バフェット氏のバークシャーがオキシデンタル株買い増し、買収は?

バフェット氏が高く評価するオキシデンタル(オキシデンタル・ペトロリアムホームページより)

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイ(ネブラスカ州)は、6月26日から28日にかけて、米石油・ガス大手オキシデンタル・ペトロリアム(テキサス州)の株式を買い増したことを明らかにした(*1)。

バークシャーのオキシデンタル株保有比率は25%超に

6月28日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した資料によると、26日から28日の3日間で1億2,210万ドル(約174億円)超の資金を投じ、合計で約214万株を取得した。平均取得価格は57.405ドル(約8,190円)となる。

バークシャーは2019年、オキシデンタルによる米石油会社アナダルコ買収を支援すべく、100億ドル(約1兆4,270億円)の巨額出資を行った。バフェット氏は長期にわたって原油価格が高止まりすることに賭けている。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、原油価格が高騰した2022年3月には、バークシャーがオキシデンタル株を51億ドル(約7,280億円)保有していることも明らかになっていた。今回のオキシデンタル株の買い増しにより、バークシャーの保有比率は25%超になる(*2)。

バフェット氏はこれまで、自動車保険ガイコ(GEICO)やチョコレート製造販売シーズキャンディーズ(See’s Candies)、鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNSF)などを買収してきた。

オキシデンタル株の買い増しを巡っては、バークシャーが2022年8月に発行済み株式の最大5割を購入する承認を当局より得ていたことから、その買収動向に市場の関心が集まっていた。


オキシデンタルの買収は意図せず

しかしながら、バフェット氏は2023年5月に開催されたバークシャーの年次株主総会において、オキシデンタルの経営陣を高く評価しながらも「買収する計画はない」と述べている(*3)。

優良資産を保有するオキシデンタル・ペトロリアム(同社ホームページより)

オキシデンタルはテキサス州を本拠地とする石油・ガス大手だ。米国、中東、アフリカ、ラテンアメリカで事業を展開する。特に、米テキサス州とニューメキシコ州にまたがる国内有数の石油生産地パーミアン盆地に優良資産を保有している。

同社の最高経営責任者(CEO)はビッキー・ホルブ氏。主要石油会社初の女性CEOとなる。2019年のアナダルコ買収以後、債務削減と株主還元を推し進めてきた。バフェット氏はホルブCEOの経営手腕およびオキシデンタルがパーミアン盆地に保有する資産を高く評価する。

過去5年間(2018年~2022年)で売上高と利益は大きく拡大した。

・売上高は2倍=178億ドル(2兆5,400億円)→366億ドル(5兆2,200億円)

・1株当たり利益(EPS)は2.3倍=5.39ドル(769円)→12.4ドル(1,769円)

Morningstarを基に筆者作成

近年はフリーキャッシュフロー(FCF)が大幅に増加している。株主還元を強化するなか、2022年には300億ドル(4兆2,800億円)の自社株買いを実施した。さらなる還元余地も残す。

・FCFは2020年9億ドル(約1,280億円)→2021年77億ドル(約1兆1,000億円)→2022年125億ドル(約1兆7,800億円)

・総還元利回りは7.75%

・配当性向は6.51%

Morningstarを基に筆者作成


脱炭素にも力入れる

脱炭素の取り組みも推進する。2050年ネットゼロ(温室効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロ)達成を目標に掲げ、大気中から二酸化炭素(CO₂)を取り除くネガティブエミッション技術の活用に注力する。

特に、大気中から直接CO2を回収して地中に貯留する「ダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)」事業の拡大を図る。既に世界最大規模のCO2回収施設の建設を進めており、DACプロジェクトに11億ドル(約1,570億円)の資金を投じる計画だ。

DACによるCO2削減は、米史上最大の気候変動対策となるインフレ抑制法(IRA)の補助対象に含まれる。DACは政府も市場の発展を後押しする注目分野のひとつである。オキシデンタルは石油・ガス事業で安定してキャッシュを創出しつつ、DACなど脱炭素関連事業の拡大を目指す。

【出典】(*1)SEC (*2)Reuters (*3)CNBC

文:フォルトゥナ

フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。

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