母の記憶を辿るように、広大で荒涼とした草原を旅する『草原に抱かれて』9月公開

チャオ・スーシュエ監督の長編デビュー作『草原に抱かれて』が9月23日より公開されることが決定。併せて、ポスタービジュアルがお披露目となった。

認知症を患う母が気がかりだったミュージシャンのアルスは、思い切って兄から母を引き取り、母の故郷の内モンゴルで一緒に暮らし始めた。そして、母の記憶を辿るように、広大で荒涼とした草原をふたりで旅を続ける。遥か彼方まで広がる草原、季節ごとのゲル(天幕)の移動や、天地に感謝を捧げる祈りの作法、生と死が隣り合わせのようで、思わず見入ってしまう…。

内モンゴル自治区出身でフランスで映画を学んだ1990年生まれのチャオ・スーシュエ監督のデビュー作である本作は、昨年の東京国際映画祭を始め、各地の映画祭で上映され話題となった。母と子の関係を描いた本作だが、同時に、ふたりが旅するモンゴルの大自然の魅力に溢れている。

モンゴルが誇る女優、バドマ。ウルリケ・オッティンガー監督作“Johanna d’Arc of Mongolia”(1989年)を始めとして名だたる作品で主演女優を務めてきたバドマと、本作がデビュー作となるミュージシャン、イデル(伊德尔)の共演は見ものである。シンガーソングライター、馬頭琴奏者、ホーミー・アーティストとして活躍してきたイデルは、本作でも電子音楽から馬頭琴まで幅広い音色を響かせる。伝統、過去に帰りたい母と、現代の象徴とでもいえるアルスの二人が、物語に新鮮さを加えている。

内モンゴル自治区フルンボイル市が舞台の本作。母の“思い出の木”を探す旅は、内モンゴル自治区の広大な草原を巡るロードムービーでもある。草原の美しい風景を映し出すのは、撮影監督ツァオ・ユー。『南京!南京!』(ルー・チューアン監督/2009年)でアジア・フィルム・アワード最優秀撮影賞、金馬奨最優秀撮影賞、サン・セバスチャン国際映画祭最優秀撮影賞他多数、『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(チェン・カイコー監督/2017年)で金鶏奨最優秀撮影賞、アジア映画批評家協会賞最優秀撮影賞、『エイト・ハンドレッド 戦場の英雄たち』(クワン・フー監督/2020年)で北京電影学院アカデミー賞最優秀撮影賞ノミネートなど多数の受賞歴に輝く実力派である。

『草原に抱かれて』
2023年9月23日(土)より、新宿K’s cinemaにてロードショー、全国順次公開
監督・脚本:チャオ・スーシュエ
出演:バドマ イデル
配給:パンドラ

© ㈱サードアイ