「コシヒカリ発言」に端を発した静岡県の川勝知事のボーナス返上問題は異例の事態に発展しました。知事の態度に反発した自民党は50年ぶりとなる不信任決議案を提出。わずか1票差で「否決」されましたが、川勝知事を取り巻く現状が浮き彫りになりました。
<静岡県 川勝平太知事>
「不信の念を抱かせてしまったことをまずもっておわびします。次の県議会9月定例会において給与の一部を返上するための条例案を提案したい」
神妙な面持ちで7月12日、県議会の本会議に臨んだ川勝知事。改めて議会で表明したのは自らのボーナスや給与を返上する考えでした。
<川勝知事 参院補選応援演説>
「あちら(御殿場市)はコシヒカリしかない。だから飯だけ食って、それで農業だと思っている」
そもそも騒動の発端は、この「コシヒカリ発言」でした。御殿場市などを揶揄(やゆ)したとして、県議会で辞職勧告決議を受ける事態に発展。この騒動を反省し、川勝知事は自らへのペナルティーとしてボーナスと給与あわせて440万円ほどを返すとしましたが、返上に必要な条例案を出さず未返上のままになっていたのです。
<静岡県 川勝平太知事>
「給与の返上と自らの責任の取り方には関係性がないとのご意見等を踏まえ、当時、提案を見送ることとしました」
こうした知事の釈明に、これまでも対立を繰り返してきた県議会最大会派の自民改革会議は猛烈に反発します。
<自民改革会議 伊丹雅治議員>
「条例案について知事が提出しようと思えば提出できたわけで、提出を見送ったのはあくまで知事の個人的な判断」(ヤジ)「そうだ!」「その通り!」
自民改革会議は県議会本会議の合間に、役員会と議員総会を繰り返し開いて対応を協議。その結果…
「不信任決議案を提出させていただきます」
自民改革会議は知事に対する不信任決議案の提出を決めました。知事への不信任決議案が出されたのは1973年以来、50年ぶりです。
<自民改革会議 増田享大代表>
Q決定の要因を改めて。
「(県議会)総務委員会の時と知事の報告の違い、整合性がとれないのが一番の要因」
知事の「言行不一致」は見逃すことができず、信頼できないというのが理由です。
<自民改革会議 増田享大代表>
「発言に全く信を置くことができない知事を頂くことは県政運営上の重大な危機であります」(ヤジ)「そうだ!」
不信任決議案とは、議会が知事に対して信任しないので退陣を求めるというもの。可決されれば知事は県議会を解散させるのか、自らが辞めるのかの選択を迫られます。可決には、出席議員68人の4分の3にあたる51人の賛成が必要です。
自民党に対峙(たいじ)する「ふじのくに県民クラブ」は所属議員が18人。計算上、少なくとも1人以上は取り込まないと可決には至らないことになります。この状況に、ふじのくに県民クラブは…。
<ふじのくに県民クラブ 田口章会長>
Q否決に向け会派の意思確認は?
「できている、粛々と否決するだけ」
「一枚岩」を強調します。
<坪内明美記者>
「まもなく(13日)午前0時半に本会議が再開し、知事に対する不信任決議案の討論や採決が行われます」
<静岡県議会 中沢公彦議長>
「賛成の人は白票を、反対の人は青票を」
見るからに多く積まれていくのは賛成の白い札。議場に緊張が走ります。
<静岡県議会 中沢公彦議長>
「賛成50、反対18、川勝知事に対する不信任決議案は否決されました」
採決の結果は、賛成50人、反対18人。可決に必要な4分の3の51人に1人及ばず否決されました。
<自民改革会議 増田享大代表>
「出すからには可決を目指して出すが、とにかく行動に移す。県民の皆さんのメッセージを伝える議場なので辞職勧告ではない形の意志表明、不信任決議案という選択肢が上がってきた」
<ふじのくに県民クラブ 田口章会長>
「会派18人全員が反対を投じた。ギリギリの薄氷の思いの反対、否決となったが、会派一枚岩になって行動できたのはよかった」
<公明党県議団 蓮池章平団長>
「見ている多くの議員がこのままではいけないんじゃないかっていう意思の表れだったので、しっかりと知事には反省をしていただくことが必要かと思います」
かろうじて可決を逃れた川勝知事。一夜明けて心境を語りました。
<静岡県 川勝平太知事>
「票が足りなかったので、私は職に専念するという決意に変わりはありません」