した勝田／木村組が2023年シーズン初優勝を飾り、JN2クラスに参戦した眞貝／安藤組もJN2クラス2位を獲得した。
2023年シーズンのJRC第2戦新城から、車両開発を主な目的としてGRヤリスのラリー2マシンと、スポーツAT（DAT）を搭載したGRヤリスを走らせてきたTGRは、第6戦にして2023年シーズン初めてのグラベル（未舗装路）ラリーを迎えた。
第2戦新城以降、ターマック（舗装路）ラリー4連戦を戦ってきたチームは、グラベルラリーの初戦に向けてGRヤリスJP4ラリー2のテストをダートトライアル場で実施。さらにラリーウイークにはJN1クラスの参加者を対象としたテスト走行にも参加し、勝田がセッティングの調整を行った。
一方で眞貝が駆るGRヤリスGR4ラリーDATは、グラベルに対応するための開発期間を確保するべく、今回は投入が見送られることとなり、眞貝は2022年シーズンまで使用していたMT車のGRヤリスGR4ラリーに、足まわりやブレーキのアップデートを施した車両でJN2クラスに参戦することとなった。
■11本ものステージで最速タイムを記録
ラリー・カムイは2022年大会と同様に、ニセコアンヌプリ国際スキー場がラリーの拠点に指定された。このイベントの高速、中速、低速コーナーが組み合わせられたステージは、路面のコンディションも比較的スムーズであることから多くのドライバーに「走っていて楽しい」と高く評価されている。しかし、同じステージを2回走る再走ステージでは1回目の走行によって深い轍ができる箇所もあり、マシンへのダメージには注意が必要となる。
今大会では、前日まで雨に降られたセクションがあったものの、ラリー初日は好天に恵まれ、路面が適度に湿り気を含んだ絶好のコンディションでのスタートとなった。SS1では、2023年シーズン最大のライバルであり、第2戦から4戦連続で総合優勝を飾ってきたヘイキ・コバライネン（シュコダ・ファビアR5）がリタイア。このSSを制した勝田／木村組はここから5連続ベストタイムを記録し、初日終了時点での後続との差は1分以上の大差となった。JN2クラスに参戦した眞貝／安藤組も徐々にペースを上げ、クラス2番手で初日を終えている。
ラリー最終日となった日曜日、勝田はこの日行われたすべてのSSをベストタイムでまとめ、2023年シーズン初となる優勝を飾ることに成功。王者のリタイア、JN1クラスのライバルであるスバル勢の新井敏弘と鎌田卓麻が参加を見送ったなかではあるが、GRヤリスJP4ラリー2にとって、これがJRCでの初優勝となった。眞貝はSS7でコースオフを喫しながらもサービスに帰還し、メカニックによる修復を受けてJN2クラス2位表彰台を獲得している。
「GRヤリスJP4ラリー2にとって初のグラベルラリーでしたが、ヘイキ・コバライネン選手のリタイアもあるなか、勝田選手は自分のクルマに集中して走り切ってくれました」と語るのは、チーム監督を勤める豊岡悟志。
TGRがJRCへ参戦する意義として人材育成を掲げるなか、豊岡氏は「今回、車両トラブルへの対処など、チームの実力が上がっていると感じました。やはりラリーという場を通じて、メンバーが成長させてもらっていると実感しています」と述べ、チームメンバーの成長についても手応えを感じたようだ。
■「前日のテストで横転させてしまった」
●ドライバーコメント
勝田範彦（GRヤリスJP4ラリー2／JN1クラス優勝）
「GRヤリスJP4ラリー2での初めてのグラベルラリーでしたが、クルマの状態は良く、チームのメンバーや応援してくださっている皆さんに、優勝という結果で恩返しすることができて本当に嬉しいです」
「実は前日のテストでクルマを横転させてしまい、多くの方々にご心配をおかけしましたが、チームが頑張ってくれて、ラリーに出場することができました。みんなの努力に感謝しています」
「今回は目標としているヘイキ・コバライネン選手がSS1でリタイアしてしまったため、ペースを直接比較することはできませんでしたが、昨年の彼のタイムに負けている部分もあったので、今後のテストでさらに改善を図りたいと思います」
●眞貝知志（GRヤリスGR4ラリー／JN2クラス2位）
「今回は、開発中のDAT車両ではなくMT車両での参戦になりました。ブレーキや足まわりにはDAT車両に向けて温めていたアイテムを入れた仕様で走りました。結果としては、狙っていた部分が良く働いてくれ、すごく良いタイムを出すことができました」
「ただ、路面状況の変化に対して、ドライビングでついていけない局面もあり、今後に向けての課題がより明確になりました。また、最終日の最初のSSでコースオフして冷却系を傷めてしまったのですが、クルマは何とか持ち堪えてくれましたし、サービスではチームの皆さんがしっかりと直してくれて、問題なく最終セクションを走ることができました」
「2位という結果だけでなく、内容の部分で学びが多く、成果と課題の両方を見つけられたラリーでした。こうした知見をDATでの参戦にも活かしていきたいです」
