BoPに納得できないTFスポーツ、WECに対応を要求「今年アストンマーティンが速かった指標はない」

 WEC世界耐久選手権のLMGTEアマクラスに“ディフェンディングチャンピオン”として参戦しているTFスポーツは、アストンマーティン・バンテージAMRに設定されたBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)への不満を表明し、シリーズに対して次戦の第6戦富士までに行動を移すよう訴えかけた。

 チーム代表のトム・フェリエはSportscar365の取材に対し、今シーズンのアストンマーティンは他のGTEメーカーのクルマと比べ、つねにペースで劣っていると感じていると語った。

 昨年、同クラスのシリーズチャンピオンを獲得したTFスポーツが運営するオマーン・レーシングチーム(ORT)の25号車アストンマーティンは、先週末のモンツァ6時間レースでクラス7位に終わった。その一方、開幕2連勝したうえにル・マンでもクラス優勝を飾ったコルベット・レーシングは、シーズン終盤の2戦を残して早々とタイトルを獲得している。

「我々は(開幕戦)セブリングで1.4秒、(第2戦)ポルティマオでも1.4秒遅れていた」とフェリエは語った。

「スパに向けては20ミリバール(ターボ過給圧の上昇)があった。そこでは3位表彰台を獲得した。それでも、究極のペースではまだコンマ9秒足りなかったんだ」

「それから何の変化もなくモンツァを迎えた。驚いたよ、本当に驚いた。私たちはふたたび1周あたりコンマ9秒失っていた。なぜアストンマーティン(のパフォーマンスレベル)が注目されないのか、理由がまったくわからない。今年はどのレースでも速かったことを示す指標はひとつもないんだ」

「ル・マンでのBoPは(シリーズ戦で用いるものと)別物だが、そこでも我々はコルベットやポルシェにかなり差をつけられていた」

「誰もがクリーンなレースをし、私たちもクリーンなレースをしているのに、これでは悔しい。(ベストを尽くしても)せいぜい8番手くらいじゃないか? 我々は何も台無しにしていないのに、だ」

 フェリエは、GTEアマとハイパーカーの2クラスのBoPを管理するFIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブに対し、9月の富士6時間に向けてアストンマーティンへの再調整を検討するよう求めた。

 モンツァの前に発表されたBoP変更では、前述のとおりアストンマーティンに対する直接の調整はなかったが、シボレー・コルベットC8.Rとフェラーリ488 GTEエボの2車種に対しては、それぞれサクセスバラスト・システムを除いた基本的な最低重量が10kg増加することが決定していた。

 同イベントの表彰台はデンプシー・プロトン・レーシングの77号車、アイアン・リンクス60号車、GRレーシング86号車の3台のポルシェ911 RSR-19が上位独占する結果となり、ドイツメーカーがワン・ツー・スリーを築いて今シーズン初優勝を飾った。

優勝した77号車ポルシェ911 RSR-19(デンプシー・プロトン・レーシング) 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース

■「世界選手権なのにフェアじゃない」

 今季開幕戦のセブリング1000マイルは、アストンマーティンのファステストラップがGTEアマのベストラップより1秒以上遅かった唯一のレースだ。

 FIAとACOによると、GTEアマカテゴリーのBoPは競技者とメーカーから提供されたデータを使って設定され、都度調整されている。

「今のところ、(彼らは)ふたたびアストンマーティンにレースをさせることに消極的なようだ」とフェリエ。

「すべてのレース(主催者)はレポートを作成する。ファステストラップ、理論上の最速ラップ、レースの60パーセント、同10パーセントの平均値、ドライバーデータがすべて送られてくるんだ。それはイライラするものだ」

「私たちは決して最速のクルマに近づけない。これは世界選手権なのに、本当にフェアじゃない。彼らは、我々がもっといいレースができるように適切な変更を行う必要があるはずなんだ」

■他のクルマと同じ土俵に立っていない

 チャーリー・イーストウッドとマイケル・ディナンとともにORT・バイ・TFの25号車アストンマーティンをシェアするアーマド・アル・ハーシーも、チャンピオンシップに対してシーズン最終2戦のBoPを見直すよう求めた。

 オマーン人ドライバーは「僕のスティントでは序盤の数ラップはとても良かった。だが、レースが少し進むと他のドライバーとのパフォーマンスの違いが見えてきた」と語った。

「僕の主な目標はそのままをライバルたちを追い続けることだった。我々のチームはオフシーケンスだったが、その時点ではうまくいっていたんだ。しかし3時間目、そしてレース後半に入ると他のクルマのペースがさらに上がった」

「残念ながら、僕たちはそのような違いに対して競争力を発揮することはできなかった」

「モンツァではトップスピードが重要だけど、我々は彼らと同じ土俵に立っていなかった。(シリーズの)主催者がこの結果を富士の前に見てくれることを願っているよ」

 WECの次戦・第6戦富士では、モンツァで8号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)にヒットされクラッシュを喫したDステーション・レーシングの777号車を含めたTFスポーツの2台、そして先週末のレースをIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のモスポート・ラウンドを優先するために欠場したハート・オブ・レーシングチームの1台を加えた計3台のアストンマーティン出場する予定だ。

TFスポーツがテクニカルサポートを行っているDステーション・レーシングの777号車と、オマーン・レーシングチーム(ORT)・バイ・TFの25号車アストンマーティン・バンテージAMR 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース

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