北海道クラフトビール最前線 第2次ブーム到来!?

今回のテーマは「クラフトビール」。都道府県別のクラフトビールの醸造所の数は、北海道が東京、神奈川に次いで全国3位。クラフトビール造りが盛んな地域だ。

【札幌最大級の生産能力 “ストリートライトブルーイング”】

札幌中央区、中央卸売市場場外市場近くの倉庫が立ち並ぶ一角にある、モダンな雰囲気のビアバー。バーからはガラス越しにビールの醸造タンクが見える。今年2月に誕生したクラフトビール醸造所「ストリートライトブルーイング」だ。

札幌市内のクラフトビール醸造所では最大級の生産能力。併設されたビアバーでは10種類ほどの出来立てを味わうことができる。

仕掛け人の宮口さんは、元札幌市の職員。胆振東部地震の被災地支援で厚真町特産のハスカップを使ったビールづくりに携わった経験から、クラフトビールの世界へと飛び込んだ。

醸造所は仲間2人と共に設立。会社名は「札幌醸々」だ。中小事業者の経営を支援する「北海道イノベーションプラットフォーム」の協力を得て100を超える企業や個人が出資。中央卸売市場そばの倉庫を改装し、年間100キロリットル生産できる醸造設備を約9000万円かけて整備した。ことし1月末に製造免許を取得し、2月から醸造を開始した。

ことし2月の醸造開始から4カ月間で生産量は23キロリットルに上った。自社のビールだけでなく他社からの依頼されたビールを作るOEMも手掛けている。今後販路を拡大し、来年は1年間で100キロリットルまで伸ばすのが目標だ。

【国内で初めて“野生のホップ”が発見された 岩内町に“泊まれる”醸造所】

人口1万3000人余りの岩内町は、あるものが発見された場所としてビールファンの間で知られている。それは野生のホップ。苦みや香りを付けるビール製造には欠かせない植物だ。開拓使の招きで1871年に来日したアメリカ人化学者・トーマス・アンチセルが地質調査で訪れた岩内で野生のホップを見つけたのが国内で最初の発見と言われている。

そんな岩内町に去年、初の地元資本のクラフトビールが誕生した。イワナイブルワリー&ホテルが醸造したビールだ。誕生から1年も経たないことし2月に全国のクラフトビールの味を競う大会で出品した3銘柄がいきなり金銀銅を受賞する快挙を成し遂げた。

醸造所を作ったのは高台にあるいわない高原ホテル。ホテル本館の隣で別館として使っていた建物を改装し、醸造所にした。隣にはビアレストランを併設。醸造所の上に宿泊用の部屋を10部屋設けた。山の上にあるため車で来る客がほとんど。料金はホテルよりも割安な設定だ。

【廃線後の無人駅活用も 沼田町“ヌマタノビール”】

空知の沼田町。ここでも去年、マチ独自のビールが誕生した。名前は「ヌマタノビール」。地元で栽培した米を副原料に使っているビールだ。仕掛け人は地域おこし協力隊員の村上さん。東京で25年間、広告代理店勤務や飲食店経営などをしていたが、ふるさと北海道への思いが強くUターンした。

町内4カ所の酒店限定で販売したヌマタノビール。瓶と缶合わせて1500本、樽生550リットルを用意した第1弾はなんと1週間で完売。しかし、ここ沼田町にはビールを製造する設備がない。一体、ヌマタノビールはどこで造られているのか?

造っている場所は、実は旭川。地元にある大雪地ビールの工場だ。ヌマタノビールは大雪地ビールに製造を委託して造っているのだ。

大雪地ビールは25年以上の歴史を持つクラフトビール醸造の老舗。そんな大雪地ビールは今、他の会社のブランドビールを20種類も製造。その割合は全製造量の4分の1に上る。

沼田町にあるJR留萌線の石狩沼田駅。留萌線は一部区間がことし3月廃線に。この駅も3年後の2026年に廃止されることが決まっている。村上さんは、この駅にビアバーなどを併設したヌマタノビールの醸造所を作ることを計画している。

【自動化・少人数で造る“平岸ラガー”】

札幌の狸小路商店街。先月リニューアルされたばかりの横丁の一角にある、小さなビアバーが賑わっていた。若い男性客が飲んでいたのは「平岸ラガー」。造っているのは、札幌豊平区平岸にある醸造所トランスブリューイング。この店は直営店だ。

常時10種類ほどのクラフトビールを手掛けていて、取引先を関東、関西、遠くは九州にまで広げている。開業したのはコロナ禍真っ只中の2年前だ。

醸造所はフル稼働だというが、人の姿がまるでない。300リットルのタンクを6つ備え、一度に1800リットルのビールを作ることができるこの施設は、なんとほぼ全自動。年間1万リットルほどを作る醸造所にスタッフはたったの2人。製造作業を機械に任せ、多くの時間をビールの味づくりに費やしている。

地域の特性や作り手のこだわりが詰まったクラフトビール。これからも広がりそうだ。
(2023年7月15日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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