『全治3カ月』ながら乗る気満々で富士入りした大湯都史樹。“ドクターストップ”で「GTに向けて安静にするしかない」

 全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦富士の走行前日、突然の欠場がアナウンスされた大湯都史樹(TGM Grand Prix)。チームからは「右側鎖骨骨折」がその理由として明らかにされたが、いったい何があったのだろうか。

 三角巾で右腕を吊った状態で金曜日の富士に現れた本人を直撃すると、想像以上に“痛い”負傷となっていることが判明した。

 大湯が怪我を負ったのは7月10日月曜日。トレーニングの一環としてスカッシュをしていた際に、転倒してしまったという。本人いわく「鎖骨に良くない形でコケてしまった」。翌日の火曜日には、プレートを入れる手術も行った。

「幸いにも折れてからすぐ手術ができました。主治医からは『無理のない範囲だったら動かしていいですよ。ただ、相当痛みますよ』と言われました」と大湯。痛みは感じながらも、大湯自身は今週末のスーパーフォーミュラ出場に前向きな気持ちを保っていた。

「僕としては出たいので、今日の昼サーキットに来て、マシンに座ってみたりした結果、『これだったら、やりたい』というのが僕の意思でした。ただ、(現場の)ドクターだったり、周りからも、『(スーパー)GTもあるので、やめた方がいい』と言われてしまったので……。とくにここ富士のドクターから止められてしまい、参戦の許可が下りませんでした」

 鎖骨のなかでも肩に近い位置を損傷してしまったという大湯は、現在も右腕は「動かせなくはないが、痛い」状態だという。

 記者からの「全治どれくらいの怪我なのか?」という問いかけに、大湯はしばらく返答に窮した。

「……普通は、“全治”で言うと、3カ月です。リハビリとか、いろいろ(含めて)考えたらですが」

 8月の1週目にはスーパーGT第4戦が迫るが、「GTは多分、出ます」と大湯は気丈に答える。「そこに向けて、安静にしているしかないですね」。

 出場の望みを信じて富士に来た大湯だが、土曜・日曜については「家でSFgoを見るか……(帯同して)チームと一緒に次につながることが見つかればいいですけどね」と週末を通してチームに帯同するかどうかは決めかねているようだ。当然、完治を早めるのであれば、安静が望ましいことに加え、「現場にいると、ファンの人も心配すると思うので」と大湯は複雑な心境を語る。

 新チームTGM Grand Prixに移籍した今季の大湯は、予選では速さを見せるものの、決勝ではクラッシュ、リタイアなどで、結果が出ないレースが続いている。身体的な痛みと同じかそれ以上に、第6戦での“リベンジのチャンス”を失ったという現実が、大湯の表情を曇らせているようだ。結果の出ないレースが続いた大湯はここ数戦、“これが最後のスーパーフォーミュラかも”という想いを抱えながら戦っていたという。

「(6月の)テストの感触も良くて、だいぶ手応えを感じていて、今週はイケる気満々でした」という大湯は、「いまの僕の状況を考えても、この1戦乗れない、というのはだいぶ大きいです。もしかしたら“最後”かもしれないので……」と肩を落とす。

 負傷してしまった以上、欠場は致し方ない。一刻も早い完治と復帰を願うばかりだ。

2023年スーパーフォーミュラ第6戦富士 搬入日の様子

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