【インタビュー】Jリーグ野々村チェアマンが語る 「愛媛FC・FC今治の現在地と展望ーー」 後編

7月、サッカーJ3の愛媛FCとFC今治を視察するため愛媛を訪れた、Jリーグ・野々村芳和(ののむらよしかづ)チェアマン。第2話では、選手時代の監督だった岡田武史氏が会長を務める、FC今治についての評価や、岡田氏との思い出をあいテレビアナウンサー・横山岳がうかがう。(取材は7日)

<野々村チェアマン>
静岡出身の51歳。現役時代はジェフユナイテッド千葉や北海道コンサドーレ札幌で活躍後、コンサドーレの社長や会長などを務め、去年3月、チェアマンに就任。

J3を戦うFC今治

FC今治は2014に岡田武史氏がオーナーに就任(現在は会長)し、2020年からJ3を戦っているーー

野々村:新しいクラブ。新しいクラブでありながら大都市ではないところにクラブを作って何年もしないうちにスタジアムを作った。このスピード感はすごい。
この先もっと上のカテゴリーにと当然思っていると思うがもしそれが実現できたならこれは日本中の100くらいあるサッカークラブの希望になるというか、そんな存在になっていってほしいなという思いはある。
通常、大都市にあるクラブが大きくなって成長するという今までの当たり前のスキームではない世界がこの先あるのかもしれないし、そういう意味でもFC今治のトライはすごく興味がある。

今年1月には今治里山スタジアムが完成したーー

野々村:スタジアムはその地域とそのクラブとで、どんなスタジアムが今必要なのか、この先どう成長していくからその先はこうしていこうということを地域で考えることがすごく重要かなと思っていて、今の新しいスタジアムはサイズ感とかは良いと思う。
満員になる感じはピッチからも近いしそのゲームの熱量をすごく上げる。その熱量のある中で試合をする選手たちは熱量のない中で試合をするよりも絶対成長する。
サッカー面からみても選手を成長させることがすごく大事なことであるし、クラブから見ても選手が成長すると勝つ確率が上がるわけなので、いろんな意味ですごく上手に良いサイズのスタジアムを作ったのかなと思う。

岡田武史「監督」とは

野々村チェアマンはFC今治・岡田武史会長と現役時代、コンサドーレ札幌で選手と監督の関係だったーー

野々村:監督と選手なので、どうやったら岡田さんに気に入られるかを考えていたと思う。岡田さんに誘ってもらってコンサドーレに入団したので、岡田さんのためにという思いも含めてプレーしていた。

2000年にはJ2優勝を果たしたーー

野々村:サッカーってこうやったら勝てるんだということは岡田さんから教わったことは多い。
当時シーズン最初のミーティングかなんかで、僕らは当然優勝するつもりでシーズンに入っている中で「何回負けても大丈夫だ」みたいなことを岡田さんが言った。「あっそんな負けても大丈夫なんだ」と思って。
そんな感じで数字でものをいう人は当時あまり多くなかったから、だいぶ気持ちが楽になったのは覚えている。優勝するには勝ち点をこれだけ積まなければいけないということの裏返しでもあるが、伝え方。それが一番印象に残っている。
あんまりしゃべった記憶はないが(笑)選手として面白いサッカーしたいとか、いいプレーしたいとか、誰もが思うと思う。
岡田さんに会うまでは自分もそれをやりたいと思っていたが、岡田さんと一緒にサッカーをするようになってからは自分が何するかというよりも、「このチームをどうやって勝たせるか」という考えになった。
サッカーの内容もマネジメントも含めて。そこは大きい。

愛媛のような地方にJクラブが2つ。”伊予決戦”というダービーマッチも実施されているがその意義はーー

野々村:1つの県に2つや3つクラブがあることを僕は多いと思わない。
むしろ同じ県の中に複数クラブがあることでお互いがお互いを意識することが絶対にある。それは必要なこと。
競争の中でしか本当の意味で成長することはできないと思うのでうらやましいとも思える。
それはサポーター同士もそうだし、そのエリアに住んでいる人たちも少し意識するだろうし。クラブも負けたくないからどんなトライをしようかといろんな面でチャレンジすると思う。

Jリーグの役割

今年でJリーグ30周年。100年を目指すうえで地方でのサッカーの盛り上がりがもたらす意味はーー

野々村:日本中どこでもサッカーが感じられるようにだんだんなってきている。
30年前は10クラブしかなくて東京で放送されるものを全国の人が観て何となくキラキラしているなと思ったエンターテインメントの1つと思った人が多かったと思うが、今はリアルにその地域にJクラブがあって一緒にその地域でサッカークラブをどうつくっていくか、そして上手くいったときの幸せを感じられることができるようになってきたと思う。
愛媛で2つのクラブが幸せを感じてもらえるような人たちをどれだけたくさんつくれるかというのは日本のサッカー文化としてもすごく大切なことだし、Jリーグが国内でより文化として発展していくうえでは地域での成功が絶対的に必要なのでそんな成功体験をこの2つのクラブでそれぞれがたくさんしていくという風になってもらいたい。

今後、愛媛FC、FC今治の両チームへの期待はーー

野々村:期待は仲間をどれだけ増やせることだと僕は思う。
短期的には目の前の1試合をどう勝つかを必死になって両クラブやっている。そこで多少力の差がもしあったとしても最後勝たせてくれるのって地域のサポーター含めた仲間だと思うので、その仲間をどれだけ増やせるか、サポーターはクラブが困っているときにあと1点取らせてあげるようなサポートができるかどうかが大事。
今年は両チームとも昇格がかかっているシーズンにおそらく最後までなると思うので、大事な1試合を現場の力で勝つことも大事だがクラブ力や地域力でこのゲーム勝ったというゲームをいくつ作れるかがすごく大事だし楽しみ。

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