砂浜減少、開設見送り 茨城・会瀬と磯原の海水浴場 地盤沈下一因か

ごろごろした石が目立つ会瀬海水浴場=日立市会瀬町

茨城県内16カ所の海水浴場のうち、日立市の会瀬と北茨城市の磯原二ツ島の二つの海水浴場が、今夏の開設を見送ることになった。両所は砂浜の減少が進んでおり、東日本大震災に伴う地盤沈下が一因との声も上がるが、原因ははっきり分かっていない。会瀬は波打ち際が大量の石で覆われたような状態で、日立市は今夏、移転も視野に周辺の海流調査に乗り出す。

「以前は遠浅だったが、今は沖に向かうと一気に深くなる」。JR日立駅から徒歩約15分の場所にある会瀬海水浴場。近くに住む70代男性は「ここ3年ほどで砂浜も石だらけになってしまった」と急激な環境の変化に驚く。

日立市は海岸線が県内最長の南北約35キロに及び、例年は伊師浜、川尻、会瀬、河原子、水木、久慈浜の6カ所で海水浴場が開設されてきた。会瀬もコロナ禍前の2019年までは開設され、期間中は毎年2千人前後が訪れていた。

県が実施する水質測定では3年連続で最高の「AA」評価。しかし、現在は波打ち際を中心にごろごろした石が目立ち、一部は砂利で覆われたような状態にある。市は昨年も開設を断念していた。

市によると、詳しい原因は不明だが、海水浴場周辺は11年の東日本大震災で地盤が沈下。次第に海岸の砂が流出し、地中にあった石が露出したり、高波で漂着する石が増えたりしたとみられる。以前より海岸への砂の付きも悪くなっているという。

来年以降の復活を模索する市は「石の撤去は簡単ではない」として、会瀬漁港を挟んで南側にある天然の砂浜に着目。今夏はこの場所が海水浴に適しているかどうか周辺の海流を調べ、その結果を踏まえ移転などを検討する方針だ。残る5カ所は7月15日から8月20日まで開設する。

ゾウのような形をした岩礁がある北茨城市の磯原二ツ島は、同市内唯一の海水浴場で、19年夏は約5400人が訪れた。

市は昨夏までの3年間はコロナ禍を理由に閉鎖してきたが、今夏は「総合的な判断」として開設中止を決めた。はっきりした理由は断定できないものの、理由の一つに挙げられているのが、震災以降の砂浜減少だ。

同海水浴場では現在、満潮時に砂浜は3メートルほどまで狭まる状況にあり、市は19年ごろから閉鎖を検討してきた。震災後の津波対策として堤防が設置されたことで避難路の確保に支障が生じたほか、砂浜に岩や漂流物が多いこと、入場者の減少なども決断の背景にある。

二ツ島以外で海水浴場を開設するには安全性や駐車場、住民の意向などを踏まえ検討する必要があり、早期の開設は難しい状況。市は「今後は砂浜の状況による。開設の在り方について見直しも必要になってくるだろう」とみている。

© 株式会社茨城新聞社