発売わずか1週間で増刷決定! 膨大な資料渉猟と長期にわたる取材による渾身のノンフィクション『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』

6月26日に発売されたNHK出版『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』。難しいテーマながら、全国の書店、Amazonなどから問い合わせが殺到。発売からわずか1週間で増刷となった。 担当編集者のコメントとともに本書の魅力を紹介しよう。

あの戦争でラジオは国民に何を伝え、何を伝えなかったのか

1925年に登場し、瞬く間に時代の寵児となったラジオ。そのラジオ放送に携わった人々は、ラジオの成長と軌を一にするかのように拡大した「戦争」をどう捉え、どう報じたのか、あるいは報じなかったのか。また、どう自らを鼓舞し、あるいは納得させてきたのか。そして敗戦後はどう変わり、あるいは変わらなかったのか──。 上記をテーマに、NHK放送文化研究所の月刊誌「放送研究と調査」は、2017年8月号~21年12月号で、5年にわたり「戦争とラジオ」を掲載した。その連載を単行本化したものが本書である。筆者の大森淳郎はNHKのドキュメンタリー番組のディレクターとして、戦争中のラジオについても長年取材を続けたのち、2016年~22年12月まで同研究所の特任研究員を務めた。 本書では、記者・ディレクター・アナウンサー……といった「放送人」たちの営為を追い、彼らが遺した証言と記録、NHKにある貴重な音源・資料などを渉猟し、丁寧にたどり、検証しながら、自省と内省の視点を欠くことなく多面的に「戦争とラジオ」の関係を追う。ひいては、非常時において、メディアに携わる者がどのように思考・模索し、振る舞うべきなのかを照射したノンフィクション。

【もくじ】

第1章:国策的効果をさらにあげよ —検証・戦時下ラジオニュース

第2章:前線と銃後を結べ —戦時録音放送を聴く

第3章:踏みにじられた声 —戦時ラジオ放送への道

第4章:日本放送協会教養部・インテリたちの蹉跌 —講演放送・学校放送は何を伝えたのか

第5章:慰安と指導 —放送人・奥屋熊郎の闘い

第6章:国策の「宣伝者」として —アナウンサーたちの戦争

第7章:敗戦への道 —「負け戦」はどう伝えられたのか

第8章:敗戦とラジオ —何が変わらなかったのか

あとがき

担当編集者からのコメント

576ページという分厚さにたじろぐ方がいるかもしれません。そんな方もぜひ、まずは「序」に触れてみてください。その読みやすく明晰かつ真摯な文体に惹きつけられるでしょう。なにより、著者の大森淳郎さんがどのような理路と思いで本書執筆に臨んだのか── “現在の価値観から戦時ラジオ放送を断罪しようというのではな”く、“「仕方がなかった史観」を乗り越えて戦時ラジオ放送を検証する”ことに注力しているのか── おわかりいただけると思います。 第1章・2章そして3章と多面的・多角的に「戦時ラジオ放送」の実像や「放送のなりたち」を見ます。その後、第4章・5章・6章・8章と展開される、評伝や群像劇ともいえる「戦争(や敗戦)に直面した放送人たち」について、著者がいつも「自分ごと」として考え、寄り添い、描いていることが本書の特長であり魅力です。グイグイ読ませます。 すべてのメディア従事者にとってはもちろん必読。そしてSNS時代で「メディアの在り方」に関心を寄せている方にとっても、今後のスタンダードになる本だと思います。(T)

▼NHK出版「本がひらく」にて、「序」を公開中

https://nhkbook-hiraku.com/n/n06d22fe5e838

【著者紹介】

大森淳郎(おおもり・じゅんろう)

1957年埼玉県生まれ。1982年、東京外国語大学ヒンディー語学科卒業。同年NHK入局。富山、東京、広島、福岡、仙台の各放送局に勤務。ディレクタ-として主にETV特集を手掛ける。作品にETV特集「モリチョウさんを探して―ある原爆小頭児の空白の生涯―」(1993年)、同「祖父の戦場を知る」(2006年)、同「シリーズBC級戦犯 第二回“罪”に向き合う時」(2008年)、同「ひとりと一匹たち―多摩川 河川敷の物語―」(2009年)、同「シリーズ戦争とラジオ 第一回 放送は国民に何を伝えたのか」(2009年)、同「敗戦とラジオ 放送はどう変わったのか」(2010年)など。

2016年からNHK放送文化研究所に研究員として勤務。2022年退職。

著書に『BC級戦犯 獄窓からの声』(日本放送出版協会、2009年)、『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社、2012年)。ともに共著。

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