青森・八戸市の老舗タウン誌「アミューズ」終刊 創刊52年、後継者不在など理由

最終号となった「月刊はちのへ情報アミューズ」7月号の表紙
「今まで無我夢中で発行を続けてきた。全て楽しかった。寂しさはない」と笑顔で語る仲尾さん

 青森県八戸市を中心とした地域情報誌「月刊はちのへ情報アミューズ」が、1日発行の7月号(通算624号)で終刊し、52年の歴史に幕を下ろした。編集長で発行会社代表を務める仲尾安司さん(69)によると、売り上げ部数の減少などに加え、仲尾さんの後を継ぐ経営者がいないため、今後の同誌の方向性をスタッフ全員で話し合い、終刊という結論に達したという。仲尾さんは「今まで発行を続けられたのは支えてくれた皆さんのおかげ。感謝しかない」と感慨深げに語る。

 同誌は1971年3月、週刊誌として創刊。程なくして月刊誌となった。若者の流行や文化、社会問題などさまざまな記事、コラムを掲載。20年ほど前からは飲食店やグルメ、観光といった話題を多く扱うようになり、地域外の情報も幅広く取り上げた。創刊当初から八戸市内の居酒屋やスナック、バーなど夜に営業する店の広告や店舗情報を数多く掲載し、近年は「昼から夜まで、この1冊」をキャッチフレーズに掲げ、夜の飲食店を紹介するページも欠かさなかった。

 ピーク時には約1万部を販売し、店舗情報を有料で掲載する「会員店」は400以上あったものの、新型コロナウイルス禍などの影響で広告収入が減少。会員店はピーク時の半分になり、最近は印刷コスト増で厳しい経営を強いられた。それでも雇用調整助成金を活用したりページ数を減らすなどして、発行部数6千部を維持してきた。

 近年は仲尾さんが経営面のほか営業や配本などを担い、スタッフ2人が取材と編集、営業を担当していた。仲尾さんは以前から経営の一線から退き、スタッフに引き継ぐ意向だったが、諸事情により断念したという。スタッフ2人は6月末に退社しており、会社は今後解散する方針。

 45年以上前に編集スタッフとなり、同誌の歴史とともに歩んできた仲尾さんは「経営面で悪い材料はなく、今後も発行を続けることはできた。しかし、いろいろな意味で会社に余裕がなくなっていた」と打ち明ける。「かつては昼と夜の店を扱う情報誌が当たり前に売れていたが、今は難しいのかもしれない」とも語った。

 7月号の発売後、読者や関係者から「残念です」「寂しい」「ご苦労さまでした」などの声が仲尾さんに寄せられ、各書店での売れ行きは好調という。

 八戸市内では、2015年に月刊タウン誌「うみねこ」(1965年創刊、通巻600号)が終刊。地域に根差した老舗タウン誌の灯がまた一つ消えたが、仲尾さんは「寂しさはない」と言い、新しい活字媒体の出現を期待する。

 「写真やアートなど共通の興味や関心がある若い人たちがフリーペーパーを発行して地域の文化活動を盛り上げ、多くの人とつながってほしい。夜の店に特化した情報誌もニーズがあるので、どなたかが発行してくれたら」

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