北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が、リトアニアで開かれた。
会議に先立ち、トルコは、スウェーデンのNATO加盟を容認し、批准手続きを進めることで合意した。
4月のフィンランドに続き、スウェーデンが加わることで北欧全体がNATO入りし、全32カ国体制に拡大する。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵略の理由にNATOの拡大を挙げてきたが、その暴挙がかえって対抗する同盟の強化を招いているのが現実だ。
スウェーデンは、19世紀のナポレオン戦争以来、不戦を貫き、軍事非同盟を外交の基軸に据えていた。だが侵攻を機に加盟世論が高まり、外交方針を転換。昨年5月に加盟申請していた。
それに対し、トルコは自国のクルド人武装組織をスウェーデンが支援しているとし加盟に反対していたが、今回容認に転じた。
加盟国の中で孤立を避けると同時に、追加購入を求めていた米国製戦闘機F16を、バイデン政権が認めたためとみられる。
一方、首脳会議はウクライナの新規加盟に向けた日程や手続きを具体的に決めるのを見送った。
集団的自衛権を定めたNATOの条約は、加盟国が軍事攻撃を受けた場合、全加盟国への攻撃と見なす。
ロシアと戦闘状態にある中でウクライナが加盟すれば、欧州全土に戦争が拡大しかねず、そのリスクを避けた判断といえる。
こうした動きを踏まえ、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ばかげている」とけん制した。
一方、現地で並行開催された先進7カ国(G7)首脳会合で、ウクライナに対し、軍事支援を通じた長期的な安全保障を約束する共同声明を出した。G7がNATO加盟まで後ろ盾になる形で、ウクライナへ配慮したとみられる。
岸田文雄首相は、サイバー防衛や宇宙安全保障などでNATOとの協力を強める新文書「国別適合パートナーシップ計画」を発表した。軍備増強を続ける中国をにらみ、NATOの演習や訓練への日本の参加拡充などを盛り込んだ。
ただ、軍事分野に偏った対中包囲網を広げようとする日本の動きに、NATO内には警戒感もある。フランスはNATO連絡事務所の日本開設に反対するなど、温度差も表面化した。
前のめりな姿勢の危うさを、日本は自覚すべきだろう。