第46回「レズ風俗キャストが『性的同意』を知っておくべき理由」

新しく法律が変わるというニュースを見ました。「性的同意」のない性交が、犯罪となるのだそうです。えっ、いままでは違ったの? と、まず思いました。 だって、怖いですよね。同意のない状態で事が進んでしまうと、された側は気持ちよくないし、苦痛だし……絶対ダメでしょ! トラウマになることだってある。そのぐらいのことだと思います。 といいながら、私がはじめて性的同意という言葉自体を知ったのは、最近のことです。レズっ娘グループの代表、御坊さんとの会話で出てきたのですが、最初は「そんな言葉あるんだ!?」という印象でした。 私たちのグループではHPに「レズ風俗用語」というコーナーがあり、そこでも「性的同意」が説明されています。https://lesbian.jp/lword/ セックスをすることに対して自分と相手が同じ気持ちであることを確認し合うだけでなく、性的な話をしたり性的なものを見聞きさせたりするときにも、同意が必要です。 私なりに表現してみると、「いまからお互いに肌と肌がふれ合う濃厚な接触をするんだよ。こんなことするけどOKだよね?」と確認し合うこと……という感じでしょうか。 これまでは、なんとなくの雰囲気や、相手から漂ってくる空気を読み取って「ホテルに行こうか」「家に来ない?」という言葉でその同意を探っていたのだと思います。もちろん、ふたりの関係によってはそれで十分だということもあるでしょう。 けれど、ホテルに行ったり家にお邪魔したりするのは「セックスしていい」という意味ではないんですよね。 「いちいち同意を確認するのは無粋だ」という声も聞きます。 私は、確認の仕方にセンスが問われると思います。誰にでも通じる、ひとつの絶対的な方法というのはないのでしょう。ふたりのあいだで、見つけていくものですよね。 ところで、なんでレズ風俗店のHPで「性的同意」が説明されてるの? という疑問を持たれた方はいませんか。そもそもエッチなことをするところなのに……ということですよね。 実は、そうではないのです。ご利用されるお客様のなかには、もともと性的欲求が薄くてそうした行為が目的ではないという方もいらっしゃいますし、しないわけではないけれどそれがメインではない、という方もいます。 するつもりで予約したけれど、その日の体調や気分によって、肉体的なふれ合いよりもベッドに一緒に入っておしゃべりしたくなったとか、気兼ねない時間を過ごせれば十分となることもあります。 性風俗の利用=エッチなことを絶対にする、というわけではないのです。 それはキャストにもいえることです。私たちはプロフィール欄でNG、つまりできないことをお伝えしています。それを要求されるお客様は基本いらっしゃらないのですが、そのときどきで「こんなことできる?」と問われる可能性はあります。 仕事だから、決して安くないご利用料を払ってもらっているんだから、応えないといけない、という考えはちょっと危険です。お互いが傷ついたりイヤな思いをしたりという、望んでない結果につながるものだと思います。 どんな関係でも、一度OKしたら全部あり、ということはないですし、同意はひとりひとりがするものです。だから私たちレズ風俗キャストも、性的同意について知っておく必要があります。 気持ちのいいセックスをするには、お互いに楽しむ気持ちがあることが大前提です。 「わあ~、この感覚なんだろう?」 「えっ、信じられないくら気持ちいい!」 「ここに触れられたら気持ちいいって、知らなかった」 「指と舌、どんなふうに動いてるんだろう」 ……こんな時間や感動を共有できる相手を選んでほしいのです。 そうした関係なら、セックスをしたい気持ちをどんな言葉や表現で伝えられるかを、一生懸命考えられると思います。 強引なのは、いけません。 「激しい」と「強引」はまったく違います。 好きな人と、してください。 身体と心が喜ぶ相手と、してください。 この人なら身を任せられると思える相手と、してください。 それが信頼というものですし、信頼が築けていれば同意というのはむずかしいものではないのだと思います。

【ゆう プロフィール】

永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025

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