『ヒッチハイク』の世界観に引き込もうかを考えました
――『ヒッチハイク』はホラー映画ですが、お二人はホラー大丈夫ですか。
中村守里:
ダメなんです。自分が出ているのに試写に行きたくないくらいで、自分が出ていても観ていても怖かったです。
大倉空人:
僕も無理なんです。子供のころ父に進められて『ジョーズ』や『霊幻道士』を観たのですが、怖すぎてトラウマになっています。それからお化け屋敷もダメなんです。
――それだけ苦手なホラー作品に出演することに抵抗はなかったのですか。
大倉:
出てしまえばこっちモノなので、何とかなりました(笑)。
――脚本を読まれていかがでしたか。
大倉:
作中に謎があるのですが、それがどういうことなんだろうと思いながら読んでいました。元々、僕はヒッチハイクというものに怖さを感じていたんです。
――この映画のような都市伝説も含め、いろいろと恐怖体験のお話はありますからね。
大倉:
そうなんです。そのこともあって読んでいても怖かったです。そういった観客としての目線も持ちつつ、役に付いても深く考えながら読み進めました。
中村:
脚本の中にあるうめき声や悲鳴をどうやってシーンごとに違った表現にし、観客のみなさんをどう『ヒッチハイク』の世界観に引き込もうかを考えました。
――ホラーは恐怖を前面にだすジャンルで、恐怖表現を状況や時間経過で少しずつ違う表現に変えなければいけないので難しいですよね。そこは役者としての力が試される部分ですがいかがでしたか。
大倉:
山崎健は親との確執など恐怖以外の感情も抱えているキャラクターなので、恐怖とともにその点も意識して演じました。
――清水涼子は恐怖とは別の感情も抱えているので、その部分を含んだうえでの演技となりますがその点はどこまで意識されましたか。
中村:
そこは難しかったです。涼子は孤独を感じていて健に助けを求めた部分もあります。ただその場で起こっている出来事、ジョージ一家からから逃げたいという恐怖がより大きいんだろうと意識しました。心の底で涼子が抱えている気持ちを見せるわけにはいかないので、何かを含みつつというよりジョージ一家に対する恐怖を前面に出して演じました。
――だからこそ、最後の部分に大きな驚きがありました。
大倉:
そうですよね。
――作中の謎がどういうことなんだと思っていたら、そういうことかと。涼子の「助けて」という言葉もそういう意味も含んでいるんだなと。
中村:
深い意味を含んでいますよね。
ギャップが面白かったです
――スクリーンの中のジョージ一家は本当に異質な存在で、素晴らしかったです。実際に共演されていかがでしたか。
大倉:
僕も撮影中、凄くドキドキしっぱなしでした。皆さんがやっているからこその怖さだったと思います。でも、撮影を離れると全くそんなことはなく本当に優しい方達なので、そのギャップが面白かったです(笑)。
中村:
この格好で良い人なんです(笑)。
――不思議な空間ですね(笑)。
大倉:
カメラが回ると一気に変わるので、尊敬しています。僕も見習いたいと思いました。
――ジョージ一家の素の部分を知っていると、撮影時に恐怖の対象として観るスイッチの入れるのは大変ではなかったですか。
大倉:
僕はカメラが回ってからのみなさんの切り替えられた空気に影響されていました。大倉空人が残ることはなく、一気に健になりました。
中村:
私もみなさんのおかげで撮影に入るとスッと涼子に切り替えることが出来ました。
――撮影に際し、みなさんとお話しされた部分はありましたか。
大倉:
立ち位置はみなさんと確認しながら進めていきました。
中村:
森の中だとどこだったかわからなくなるんです。
――目標がなくなってしまうんですね。
大倉:
この木の枝にしようとしても、次のシーンでは無くなっているって見失ってしました。
――アクションに関してはいかがでしたか。
大倉:
アクションも立ち位置が分からなくなることがあったので大変でした。『レッドブリッジ』という作品でお世話になったアクション監督の方と本作でもご一緒することが出来て、その方から「上手くなったね」と言って頂けたのは嬉しかったです。
――冬場という体が動かない時期に撮影していたにもかかわらず、それだけのアクションをこなせたというのは素晴らしいです。
中村:
本当に寒かったです。作中で涼子はだんだんと具合が悪くなっていくのですが、演技なのか素の状態なのかわからなくなるくらいでした。
――大変ですね。
中村:
表現としては良かったと思います(笑)。
大丈夫なのかなと不安になることもありました
――山田雅史監督とお話しされたことはあったのですか。
中村:
作品に入る前の本読みで、涼子の役柄やお勧めのホラー作品を教えていただいて、ホラーの見せ方・怖さの増す演技について教えていただきました。
大倉:
僕は台本を読んで疑問に感じたことを山田監督に聞いて、演技プランについて相談させていただきました。本読みの中で山崎健というものを作り上げていったので、現場はそのプラン通りに進んでいきました。
――本読みの段階で作り上げることが出来たということなんですね。
中村:
そうですね。
大倉:
本当にほぼ最初に演じたままで進んでいったので、二人で大丈夫なのかなと不安になることもありました。
中村:
山田監督に伺っても「大丈夫だよって。自信ないの」とだけでしたよね。
――ホラーが苦手だと正解が分からないので、上手くっていても不安になりますよね。
大倉:
そうなんですよ。二人で不安になっていました。(笑)
――健と涼子だけでなく、佐々木和也も実は深い事情を抱えていましたね。
大倉:
繋がるとは思いませんでしたよね。
中村:
イケメンでした。
――売店の方も
。
大倉:
怪しい雰囲気出ていて、最後までホラーでしたね。
――良くも悪くも見た後に昇華しきれない気持ちが残る映画でした。
大倉:
そうですね。
――大倉さんは健が最後にどういう感情を抱えていたと思いますか。
大倉:
僕個人としては安心している部分と葛藤している部分が入り混じっていると思います。もしかしたら、涼子と同じことをするかもしれないです。
中村:
今の大倉さんの話を聞いて凄い罪悪感が生まれました。
――難しいですよね。「助けてほしい」という気持ちも本物ですから。
中村:
複雑ですよね。
――ジョージ一家も巻き込まれて壊れてしまっただけで、元々は普通の人だったかもしれないですね。
大倉:
僕個人としては、そうなのかなと感じた部分もありました。
中村:
私は猟奇的な部分から、恐怖を与えることで快感を得ている人のように感じています。
――ジョージ一家のような役を演じてみたいという気持ちはありますか。
大倉:
面白そうですね。中村さんにはジョセフィーヌとして僕の隣にいてもらいます。
中村:
大女になっているかもしれないですよ(笑)。
――そういう新作も観たいですね(笑)。
大倉:
そうですね(笑)。
――原作を知っている方も映画ならではの要素で新しい気持ちで楽しめると思います。
中村:
そうだと嬉しいです。原作を知っている人も気になっていると思うので、ぜひ観ていただきたいです。この作品は湿度の高い、ジメッとしたホラー映画です。原作を知っている方も知らない方も多くの方に楽しんでいただける作品だと思います。
大倉:
それぞれのキャラクターがどういう行動をするのかという点も楽しんでいただきたいです。それぞれのバックボーンがあり、葛藤がある中、それがどう繋がっていくのかという展開を楽しんでもらえたら嬉しいです。『ヒッチハイク』は伏線がしっかりと回収される作品で、1つ1つのシーンに無駄がないので、1つ1つ記憶に収めながら点と点を繋いでいってほしいなと思います。ジョージ一家の恐怖だけでなく、人間としての葛藤やいろいろな気持ちがどこにぶつかっていくのかにも注目してご覧ください。 ©2023「ヒッチハイク」パートナーズ