日本がアフガン難民114人を認定。「入管法改正」のいま。米識者は日本の対応をどう見るか

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

Ahmed akachaによる写真: https://www.pexels.com/ja-jp/photo/7385834/

アメリカはもともと、先住民族のネイティブアメリカンが住んでいた土地に移り住んだ移民が発展させた国であるから、移民・難民の受け入れに寛容とされ、「共生する社会」やシステムがすでに構築されている。

日本にも、ロシアによる軍事侵攻以来続々とウクライナ避難民が到着しており、そんな様子をニュースで見る機会が増えた。名古屋の入管施設で収容中に適切な医療を受けられず死亡したスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんがニュースで取り上げられたり、NHKドラマ『やさしい猫』がSNSで物議となったりで、移民・難民への関心が以前より高まった人は多いだろう。

そんな中、2021年アフガニスタン政権の崩壊後に日本に避難してきた114人が、今月11日までに難民として認められたと報じられた。114人はアフガニスタンのJICA(国際協力機構)で働いていたスタッフや家族らで、この数は日本での難民のいっせい認定としては、過去最大規模ということだ。

参照:

【独自】過去最大規模114人を難民認定 アフガニスタン政権崩壊で日本に避難、JICAの現地スタッフや家族ら(FNNプライムオンライン)

アメリカのアフガン難民認定数は?

アフガニスタン政権崩壊後、アメリカに渡り「再定住」している難民は7、8万人規模とされる。ロイターは8万8500人、CBSニュースは7万7000人と報じている。

日本で入管法が改正

今年6月には入管法(出入国管理及び難民認定法)が改正されたばかりだ。外国人の収容・送還のルールを見直すため先月9日、改正入管法が日本で成立した。

保護すべき人を確実に保護する一方、入管施設の長期収容の解消と、在留が認められない外国人の速やかな退去がその目的で、法改正により不必要な収容をせず収容の際は適正に処遇することができるようになったという。

  • 具体的には、難民申請3回目以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ強制送還の対象となり得ることになった。また収容中、3ヵ月ごとに必要性の見直しがされる、など。

これまでの入管法、何が問題だったか?

詳しくは、出入国在留管理庁の情報に書かれてある。

この入管法の改正は、日本への亡命を希望する人にとって新たな障壁になるとされ、外国人の支援団体から「刑罰ではなく在留資格を与えよ」といった反発もある。入管法の交付から今年で72年、先述のアフガン難民やウクライナ避難民など多くの外国人が日本で暮らすようになったが、そんな現代にあっても「揺らぎ」が見られる。

特に一番の問題点とされているのは、難民申請3回目以降に、申請者を強制送還できるようになった点だ。もともと難民認定において、日本は他国と比較して非常に厳しい国だ。日本の難民認定率は先進国の中で極端に低く、他国で認定されるケースでも日本では難しいことが多いのが現状だ。

◉ 日本の難民認定数は?

1981年に難民条約に加入し82年の難民認定制度導入から2021年まで:

外務省の発表によると、この間の申請数は9万1664人。うち難民と認定されたのは1117人、認定されなかったものの人道上の配慮で在留を認められたのは5049人。

2022年:

「3772人が難民申請を行い、認定されたのは202人。難民認定手続の結果、在留を認められた外国人はトータルで1962人」資料1

Photo: 日本は22年3月〜今年2月末の期間だけで約2300人のウクライナ避難民を受け入れた。これは人道上の配慮に基づく「緊急」の措置であることから、紛争避難民など保護制度の創設が課題となっている。(写真:ロイター/アフロ)

(数字は 出入国在留管理庁より)

◉ なぜ日本も難民を受け入れなければならないか?

日本は難民条約に加入しているため、難民を受け入れることが国際社会から求められている。難民認定数は年々増えてはいるが、それでも難民の認定が非常に厳しい国と言える。

難民として認めてもらえる確率(22年)

日本 2%

アメリカ 45.7%

難民認定数の各国比較 資料2

アムネスティ・インターナショナルによる最新情報 資料3

◉ どのように「難民」と認定するか?(出入国在留管理庁の情報から抜粋、以下概要)

難民とは、➀人種 ➁宗教 ➂国籍 ➃特定の社会的集団の構成員であること ➄政治的意見の相違を理由に迫害を受ける恐れがあるという、難民条約(1951年)で定められている5つの理由のいずれかによって迫害を受けるおそれがある外国人を指す。

移民遺産月間の6月、筆者はアメリカで難民支援を行う人々や団体を取材した。その中で、難民受け入れで国際社会から遅れをとっている日本の現状をもとに、アメリカの識者に意見を聞いてみた。

1945年の創設以来、ホームレスや難民の支援を行うカトリック・コミュニティ・サービス・オブ・ユタ(CCS)。昨年だけで625人の難民の「再定住」を支援している。同機関でディレクターを務めるエイデン・バタール(Aden Batar)さんは、彼自身が1994年にソマリアからアメリカに逃れてきた難民だ。バタールさんのような立場の人は、日本の現状をどのように見ているだろうか。彼はこのように話した。

「日本の難民受け入れ数が少ないのは知っています。そもそもアメリカの難民受け入れの歴史を見ると、第二次世界大戦以降、2016年(オバマ政権)まで、世界で最多の難民を受け入れ、他国をリードしてきました。現在世界をリードしているヨーロッパは、多くの国が陸続きで繋がっている土地柄も影響しています。

国ごとにそれぞれ受け入れの歴史や体制、資源が違うので数字だけでは何とも言えませんが、日本は受け入れの歴史や経験が浅いということは言えると思う。どの国でも始めは時間がかかるものです。労働力の補足や地域の多様化、人道的な支援など難民・移民の受け入れの利点に目を向けながら、日本もいよいよ『これから』といったところではないでしょうか」

  • 次回以降は、バタールさんのような元難民で現在アメリカに暮らす人々の体験談、アメリカの難民受け入れ体制について紹介する。

(つづく)

Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

© 安部かすみ