「求めていた自然ここに」桃色の桜、満天の星 東京で鍼灸学んだ男性が移住先の京都で見た景色

施術をする髙橋さん(宮津市京口)=髙橋さん提供

 施術台に横たわった患者に「治療後、調子はどうですか」と声を掛ける。雑談を交えつつ不調の部位がないか聞き出し、治療に生かす。髙橋友樹さん(26)は2年前に京都府宮津市京口に移住し、その後に鍼(しん)灸(きゅう)院を開いた。30~90代と幅広い世代を施術している。

 生まれ育った川崎市では小中高とサッカーボールを追いかけた。足首や太ももをけがする度に整骨院に通い、対話しながら心身を治す東洋医学に関心を抱いた。特に、自律神経の改善に役立つ鍼灸医療を学ぼうと東京の大学に進学した。

 3年の時、非常勤講師のなめらかな針さばきや所作に感動し、その師にあたる京都市の鍼灸師に弟子入りした。在学中から月1回の勉強会に通い、卒業後は京都への移住を決意。2020年4月に市内のホテルスパに就職した。

 しかし、新型コロナウイルス禍で仕事が減り、与謝野町在住の鍼灸師の先輩から「こっちで開業してみては」との誘いがかかった。

 下見に訪ねると、青々とした山に咲く桃色の桜に春を感じ、夜空には満天の星が広がっていた。「求めていた自然がここにある」。転居に迷いはなかった。

 宮津に住んでからは与謝野町のベンチャー企業「ローカルフラッグ」に入社した。新人社員向けの研修セミナーや食事会を企画し、若者世代の結びつけに力を入れている。多忙の中、休日は趣味のカメラを片手に愛車のシトロエンで海や山を巡る。

 鍼灸師として、治療は肩や腰だけでなく心にも及ぶ。膝痛の客から「美術館に行きたい」と治療を頼まれた。痛みが和らぐと「家族で海外に行きたい」と目標が大きくなった。「患者の心までほぐせたと実感する時、手応えを覚えます」。

 丹後の雄大な自然の魅力に元気をもらいながら、老若男女の体と心を癒やしている。

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