<南風>145人のコーチを輩出する

 私には実現したい目標がある。2024年中に145人のコーチを沖縄県から輩出することだ。コーチと聞くとスポーツのコーチを思い浮かべる方も多いと思うが、私は運動が苦手で自転車に乗るのも一苦労する。ここで言うコーチは運動に限らずコーチングという対話技術を活用し、個人や組織の目標を伴走型でサポートするコーチを指す。

 沖縄県の総人口に当たる145万人に対して145人のコーチが1万人ずつサポートできれば、県民全員がコーチングに触れることができる。至って単純な仮説の下、この数字を設定した。ここから私の無謀でワクワクする旅が始まった。

 この目標を立てたのは、さかのぼること5年前。第一子の育休中にたまたま見かけたコーチングスクールの広告に心が躍り、気づくと東京行きの飛行機に乗っていた。その当時の私は自分に自信がなく、とにかくここから脱したかった。「あなたの強みが誰かの可能性を最大化する」。これが広告の一文だった。スクールではコーチングを受けながらコーチング技術が習得できるため、自分の価値観や自分のありたい姿の解像度がクラスを重ねるごとにどんどん上がっていった。

 幼い頃から人を応援することが生きがいで、今でも人や企業の成長をサポートしていること。性別にかかわらず可能性を広げる仕組みを実現したいと思っていること。コップからあふれ出た思いを目標に変え、冒頭の目標を設定した。

 そこからクラスで出会った恩師の協力を得ながら2年後に沖縄校を設立、現在70人のコーチが誕生した。山登りで言うと5合目に差し掛かった。振り返ると、受講生全員と40時間以上の時間を共有した。個性豊かな卒業生たちが誰かの可能性を広げている。想像するだけで胸が熱くなった。まだ旅の途中。これからも旅の記録を残していきたい。

(福島知加、ワダチラボ代表取締役)

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