奈良県桜井市の聖林寺「紙造地蔵菩薩立像」修復へ 本体搬出、構造など調査

運び出す前の紙造地蔵菩薩立像=12日、桜井市下の聖林寺薬師堂

 奈良県桜井市下の聖林寺で12日、門前にある薬師堂の「紙造地蔵菩薩立像」が修復のために運び出された。倉本明佳住職による法要後、東京芸術大学大学院保存修復彫刻研究室の岡田靖准教授らが薄紙などで包んだ像の本体や台座などを、個別にダンボールで搬出した。

 紙造地蔵菩薩は像高26.5センチ、幅29.5センチ、奥行き18.3センチ。岡田准教授によると、本体は類例の少ない紙製で、彩色様式から江戸時代の制作や修復が考えられるという。

 同寺が昨年4月、薬師堂の清掃時に倒壊している像を発見。なら歴史芸術文化村の学芸員らと像の損傷状態を確認した岡田准教授に修復を依頼した。

 同研究室に搬入され、エックス線撮影や材質、顔料分析を行い、本体の構造や制作の年代、技法などを調べる。また、損傷の激しい木製の台座を含めた修復や、劣化が進まないよう適切に処置。来夏までの作業完了を予定している。

 修復後は同寺本堂に安置される予定で、倉本住職は「先人の思いを後の時代につなげられるよう、100年、200年とお守りできるような状態で帰ってきてほしい」と話した。

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