【2024年4月から】障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化

厚生労働省の労働政策審議会で障害者の法定雇用率の段階的引上げが決定し、2023年3月1日に「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令及び身体障害者補助犬法施行令の一部を改正する政令」が公布されました。
これにより障害者雇用促進法に関する政省令が改正され、障害者雇用に関する制度について、障害者雇用率の引上げなど、重要な改正が行われることとなりました。
障害の有無にかかわらず、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加ができる「共生社会」を実現の理念のもと、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があるとされています。
それでは2024年4月以降、どのように変わって行くのでしょうか。

【2024年4月より】障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます

障害者を雇用しなければならない事業主には、次の対応が求められます。

① 毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークへ報告すること
② 努力義務の範囲で、障害者雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任すること
③ 障害者を解雇する場合は、ハローワークへ解雇届を提出すること

また、従業員のカウント方法については、事業所が複数ある場合でも、企業全体で集計を行います。
1年を超えて雇用されている人か、もしくは1年を超えて雇用される見込みがある人(常用労働者)が対象となり、週の所定労働時間によってカウント方法が異なります。
週所定労働時間が、20時間以上30時間未満の人は、0.5人とカウント、30時間以上の人は1人とカウントします。
なお、雇用形態(有期契約社員やパート・アルバイト等)にかかわらず、上記に当てはまる場合には、カウントの対象となります。

障害者雇用における障害者の算定方法が変更となります

雇用する障害者数の算定方法ですが、まず、下記の障害者を雇用する場合に算定対象となります。

㋐ 身体障害者:身体障害者手帳1~6級に該当する方
㋑ 知的障害者:児童相談所等にて知的障害者と判断された方
㋒ 精神障害者:精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている方

上記の算出対象の中から、現在は週所定労働時間が20時間以上の労働者が対象範囲となっています。
しかしながら、障害の特性により20時間未満での雇用を希望する方も一定数おられることから、雇用機会の拡大を図ることを目的として、2024年4月より対象範囲の見直しが行われます。

※2018年4月より障害者雇用の対象に精神障害者が加わりましたが、精神障害者は身体障害者や知的障害者に比べて職場定着率が低いという現状があったため、精神障害者である短時間労働者であって、新規雇入れから3年以内の者、または、精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者、かつ、2024年3月31日までに雇入れられ、同時に精神障害者保健福祉手帳を取得している者については、1人をもって1人としてカウントする特例措置が設けられました。
この精神障害者の算定特例が、当分の間、延長されることになりました。

【2024年4月より】障害者雇用のための事業主支援が強化されます

① 雇い入れやその雇用継続に関する相談支援や加齢に伴う課題に対応する助成金が新設されます

・障害者雇用に関する相談支援を行う事業者から、雇い入れやその雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助を原則無料で受けることができるようになります。
・加齢により職場への適応が難しくなった方に、職務転換のための能力開発・業務の遂行に必要な方の配置や、設備・施設の設置などを行った場合に、助成が受けられるようになります。

② 既存の障害者雇用関係の助成金が拡充されます

障害者介助等助成金(障害者の雇用管理のための専門職や能力開発担当者の配置、介助者などの能力開発への経費助成の追加)や職場適応援助者助成金(助成単価や支給上限額、利用回数の改善など)の拡充、職場実習・見学の受け入れ助成の新設など、事業主の障害者雇用の支援が強化されます。
障害者の法定雇用率引上げは、障害者の雇用機会を増やし、また、企業の障害者雇用への取り組みは、社会的責任の一環として評価され、法定雇用率の達成や支援策の実施を行うことで、企業の信頼性やイメージ向上につながるでしょう。
障害者の雇用でわからないことがあれば、一度、お近くのハローワークなどに相談してみましょう。

参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について」

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