真鶴町長「辞職せず」 自ら全署名者の名簿閲覧、39件異議申し立ても

リコールの是非を問う住民投票を前に辞職しない意向を示す松本一彦町長=真鶴町役場

 神奈川県真鶴町の選挙人名簿を自らの町長選に不正利用するなどした松本一彦町長のリコール(解職請求)を巡り、松本町長は14日、署名活動が始まって以来初めて会見し、「公民権停止まで(町長を)続ける気持ちに変わりはない」と述べ、辞職しない意向を示した。さらに松本氏自ら縦覧期間中に2362筆全ての署名簿を閲覧し、異議申し立てを行ったことも明らかにした。

 松本氏は「署名活動の苦情も20件ほど聞いている。断りきれず署名した人もおり、(署名した)2300人の100%が自分に反対しているとは思えない」とリコールに疑問を呈した。2021年の出直し町長選で再選されたことを踏まえ「民主主義のルールで町長の立場にいる。今回も民主主義のルールで住民投票で信を問いたい」と話した。

 リコールは住民団体が有権者の3分の1を越える署名を集めて6月に町選挙管理員会に提出し、審査を経て2362人分の署名が確認された。松本氏は自ら全ての署名簿を2日間かけて確認し、同じ筆跡や正当な理由ではない代筆が疑われる39件(うち4件取り下げ)について今月12日に異議を申し立てた。

 松本氏以外に異議申し立てはなく、町選管は今月26日まで審査するが、35件全てが無効となっても住民投票が行われるのはほぼ確実な状況にある。松本氏は「署名活動に問題があったことを多くの人に知ってもらうのが目的」と説明した。

 町長自ら全署名を閲覧したことに対し、議会関係者は「町民の不安をあおる。署名した職員もいる」と反発。松本氏は「署名を縦覧することは私の権利で署名者も縦覧される覚悟があったはず。署名した職員や町民を冷遇することは考えていない」と釈明したが、住民団体「真鶴の未来をつくる会」の青木厳会長は「町長の立場ですることではない。恐怖すら感じる」と困惑した様子で話した。

 また、署名の一部が偽造された疑いがあるとして、松本氏の後援者の男性が今月12日に地方自治法違反容疑で横浜地検小田原支部に告発したことも判明した。被疑者は不詳としており、男性は神奈川新聞社の取材に「町長の不正をただすリコール活動で不正をしていいのか」と話した。

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