<金口木舌>ぱいかじの吹く島は

 八重山では「南風」と書いて「ぱいかじ」と読む。夏場に南から吹く南風は幸せを運ぶとも言われる。2013年に開港した新石垣空港の愛称は、南風を想起する「南(ぱい)ぬ島石垣空港」だ

▼空港開港と同じ年、市街地に近い人工島の名称を「南(ぱい)ぬ浜町」とすることが公募を経て決まった。旅客バースやビーチが造られる新しいレジャーの町に、市民は期待した

▼その町にはいま、北朝鮮の「衛星」発射に備え地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が長期間居座る。配備が始まった時には閉まっていたビーチも開放され、黒いフェンスを挟んでPAC3と遊泳客が隣り合う奇妙な光景が生まれた

▼振り返れば12年、16年にも同じ場所にPAC3が展開した。市民の期待を集めた新しい町のリピーターとなったのは自衛隊だった

▼サザンゲートブリッジを渡った先にあるのは、さわやかな南風が吹くレジャーの島なのか、それとも臨時的に軍事転用される島なのか。夏本番を迎え、相反する島のイメージを載せたてんびんは、不安な方向へと日に日に傾いていく。

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